参院選惨敗で追い込まれた石破茂首相、続投に固執

昨年の衆議院選挙に続き、参議院選挙でも惨敗した自民党。結党以来初めて、衆議院と参議院のいずれでも「少数与党」になった。いったんは続投宣言した石破茂首相だったが、党内外からの辞任圧力は強まる一方だ。

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参議院選挙の投開票直後、石破首相は記者会見で「比較第1党となる議席をいただいた」「選挙結果に対する重大な責任を痛感しながらも、政治を停滞させないよう、比較第1党としての責任、そして国家、国民の皆様方に対する責任を果たしていかねばならないと考えている」として「続投」を表明した。ある自民党の大臣経験者は、苦い表情でこう語る。

「石破総裁で臨んだ昨年10月の衆議院選挙、そして今回の参議院選挙と国政選挙2連敗した。21日に記者会見をやるということは、18日――つまり選挙戦の最中に決まっていたようだ。選挙前の予想からも過半数確保は無理だとみられていたことから、早くもハラを決めたのか、スパッと辞任して責任をとるもんだと思っていた。党内は次の総理総裁の話で盛り上がっていた。それが、投開票日の20日夜から『続投』と言い出した。あまりの面の皮の厚さに笑うしかなかった」

自民党の規約には党総裁を「リコール」できる規定がある。《総裁の任期満了前に、党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があったときは、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う》(党則6条4項)というものだ。つまり、自民党所属国会議員と各都道府県連の代表者の合計の過半数が要求すれば総裁選を行うことができる。

過去、「神の国発言」などお失言を繰り返した森喜朗元首相(当時)へのダメ押しとなったのが、水産高校の実習船「えひめ丸」と米原子力潜水艦の衝突事故だった。ゴルフのプレー中に連絡を受けた森氏は、そのままクラブを離さず継続。「危機管理でなく事故」と語り批判を浴びた。結果、政権支持率は低迷し、その後の総選挙で大敗する。

「リコールの話が出たのは森元首相の時くらいしか記憶がない」「総裁のリコールというのは、自らが選んだ総理大臣を変える、つまり引きずりおろすこと。自民党にとっては恥ともいえる。そういう機運が盛り上がりそうなほど、石破さんの続投という判断に怒りのマグマが蓄積している」(前出の大臣経験者)

9月末には、臨時国会が召集される。衆議院、参議院ともに「少数与党」となれば、予算や法案を通すたびごとに、いずれかの野党の協力を得るしかない。昨年の自民党総裁選で石破首相に2回とも投票したという中堅の衆議院議員はこう話す。

「さすがに2回も国政選挙に負けると辞めるものだとばかり思っていた。続投となれば今の自公に加えて立憲民主党、維新、国民民主党のいずれかと連立を組むしかない。しかし、選挙に弱く、支持率も転落の一途をたどる石破政権と一緒になろうなんて野党はないでしょう」

それでも粘ろうとする石破首相が記者会見で“秋波”を送ったのは、立憲民主党の野田佳彦代表。社会保障改革における野田代表の意見について「給付付き税額控除については、私自身も同じ認識を持っている」「野田代表と認識を共有する部分も多い」と評価。記者会見に出席していたある記者は、「大連立を示唆するような感があった」と感想を漏らす。

しかし、立憲民主党幹部は「大連立なんてあり得ない。うちは参議院選挙で議席が情勢調査ほど伸びず横ばい。選挙区と比例であと3、4議席上積みできたはずだったが、定数4の大阪、定数3の福岡で議席を落としてしまった。とても“野党第1党でございます”なんて自慢できない。野田代表も責任をとって辞めるべき、そうすれば石破さんも総理を辞任するだろうという意見さえあります」と大連立より党内抗争が先だという可能性を示唆している。

一方、大幅に議席を増やした国民民主党の幹部は「衆参とも少数与党に転落させたのは、躍進したうちの功績が大。自民党と連立を組んで、大臣の椅子を一つもらっても意味がない。山尾ショックの反動も癒えつつある。早期の解散総選挙か、野党がまとまって内閣不信任案を提出する形で政権交代を求めるべきだ」と話しており、与党との連立には否定的だ。

党内からも厳しい追及を受けて四面楚歌の石破首相だが、前出の大臣経験者は次のような見立てを示している。

「石破さんは、続投と言いながらも日本とアメリカの関税交渉にメドが立てば辞めるという思いがあったのも事実。総理が『辞める』と言ってしまえば、8月1日が期限の関税交渉で相手にしてもらえなくなるからだ。関税交渉に一定のメドが立てば辞めものと信じていたが、どうやら総理の椅子に居座るつもりのようだ。臨時国会までには新たな総理・総裁を決めて、政局次第では解散総選挙に打って出て衆議院で過半数を取り戻す――そういう戦略もあり得るんだが・・・」

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