【2025参院選】先行き暗い日本維新の会提案の「予備選」

日本維新の会の代表に就任した大阪府の吉村洋文知事にとって、初めての大舞台となるのが今年夏の参議院選挙だ。知事は就任会見で「1人区で野党候補を一本化する。前哨戦、野党間で準決勝が必要だ」と発言。維新は吉村知事の意向を受けて「2025年参院選に向けた野党間予備選の実施案」を発表した。他党の反応は……。

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「先週末、いきなり維新の事務方から電話があって『野党間の予備選の説明をしたい』『早いほうがいい』と連絡してきた。すると維新の幹部2人が資料を片手に来たのでびっくり。党幹部が2人もそろってお出ましとは」と話すのはある野党幹部。国会、議員会館などを行脚しているのは、維新の岩谷良平幹事長と守島正選対本部長代行だという。

夏の参議院選挙で248議席のうち改選となるのは124議席。そのうち1人区は全国で32選挙区となる。だが、2019年の参議院選挙では立憲民主党や野党系無所属が1人区を10の選挙区で勝ち抜いている。今回も現職の10人は全員出馬するか、もしくは後継にあたる候補が用意されている。

維新の予備選案は、参加するかどうかの締め切りを2月28日に設定。まず、3月に1人区で政党名をあげて世論調査を実施する。その結果と昨年10月の衆議院選挙の比例代表における得票数をポイント化したものを合わせ、ドント方式で参加した政党に候補者を立てることができる選挙区数を割り当てるという。その上で希望する選挙区の調査となり、他党と重複しなければ、その政党が擁立可能。、重複した場合は世論調査をネットなどで実施し、5月に最終決定するという仕組みだ。維新が公表している資料をみても、なかなか理解しづらい内容である。ある立憲民主党の幹部はこう話す。

「だいたい、野党といっても各党とも主義主張が違う」「維新の出してきた案で、世論調査という直接、有権者が見えづらい数字で決めるという。それに公職選挙法の関係から候補者ではなく政党名で調査するというが、有権者は候補者で選ぶのだから、調査にならない」

国民民主党の幹部はもっと冷淡だ。

「仮に維新の案を受け入れて一本化しても、うち(国民民主)と政策の違う維新は応援できない。それでは一本化の意味がないだろう」

吉村知事の主張は「野党共闘、野党統一候補ではない」「一本化された候補者を、他党が応援することは義務付けない」「参加した政党が、予備選で負けた選挙区では候補者を立てることはできない」というもの。これには前出の国民民主党幹部が「それを野党共闘っていうんだよ。吉村さんはなんもわかっちゃいない」と突き放す。

維新から、予備選の説明を受けたという共産党の小池晃書記局長は「維新とは、憲法をはじめ政策が正反対。その政党との選挙協力のようなことを、国民が納得することはない」として参加しない意向を明かした。

維新の幹部は「共産党の拒否反応は織り込み済み。ただ、この案は維新が絶対優位になるものではない。むしろ、立憲民主党のほうが得をする。立憲民主党が参加しなければ予備選をやる意味もなくなる。立憲民主党を説得できるかだ」と先を睨む。

2019年の参議院選挙では、前述したように立憲民主党を中心とした野党系が1人区で10議席とった。しかし、2022年には4議席にとどまったている。同年の秋田選挙区を例にとると、勝利した自民党候補が約19万票。2位の国民民主党候補が16万票で、3位の立憲民主党候補が6万票、共産党候補が2万票、参政党候補が1万票と続いた。野党系がまとまれば、自民党に圧勝していた可能性が高い。

19年の秋田選挙区では、立憲民主党系の無所属が24万票あまりを得、自民党の候補をを約2万票差で振り切った。維新や共産党が候補者擁立を見合わせた結果だったの言うまでもない。

吉村知事は「野党が、うちもうちもと候補者を出すと、いつまでたっても自民党に勝てない」と言う。しかし、維新は19年、22年の参議院選挙で1人区をとったことがない。現在、1人区で議席を有しているのは前原誠司氏が代表だった教育無償化を実現する会に所属していた滋賀選挙区の嘉田由紀子氏だけだ。立憲民主党の中からは、次のようは冷ややかな声も聞こえてくる。

「大阪中心の維新の狙いは近畿地方の1人区。嘉田氏の滋賀に和歌山と奈良。東北や東海では立憲民主党や国民民主党の勢力が強くて(候補者を)立てられない。近畿で1つでも1人区が獲得できれば儲けもの。要は、維新が1つでも選挙区で議席をとりたいということ。吉村さんは、それを成果にしたいからやっているようなものだ。それに、もし予備選でうちが勝っても、維新のことだから無所属候補を出すといった方法で約束を反故にすることが十分ありえる」

実は、維新内部でも予備選には反対論が少なくない。馬場伸幸前代表時代にも、同党の岩谷氏らは何度も予備選の実施を訴えていたが、採用されなかったという。維新関係者が次のように内幕を明かす。

「馬場前代表は主戦論ばかりで、予備選の話にはまったく応じてもらえなかった。岩谷さんは吉村代表とは大阪維新の会で当選同期。馬場さんとは対立するグループにいる。馬場さんたちに対抗して、なんらかの成果を出したいとぶち上げたのが予備選。正直、他党から言われているように予備選をやって滋賀、和歌山、奈良のうち1つでもとれたらラッキーという感じ。そうなれば、吉村代表や前原副代表のメンツが立ちますからね」

つまりは、維新の“内部抗争”から発展した予備選ということ。実現性は乏しい。

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