隠ぺい疑惑に揺れる鹿児島県警が、2021年に起きた県医師会の男性職員による強制性交事件に関するハンターの質問取材に回答を拒否した。同様の質問を行った他のメディアには回答し、県警の腐敗を厳しく追及してきた本サイトだけに答えないという不当な対応。回答拒否に加え、その連絡さえしない理由を尋ねたハンターの記者に対し、県警の広報はとんでもない「ウソ」をついた。
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この質問書を送った際、ハンターの記者は文書取材の方法などについて確認するため県警の広報と複数回にわたって話している。県警広報もFAXの着信を確認。担当の県警職員は、受け取った質問書の内容について「8月30日と記載があったんですけど、なるべく急ぐんですけど、8月30日というのは必ずというのはお約束ができなません。なるべく急いで対応しますからご理解下さい」と回答期限の延長を示唆していた。
先週13日、回答がいつになるのか県警広報に確認したところ、質問書送付の時点から担当していた「ムラカミ」と名乗る職員が、言いにくそうに「お答えを致しかねます」と告げる。取材拒否であり、それが「組織的な判断」だという。開いた口が塞がらない。以下、記者とムラカミ氏とのやり取りの概要である。
県警広報:もしもし、お電話代わりました。あの、県警本部の総務課のムラカミと言います。
――ニュースサイトハンターの中願寺と申します。お世話になります。
県警広報:お世話になります。すいません、電話いただいたみたいでちょっと申し訳ありませんでした。折り返しがお時間遅くなりました。――先月の27日にお送りした質問書の回答について。
県警広報:はい。27日にいただいてた質問書の件ですね。――そんな長くはかからないとおっしゃっていたが?
県警広報:はい、その件でですね、ちょっと、あの、ご回答なんですけど、そのお問い合わせのあの件につきましては、お答えをいたしかねますということですね。――おかしいじゃないか。他の報道機関には答えている。
県警広報:そういうことでちょっと、あの。――いやいや、ちょっと待ってくれ。
県警広報:判断されましたので。――他の報道機関には答えている。
県警広報:はい。――なんでうちにだけ答えないのか?
県警広報:はい、あの、もう、お問い合わせのことにつきましてはお答えいたしかねます。――理由を言ってくれ。
県警広報:はい、あの、そういうふうに判断されましたので。――他の報道機関には答えてるじゃないか。
県警広報:はい。――なんでうちだけなのか。
県警広報:それ以上のことは、それ以上のことは、ちょっとお答えできないというふうになってますので。――それはおかしくないか?
県警広報:はい、はい。申し訳ございませんが……はい。――では、なぜこちらから電話するまで連絡してこないのか?
県警広報:あの連絡先がわからなかったからです。ファックスとメールしかなかったもんですから。――ファックスかメールで「回答拒否」だとやればいいじゃないか。質問書にはそうするように書いている。
県警広報:いえいえ、あの、お電話を、あの、するというちょっと方法がなかったので。――それは理由にはならない。
県警広報:はい、その点も含めてですね……。――回答しないなら回答しないで、ファックスかメールで送ればいい。子供でもわかる話だ。
県警広報:はい。まあそれにつきましても……。――県警はふざけてるんじゃないか?
県警広報:……。――身勝手が過ぎる。よその報道機関には答えて、うちには答えないのというのはどういうわけか。合理的な説明を!。
県警広報:よその報道機関っていうのは、具体的にどちらのことを言ってるんですか?――自分たちで考えればわかるだろう。答えてるのだから。
県警広報:はい。それは……。――おたくらの回答が、記事になってるじゃないないか。
県警広報:よその報道機関って言ってる、あの意味がちょっとわからないんですけど。――他の報道機関がうちと同じ質問の内容について回答を求めて、回答結果を記事にしているということ。
県警本部:なぜ他の、他のところがお宅と同じ取材をしているというのはわかるんですか?――記事になってるからだ。
県警本部:はい、それはわからないですね。そんなのは……(笑)。――人の話聞いてるか?現実に記事になってるから、尋ねてる。
県警本部:はい。まあ、いずれにしても……。――人を馬鹿にしたようなこと言っちゃダメだ。記事になってるから聞いてる。他の報道機関に答えて、うちに答えない理由を述べなさいと言ってる。子供じゃないんだから。
県警広報:記事になっていても……、お問い合わせの件につきましては……。――ふざけてるね、あなた方。
県警広報:お答えいたしかねます、ということで組織的な判断が出ておりますので。――うちには答えないということでいいか?
県警広報:ご理解よろしくお願いします。――理解しない。よろしくない。誰が理解するのか。バカじゃないか。理解できないから抗議してる。
県警広報:もうそういうふうに、あの、組織的な判断が出てますので、私一人の個人的な判断ではございませんので。――それならそれで連絡をして下さいと言っている。電話番号がわからなかったなんて、子供みたいなウソ言ったら駄目だ。
県警広報:ですから、電話番号がわからなかったので。――繰り返すが、FAXかメールで回答して下さいと書いたじゃないか。
県警広報:口頭で回答するっていうふうな組織的な判断が出たものですから。――いやいや、そんなことは知らない。そちらの組織内の話だろう。だったら電話すればいい。
県警広報:はい。――事件は隠蔽するわ、証拠は隠滅するわ、でたらめな組織だ。組織で決めたというのなら、責任者の本部長を出せばいい。責任者は野川だろ。
県警広報:声を荒げないでください。――あなたが組織が決めたというから、責任者をだ出せと言っている。別に荒げていない。
県警広報:声を荒げないようにお願いいたします。――こんだけ馬鹿にされたら、あなたも同じ立場だったら、声が大きくなるのではないか。野川さんと代わって下さい。
県警本部:代わることはできませんので。――どうして?
