「入札」否定する病院職員との一問一答|不正随契の兵庫県立淡路医療センターに重大疑惑(2)

 30台ものノートパソコンを決裁を経ぬまま購入し、半月後に形だけ承認をとるという「不正調達」を行っていたことが明らかとなった淡路島の公立中核病院「兵庫県立淡路医療センター」。県立病院を所管する兵庫県病院局経営課も驚く暴挙だったが、本当の“事件”は、パソコンが納品された時点から不可解な「決済」が行われるまでの16日間のあいだに起きていた。

 公式には「随意契約」だったはずの調達で、「入札」が実施されていたというのだ。ハンターの記者は、随契の決裁文書を開示した淡路医療センターの職員に、電話で事実関係を確かめた。以下、そのやり取りの概要である。

◇  ◇  ◇

――開示された文書について確認したい。
病院職員:はい。

――ノートパソコン2,495,680円という契約。これは随意契約になっているが?
病院職員:はい。

――これの契約は、入札ではなく随契ということでよいか?
病院職員:そうです。

――入札やってない?
病院職員:はい。

――随契?
病院職員:はい。

――受注した業者から、見積もりとか取ってないか?
病院職員:ええっとですね、これについてなんですけれど……。

――積算書もない。事前に積算していないのか?
病院職員:ええっとですね、あの、見積書の方は頂いておるのですが。あのー、そこは、非公開の、えー、決定書にも書かせて頂きましたとおり…。

――非公開でも、必要な部分を黒塗りして出すべきだ。
病院職員:はい。

――うちの開示請求内容は分かっているか?
病院職員:ええっと、ちょっとお待ちくださいね。ええっと、請求で、あのー、公開請求書に頂いた内容は、「兵庫県立淡路医療センターが令和2年度、令和3年度に行った契約金額が100万円を超える契約に関する以下の文書」と言うことで。ええ、契約書、契約日、契約金額、契約相手先が分かるもの、で、積算書、それから、参考見積、下見積もりですね、それと入札結果表。

――随契の場合、ないものもあるが。
病院職員:はい。

――パソコンの積算書はあるのか?
病院職員:えー、いや、積算書というのは、こちらか作成する?

――作成されてないのか?
病院職員:はい。

――積算書作らずに予算組みしたのか?
病院職員:はい。

――積算せずに、値段はどうやってはじいたのか?業者の言い値か?
病院職員:いえ、まあ、あのー、参考見積を頂きまして。

――どこからか?
病院職員:あの、業者さんから。

――どこの?
病院職員:ええと、この随契の業者さんですね。

――だから、言い値ということではないか?
病院職員:まあ、はっきり言ったら、そういうことになりますかね。

――そういうことか?
病院職員:はい。

――お役所仕事の発注は、きちんと積算して、予算を組んで、これを発注しますがよろしいかと伺いを立てて、決裁を受けてからではないのか?
病院職員:はい。

――そこで、もう一度聞く。随契で間違いないか?
病院職員:はい。ハイ。

――入札はやっていない?
病院職員:はい。

――積算書は作らなかった?
病院職員:……これにつきましては、参考見積と言いますか、あのー、2、3の業者さんから、えーっと、単価の見積もり、一台当たりの単価の見積もり等を取っていまして。そ……。

――それを開示すべきではないのか?
病院職員:あっ、それですね、残していなかったので。

――残してない?それは、おかしい。
病院職員:……。

――この契約の根拠が極めて曖昧だ。
病院職員:……。あの、ちょっと、この件に関しましては、あっ、あの中身の件につきましては、ちょっと、あのー、私では、あの、お答えすることは難しいので、ええっと……。

――誰ならわかるのか?
病院職員:あの、経理課長の方が、またお答えさせて貰おうと思うんですけれど、今ちょっと席を外しておりまして……。折り返させて頂いてよろしいでしょうか?

――失礼ながら、あなたはこの件に関わっているはずだが?
病院職員:すみません。私この時、まだこちらの方に転勤して来てませんで、あの、細かな経緯の方が、あのー、ちょっと分かりかねるんです。

――では、話の分かる上司の方に代わってください。
病院職員:あっ、すみません。今日はもう時間外で帰ったんですけれども。

――その経理課長は現職でおられるんですね?
病院職員:はい、はい。

 「入札はなかった」「随意契約だった」と断言していた病院職員が、積算書や参考見積の有無について追求されたとたん、しどろもどろに――。「積算書はない」と答えておきながら、『2、3の業者さんから』から参考見積をもらったという。しかも、パソコンの購入価格について説明するための公文書である『2、3の業者さんから』の見積書を、『残していない』――つまり廃棄したと言い出した。立派な公文書毀棄であることに気付かないほど、職員が慌てていることが分かる展開だ。

 やり取りの流れからして当該職員は事の全貌を知っているようだが、最後は“転勤して来る前の話”なので、細かな経緯が分からないと逃げた。この県立病院の情報公開を、信用しろという方が無理だ。何かを隠そうとしているのは確実。記者は、経理課長に折り返させるという言葉を信じて、連絡を待った。そして翌日――。

(つづく)

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