「和解金500万円」岸和田市長の性加害に離党勧告でも日本維新の会が抱える火種

大阪府の吉村洋文知事が新代表に決まった日本維新の会。ハンターはこれまで、同党の関係者が次々に起こす不祥事について厳しく批判してきた(既報)が、ここに来て吉村新代表の足もとを揺るがしかねない不祥事が勃発した。

◆   ◆   ◆

11月28日、大阪府岸和田市の永野耕平市長の性加害スキャンダルが明らかになった。記者会見した被害者側の弁護士は、大阪府内の女性が永野氏と面識を持った2019年6月に性行為を強要され、その後も継続的に肉体関係を求められて応じざるを得ない状況が続いたと発言。新型コロナウイルスの感染拡大でいったんはおさまっていたが、永野氏は緊急事態宣言が解除されると性加害を再開。被害女性は2021年春、休職に追い込まれ、同年7月に警察に被害届を提出したという。捜査のすえ送検されたが、刑事事件としては不起訴になっている。

当時適用されたのは法改正前だったことから「不同意性交罪」ではなく「強制性交罪」。同罪は「脅迫」などが要件となっていたため立件に至らなかったとみられている。

そこで被害女性は2022年6月、2,000万円あまりの損害賠償を求めて民事訴訟を提起。今年11月14日に、大阪地裁で和解が成立した。

弁護士が一部を黒塗りにして公開した和解の文書によれば、永野市長側が非を認めた形で、次のように記されている。

・《(永野市長の)地位や日頃の言動からうかがわれる影響力(女性の)就業歴や採用当時の年齢などの諸般の事情を考慮すると、2人は対等の関係にあったとはいえず、むしろ(永野市長は女性に対して)雇用維持などで優越的な立場にあり社会的な上下関係が形成されていた

・《(永野市長は)公人であり配偶者を有する身であることを考慮すると、性的関係を持つことは自制すべきであったとの非難を免れることはできない》などとして、永野市長の女性との不適切な関係があったことを認め、和解金500万円の《支払義務》と《訴訟にまで至ったことについて(永野市長は)女性に謝罪の意を表明する》

つまり、市長という立場にある者としては“あるまじき行為”であると断罪した上での和解となっているのだ。ある維新の大阪府議がこう話す。

「和解金500万円なんて、判決とられて負けたようものです。現職の維新公認市長が性加害――。衝撃が走っています」

和解内容の一報が伝わったとき、吉村知事は来年春に開催される大阪・関西万博のためフランスのパリへ、維新の代表代行・横山英幸市長とともに出張中。帰国直後、記者に問われると「綱紀委員会を設置して調査する」と述べている。

永野市長自身は「性加害したことはない。悪いことしたわけではない」と反論しているが、維新から「離党勧告」を突き付けられると党が開いた綱紀委員会での弁明に欠席。吉村知事は「説明責任を果たすべき」「除名もありうる」と厳しい姿勢を示した。

これを受けた永野市長は、11月8日と9日に記者会見。「一定期間、女性の方と不適切な関係、不倫関係にありました。このことは認めて謝罪します」「不貞行為、素行の悪さがあった」と頭を下げた。

そして、優越的な地位を利用した「性加害」という疑惑に対しては、「裁判所からも上下関係とあるが、人間関係は対等だと思っていた。法に触れいてない」と反論。「維新から除名になれば市長を辞める」と明言した。

下駄を預けられた格好の維新は、永野市長が事情聴取にも応じないことを理由に「除名にするほどの証拠はない」として離党勧告処分を決定し、早々と幕引きを図った。そこには裏事情があるという。

「ある記事で永野市長以外に2人の男性が性加害に加担したという内容があります。永野市長が目隠しをして、2人を呼び寄せたというのです。その2人のうち一人は永野市長と親しい維新の現職議員X氏ではないかという話が市役所内では広がっています。X氏は維新の馬場伸幸前代表に近いことで知られており、これ以上、スキャンダルが広がると維新の党勢にも関わると、あわてて離党勧告でお茶を濁したともっぱらです」(前出の大阪府議)

たしかに、維新の大阪府議が指摘した記事を読むと、永野市長に加害行為をされ、別の男性にも――という、裁判を傍聴したジャーナリストのリポートが確認できた。

おぞましい話だが、永野氏は「市役所に来る市民からのメッセージは励ましばかりだ。これからも市民に尽くす」と市長続投を宣言。この発言に反応した岸和田市議会は、12月9日の審議で「市長が不倫や不貞行為を行っていても、いまだに居続けられるのはおかしい」「即刻辞職だ」と反発を強めた。

さらに、12月20日までの市議会の会期中、本会議や委員会で永野市長の出席を求めないことを、維新も含む全会派一致で市長本人に申し入れた。市長の議場入りを認めないという、前代未聞の措置。9日午後の市議会。永野市長は議場に姿を見せず、代わりに副市長が答弁に立った。

「いかにも維新らしいというスキャンダルだ。本当ならすぐに辞職すべきもの。ただ、岸和田市は情けないことに永野のクビをとっても市長選に出るぞという人が自民党関係者の中に見当たらない。維新の圧倒的な強さに恐れをなしているからです」と、ある岸和田市議が打ち明ける。2022年の市長選で2度目の当選を果たしている永野市長だが、次の市長選は2026年1月末の予定。任期はあと1年と少し残っている。前出の岸和田市議は次のように話す。

「永野市長は維新を離党したまま市長を続けるでしょう。次の市長選では無所属で出馬。維新は対抗馬を出さないつもりじゃないでしょうか。さらなる維新スキャンダルを永野市長から暴かれることを危惧しているからです。おそらく、まともな対抗馬は出馬せず、永野市長が勝って『市民の信任を得た』として維新に戻るストーリーが考えられます。性加害を認め、和解金500万円まで支払っているのにスキャンダルの広がりが怖くてクビにできない維新……。維新も永野市長と同罪という声さえ上がっています」

まさに“維新クオリティ”の酷さを象徴するスキャンダルに、毅然たる対応ができない吉村知事。維新は沈むばかりだ。

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