県警本部:この件につきましては、組織的な判断で、お問い合わせの件はお答えいたしかねますということで、判断が出ていますので。――あなたは電話番号がわからなかったから連絡できなかったなどと、子供みたいなことを言う。もう結構。あんたたちは腐りきっている。
要するに、同じ内容の質問をした他のメディアには答えるが、ハンターにだけは答えないということ。それを「組織的な判断」で決めたというのだから呆れるしかない。同様の内容で行われた他のメディアの取材に対して、県警が回答したのは紛れもない事実。回答があったからこそ週刊金曜日が記事にしているのだ。「なぜ他のところが同じ取材をしているとわかるのか」と何度も聞いてきたが、そんなことはぞれぞれのメディアの取材に応じている県警の広報が一番よく知っているはず。言いがかりにしてはお粗末すぎる。
取材拒否の理由を何度尋ねても「お答えいたしかねます」を繰り返すばかり。「組織的な判断」についての合理的な説明は返ってこなかった。しかし、強制性交事件に関する質問にだけ答えないという姿勢は自分たちの非を認めたようなものだ。今月5日、ハンターは、県警が定例会見を開く際、事前に報道各社に質問を提出させ、“シナリオ”に沿ったやり取りを行っていることについて県警の広報に確認した。この時は、“会見向けの質問提出はかなり以前からの慣行で、いつから始まったのか分からない”と回答している。しかも答えた担当職員は、今度の取材に対し回答拒否を告げてきた「ムラカミ」という人物だ。もみ消しの疑いが濃くなった強制性交事件に関する取材に限って答えないというのであれば、その理由は“組織にとって都合が悪いから”ということに他なるまい。
お粗末なのは、取材拒否の連絡さえしなかったことを「電話番号がわからなかった」という言い訳だ。県警の広報が理由として挙げたのは「お電話を、あの、するというちょっと方法がなかった」、「電話番号がわからなかった」――。子供でも、もう少しましな言い訳を考えるだろう。
県警への質問書には、回答を「FAXかメールで」としており、ハンターのFAX番号とメールアドレスを明記しておいた。その点を糾すと、「口頭で回答するっていうふうな組織的な判断が出た」と言う。『口頭で回答するっていうふうな組織的な判断』とは、いなかるものなのか?バカバカしくて、その点について議論する気にもならなかった。
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そもそも、「ムラカミ」という広報職員がハンター側に連絡をしなかった理由だとする「電話番号がわからなかった」は、真っ赤なウソだ。「ムラカミ」氏はハンターが質問書を送付した8月27日に、複数回記者とやり取りを行っており、うち4回はムラカミ氏側から架けてきたものだ。記者の携帯には、その記録が残っている。(*下が携帯の画面)
質問書送付の方法について、郵送すべきなのか、あるいはFAXやメールでいいのか確かめるため、最初に県警に電話を入れたのが27日午後4時41分。2回電話している。広報担当者が不在で話ができなかったが、その後、県警側から入電。今度は記者が電話に出られず、4時57分に折り返した。電話に出たのが、総務課広報係の「ムラカミ」氏だった。
「総務課の広報担当のムラカミと申します」で始まったやり取りの中で、取材のため質問書を送る場合、送り先はどこかと尋ねた記者に同氏はこう言っている――「こちら(広報)宛に、FAXかメールでいただけると対応いたします」。回答の方法についてムラカミ氏は、「FAXか、またはメールか電話か。(FAXを)確認したあと、電話させていただいてよろしいですか」――。この会話からしても、県警側がハンターの記者の電話番号を把握していたのは確かだ。
質問書をFAX送信した後、県警から電話をもらったが打ち合わせ中で対応できず、5時46分にかかってきた電話でムラカミ氏と話している。その際の同氏の発言は「(質問書の回答期限に)8月30日と記載があったんですけど、なるべく急ぐんですけど、8月30日というのは必ずというのはお約束ができません。なるべく急ぎ対応しますからご理解下さい」だった。ここまでに県警側は計4回、ハンターの記者に電話を架けてきていた。「番号が分からなかった」などと平気で言える神経は理解できない。
2021年秋に起きた鹿児島県医師会の男性職員による強制性交事件をもみ消そうとした県警は、霧島署員による2件のストーカー事件や枕崎署員の盗撮事件でも隠ぺいや証拠隠滅といった行為を重ねていた疑いがある。ウソやでっち上げ、捏造が得意ということだ。事実、二人の元警察官による内部通報から始まった県警に関する一連の疑惑を巡っては、県議会や記者会見の場で、次から次に組織の闇を示す新事実が明かされ、警察組織の威信が大きく揺らぐ事態となっている。
信頼回復のためには徹底した情報公開が必要なはず。しかし、気に入らない相手だからなのか、触れてほしくない事件だからなのか、きっかけを作ったハンターの取材を拒否するという子供じみた対応をするようでは、救いようがない。結局、県警が言っている改革だの再発だという言葉は、弥縫策の一環。野川本部長による事件の隠ぺい指示を早々に「なかった」と結論付けた組織に、なにかを期待するのが無理なのである。
ちなみに、今年6月の記者会見でハンターへの家宅捜索について聞かれた野川本部長は「報道の自由や取材の自由は理解している」と述べた。これも「ウソ」だと言っておきたい。理解していれば、特定のメディアに対する取材拒否を、「組織として判断」するわけがない。
<中願寺純則>