ブロック紙・北海道新聞(札幌市中央区、宮口宏夫社長)が来秋までに編集・制作部門の社員を80人削減する方針を事実上固めたことがわかった。2022年時点で約1200人だった社員総数を27年度までに1000人に圧縮する「1000人体制」計画の一環で、25年10月までに編集局60人、論説委員2人、及び制作局18人の計80人を減員する。筆者が入手した複数の内部資料などからわかった。
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計画によれば、道新は編集局の配置人員を本年4月時点の520人から60人減らし、25年10月までに460人とする。札幌本社の編集センターで現状の79人から22人減の57人となるほか、地方の支社・支局でも大幅な人員見直しをはかる方針。具体的には函館、旭川、釧路、及び帯広の4報道部で各4人減、岩見沢で2人減などとなり、現在2人体制の留萌や遠軽など7支局が1人体制に、すでに1人支局状態の夕張、池田、及び芦別の3支局では支局長が常駐しなくなるという。来年7月に移行委員会を設置し、10月1日付で定員を改定するスケジュールのようだ。
編集・制作部門の減員は、道新が進める「10年損益改善計画」の「2027年度1000人体制」実現のためという。宮口宏夫・現社長は22年12月、労働組合との団体交渉で当時の執行部に人員削減の必要性を主張、新聞各社の売り上げが減少し続ける中、道新は他社に較べて従業員の減少率が低く、そのため他社よりも利益が出にくい構造になっていると説明していた。ひいては「売り上げ規模に見合った人員体制」にする必要があるとし、計画への理解を求めている。
道新ではおりしも、建築中だった新社屋が竣功し、11月から本社機能が移転したばかり。直近の『社報』(*下の画像参照)によれば、同1日に開かれた記念式典で宮口社長は「器は立派にできあがった。次になすべきことは充実した仕事で中身をいっぱいに満たしていくこと」などと挨拶、新社屋移転を「道新リボーン(生まれ変わり)」の第一歩と宣言した。
同社長ら幹部のお祝いムードとは対照的に、社では昨年9月の夕刊休止と本年6月の料金改定以降の部数減に歯止めがかからず、7月からは『社報』への部数掲載が取りやめられている。ただ筆者が入手した内部資料には直近の発行部数が掲載されており、それによると11月の速報値は74万4694部。4月時点の78万8721部から4万4000部あまりの減部となり、前年同期比でも6万部以上減らした形だ。
今回の編集・制作80人減について、中堅記者の1人は「経営者がサディストなので、マゾでなければやっていけない」と自嘲、「次期社長と目される幹部も『アイスマン』の異名をとり、液体ヘリウムのように現場から熱を奪っている」と歎息する。地方勤務の現役記者も「10年後には会社が存在していないかも」と先行きを危ぶみ、新社屋移転については「むしろ札幌の人たちが可哀相。あんな建物には通いたくない」と鼻白む。移転後の旧本社社屋をめぐる事情に詳しい元社員は「札幌はオフィス供給も充分だし、何をするにももう遅い。跡地利用には駐車場説も出ているほどで、浮足立ってるのは上層部のほんの一部でしょう」と冷ややかだ。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |