小林鷹之前経済安保相に「政治とカネ」疑惑|上脇教授が刑事告発

自民党の総裁選の投開票が9月27日と迫る中、候補者の一人である小林鷹之前経済安保相が千葉地検に刑事告発されたという衝撃のニュースが飛び込んできた。特定の企業から上限を超える寄付を受けていたという政治資金規正法違反容疑だ。告発したのは、神戸学院大学の上脇博之教授で、9月16日付となっている。

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告発状の記載事実は以下の通りだ。

小林氏が支部長を務める「自由民主党千葉県第二選挙区支部」は、2021年に地元の冷蔵会社・K社から540万円の寄附を受けた。K社は、同年、自民党の豊田俊郎参議院議員が支部長の「自由民主党千葉県参議院選挙区第六支部」に360万円を寄附している。法人登記によれば、K社の資本金は9,800万円となっている。

政治資金規正法では、企業団体などの寄附について「寄附の量的制限」という規定を設けており、会社の資本金額や出資の金額に応じて、寄附の総額を定めている。資本金が50億円以上なら寄付総額は3,000万円まで。10億円未満なら750万円と決められている。

K社の場合、上限は750万円だが、2件で計900万円を寄附しており政治資金規正法に抵触することになる。

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問題の2021年、小林氏側にはK社から毎月のように20万円が提供されている。それが、衆議院選挙のタイミングで10倍以上の300万円に跳ね上がった形だ。小林氏にとってK社は、まさに“タニマチ”である。ただ、K社が豊田氏に寄附している内容を、小林氏が知らなかったとも考えられる。だが、上脇教授は「それはあり得ないと思います」と話す。

小林氏の自民支部と豊田氏の自民支部の所在地は、K社と同じ千葉県八千代市にあり、お互いの距離はいずれも車で10分から15分程度と近接している。2014年9月12日の小林氏のFACEBOOKには、兵庫県西脇市にあるK社関連会社の竣工記念式に参加した時の様子が投稿されており、《朝5時台に地元を発ち、「日本のへそ」兵庫県西脇市へ。地元八千代市を拠点に世界に挑む●●●●●●株式会社の西脇工場の見学&竣工記念式に参加。地元の藤井比早之衆議院議員と豊田俊郎参議院議員と共に祝辞を述べました》と書き込んでいた。K社を起点にした、小林氏と豊田氏の関係がよくわかる。

二人の関係を示す証拠はまだある。小林氏の総裁選出馬で、豊田氏は推薦人に名を連ねている。豊田氏が《9月27日の投開票日に向け、党員の皆様の一票でも多くの投票を小林候補にお願いいたします》とXにポストすると、小林氏は《豊田俊郎参議院議員には、私が政治活動をスタートした時から、八千代市長(当時)としてご指導頂いてきました。豊田議員の助言がなければ、私の地元活動はここまでできなかったと思います。今回も推薦人に。感謝しかありません。八千代から頑張ります!》と返信しており、親密さを伝えるやり取りだ。

小林氏の自民支部の政治資金収支報告書には、2018年から2020年にかけて、K社から毎年240万円、合計で720万円の献金を受けていたことが記されている。豊田氏の自民支部も、2018年から2020年まで毎年360万円、合計で1,080万円の寄附を受けていた。公表されている政治資金収支報告書をチェックするだけでも、K社による「寄附の量的制限」違反は明らか。政治資金規正法違反の疑いが否定できない。

岸田文雄首相は、総裁選出馬断念を表明した際、裏金事件を含む政治とカネの問題の「責任をとるため、総裁選には出馬しない」と述べた。今回の総裁選において、立候補者が自覚しなければならない大前提は、「政治とカネ」についてクリーンであること。しかし、小林氏を巡っては先月、2021年の衆議院選挙で小林氏の自民支部が無償で小林氏に事務所を提供した際、政治資金収支報告書に賃料分を寄附として記載していなかったことが判明し、収支報告書の訂正に追い込まれている。

小林氏とともに刑事告発された豊田氏は参議院の政治改革特別委員長だが、旧統一教会の関連イベントで来賓として挨拶していたこともわかっている。

「小林氏は若くてクリーン、政治とカネの問題はないとして出馬してきているはず。それがちょっと調べただけでも、政治とカネの問題が出てくる。自民党の金権政治の根深さを象徴するような話だ」(上脇教授)

自民党は総裁選で大騒ぎする前に、裏金事件を含む「政治とカネ」や旧統一教会の問題を再調査すべきである。

 

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