今月8日、自民党鹿児島県連が執行部と選対関係者の合同会議を開き、鹿児島県知事選挙で推薦した三反園訓氏以外の候補者を応援した県議会議員の処分問題を協議した。伊藤祐一郎前知事を支持した複数の県議が処分の対象になったが、この日は方向性を定めただけで、県連と県議団の話し合いを待って正式決定を下す方針だという。おかしな話である。
■負けた責任を転嫁する卑怯な議員たち
自民党は、参院選と同時に行われた2016年の知事選で敗れており、その時の推薦候補は4選を目指していた伊藤氏。当選したのは、「脱原発」を掲げ共産党を含む野党勢力に推された三反園前知事だった。
同氏は知事就任直後に変節して自民党にすり寄ったが、県政トップにあるまじき行為を繰り返したことで評判は急降下。都市部で三反園氏を支持する有権者は、日を追うごとに減る状況となっていた。
多くの地方議員や自民党員が三反園氏に不信感を抱く中、強引に同氏の推薦を決めたのは外薗勝蔵県議会議長と県連執行部だ。この過程で外薗氏は、2元代表制の意義を無視して県会議長でありながら現職の擁立に向けて奔走。最後は県議団総会でヤクザまがいの恫喝と屁理屈をもって慎重派を黙らせ、三反園推薦を決めさせた。自民党がバックについた時点で現職知事の再選に疑いを抱く有権者は少なかったはずだが、三反園氏への“追い風”は止まなかった。現職以外に6人もの候補者が乱立し、“反三反園票”が割れたのである。
現職には極めて有利な選挙だったはずだ。しかも三反園氏には、公明党の推薦までついた。普通なら絶対に負けないパターンだが、三反園氏はあっけなく破れている。当選した塩田康一知事と伊藤元知事が一本化して戦っていた場合、三反園氏はダブルスコアで敗れていた可能性が高い。それほど支持の薄い候補者を担いで、知事選2連敗という不名誉な結果を招いた責任を、じつは誰もとっていない。
県連会長は正式な「辞意表明」すら行っておらず、内々で事を済ませた格好だ。一番責任があるはずの外薗議長や日高滋県連幹事長は、辞めるどころか伊藤派県議らの処分を声高に叫び、自分たちは逃げようという魂胆だ。薩摩隼人が最も嫌ったのは、“卑怯”だったそうだが、「責任転嫁」はその最たるケースだろう。
外薗氏が尊敬するのは、薩摩隼人が尊敬してやまなかった西郷隆盛だというが(下の画像は外薗氏の公式HPより。赤いアンダーラインと矢印はハンター編集部)、泉下の西郷さんは「冗談じゃろ」と苦笑しているに違いない。
■A級戦犯は外薗県会議長
卑怯な県議らがどれだけ“処分”と叫ぼうと、森山氏がそんなバカなまねを許すとは思えない。自民党県連が三反園推薦を決めた今年4月、森山県連会長が「党議拘束」に言及したとする報道があったため、確認を求めた際の記者と同会長のやりとりは次のようなものだった。
――自民党が、鹿児島県県知事選挙で現職の三反園さんを推薦することを決めました。その件で、「党議拘束がかかる」と発言されたとの報道があります。事実ですか?
森山:党議拘束がかかるちゅうことよりも、党で決めたことは皆で守ろうという話です。――「党議拘束がかかる」と発言されたのですね?
森山:党議拘束だったかどうか、そこ、ちょっと私も記憶がありませんが……。基本的にはですね、決めたことは守ってもらわなければならないということ。――自民党の場合、党本部の総務会で決まったことのみに党議拘束がかかるということですが?
森山:そう、そう。そうですね。まぁ、本部の推薦まで決まりましたので、党員と違うことをすると、注意喚起ぐらいはいくと思います。――なるほど、注意喚起ですね。こころして選挙をやれと……。
森山:そう、そう、そう。
「党員と違うことをすると、注意喚起ぐらいはいく」。つまり、伊藤前知事を支持した県議らに注意喚起はあっても、それ以上の処分はないということだ。このやり取りの後、森山会長はこうも言っている。
「党員の資格というのは非常に大事ですから、いい加減にはできない」――。
ところが、県連会長のこうした姿勢を理解できていないのか、8日に開かれた県連の会議の席上、外薗議長ら“三反園派”の面々からは、伊藤元知事を支持した複数の県議に対し「離党勧告」や「除名」を求める発言まであったという。親の心子しらずということだ。
伊藤元知事は今回の選挙で推薦こそ得られなかったものの、前回までは「公認並」の扱いを受けた人物。その伊藤氏を支持したことが、党員資格を奪われるまでの反党的な行為だったとは思えない。野党勢力の神輿だった三反園氏を推薦することの方が、よほど筋の通らない話だろう。三反園陣営は自民党支持層の3割程度しかまとめきれなかったが、それは筋が通らないことを強引にやったせいなのだ。議長の立場にありながら、自民党県議団を間違った方向に導いた外薗氏こそ、A級戦犯ではないのだろうか。昔の薩摩武士なら、とうに腹を切っている。
余談ながら、県連の会議で外薗議長は、何故か現在ハンターが追及しているマリコン業界の記事ことに触れ不快感を示したという。語るに落ちるとは、こういうことを言う。