東京地検特捜部が狙う福岡県大任町・談合組織「田川政経研究会」の実態

東京地検特捜部が実態解明に向け捜査を行っていることが分かった福岡県大任町の談合組織「田川政経研究会」。組織の実質的な支配者とみられる永原譲二大任町長は、町発注工事の入札結果を非開示にして不都合な真実を隠そうとしたが、国と県はこれを「違法」だと指弾。ハンターが不開示決定の取り消しを求めた裁判でも町側が事実上の敗訴となったことから、隠ぺいされていた入札結果が公開されるようになった。

ハンターは先月、改めて2017年度(平成29年度)から2025年(令和7年)1月までの入札結果表と各工事の入札予定価格が分かる文書を開示請求。入手した文書の内容を精査した上で落札状況をまとめた。明らかになったのは、施工能力のないペーパー業者への異常な発注件数と契約金額、さらには側近業者の優遇といった官製談合でしか成しえない全容である。

■異常な落札状況、ペーパー業者に8年で42億円超

「論より証拠」という。下は、平成29年度から令和6年度までに施工能力のない八つの“ペーパー業者”が落札した町発注工事の契約金額と、永原町長と極めて親密な関係にあるとされるいわゆる側近業者が同時期に落札した工事の契約金額をまとめた表だ。

大任町が8年間に発注した工事は698件、発注総額は139億8,966万円である。このうちペーパー業者と側近業者が受注した工事の契約金額は80億5,319万1,000円にのぼる。施工能力のないペーパー業者8社が8年間で計42億2,442万5,000円分を、側近業者5社は計38億2,876万6,000円分の工事を受注していた(*大任町の開示ミスがあったため、今月24日に田川市民センターの集会で紹介した数字を修正。本稿の表の数字が正確なものとなる)。

問題はペーパー業者が落札した工事の契約金額だ。施工能力がない以上、実際の工事は下請け業者に丸投げするしかない。しかし、ペーパー業者に数千万円から億を超える工事を受注させた以上、応分の利益を与える必要が生じる。名義料のようなものだ。関係者の話によれば、その額は工事費の約1割だという。つまり、本来なら必要のない工事費が、少なくとも1割は上乗せされているということになる。ペーパー業者の8年間の受注額は前掲の表のように約42億2,400万円。その1割となる約4億2,000万円は、公金が無駄に費消された計算になる。

当然、実際に施工した業者にも利益を与える必要がある(*むしろ、その利益の額の方が大きいはずだが)。すると上乗せ1割の上に、さらに上乗せが必要となり、工事費は本来の額を何割も上回ることになる。大任町が施工体系図や積算書を隠し続けてきたのは、そうした実態を隠す必要があったからだろう。

ペーパー業者が必要になった理由は一つしかない。側近業者などが工事を独占する状態を糊塗するためだ。実際に大きく儲けているのは、数少ない側近業者など永原氏と極めて近い建設会社だとみられている。

■平均落札率「96.39%」

驚くべきはそれぞれの工事の落札率だ。平成29年度から今年度までの8年間で698件もの工事が発注されているが、入札予定価格が分かる文書で残っているのは令和元年度からの6年間分だけ。令和元年度から令和6年度までの6年間に大任町が発注した工事558件の平均落札率は96.39%という異常な数値だった。一般的に、95%以上の落札率は談合の可能性が高いとされており、大任町の96.39%は他の自治体には見られない高率となる。「談合」を裏付ける証拠とみて差し支えあるまい。

永原町長は今年2月から、3億円ほどの予算を投入し、町内の住民すべてに現金5万円と米5キロ、さらには町が製造している納豆とドレッシングを支給している。選挙向けのバラマキだと分かっていても、物価高に喘ぐ住民にとってはありがたい話だろう。しかし、その何倍、何十倍もの公金が永原氏の業界支配をゆるぎないものにするため、一部の建設業者だけに流れてきたのは事実。東京地検特捜部という我が国最強の捜査機関が永原氏を中心とする談合組織の実態解明に向け捜査を行っていることが明らかになった現在、独裁者をあがめる必要はなくなっている。

 

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