世耕弘成元参院自民党幹事長の厳しい現実

自民党の裏金事件で、離党勧告の処分を受けた世耕弘成前参院自民党幹事長。当初は党員資格停止か次期選挙での非公認という見方が大勢だったが、自民党執行部は除名に続く「離党勧告」を選択した。追い込まれた世耕氏は……。

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「不正・不適切な会計処理について派閥の幹部の立場にありながら適切な対応を取らず、大きな政治不信を招いた者の政治責任は極めて重い」――茂木敏充幹事長は、安倍派の参議院会長だった世耕氏を厳しく批判。世耕氏は、再審査を申し立てず離党届を提出した。「決定に従って、離党を決断した」と述べたが、議員辞職は否定。間髪入れず、安倍派の参議院議員に呼びかけ、会合を持った。参加した安倍派の参議院議員がこう漏らす。
「30人ほどが集まった。世耕さんは『申し訳ない』と言いながら『どうしてこういう処分なのかよくわからない』という趣旨ものことを漏らしていた。彼の力の源泉は最大派閥の安倍派で参議院議員を束ねてきたこと。しかし、離党すれば求心力は一気に落ち、今後世耕さんが呼び掛けても皆が集まることはないでしょう。世耕さんは偉そうにしすぎた結果、厳しい処分を食らったようなものだ」

2023年10月25日の臨時国会で代表質問に立った世耕氏は、岸田文雄首相に対して「支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿が示せていない」、「岸田総理ご自身は、リーダーとはどうあるべきとお考えでしょうか?」、「岸田総理の決断と言葉については、いくばくかの弱さを感じる」、「総理は今いくら頑張って成果を出しても、国民から評価されないという焦りの気持ち」とこれでもかとばかりに、けなした。この時の世耕氏の態度が、今度の厳しい処分につながったとみる関係者は少なくない。

ある自民党幹部によれば、同じく離党勧告だった安倍派の座長、塩谷立衆議院議員と並んで岸田首相が厳しい処分にはこだわっていたのが、世耕氏なおだといいい、その舞台裏を次のように説明する。
「世耕氏らの処分に賛同していたのは茂木幹事長、麻生太郎副総裁ら。一方、森山裕総務会長、小渕優子選対委員長らは軽めの処分を主張した。報道で、党員資格停止とされた議員が軽めの処分になったように、岸田首相は森山会長らの意見にも耳を傾けた。しかし、世耕氏に関しては譲らなかった。世耕氏の傲慢な態度、代表質問のことで頭にきていたんだと思う」

世耕氏の参議院議員の任期は来年夏まで。早くも「解散総選挙で衆院に鞍替え」というニュースが流れるなど、周囲の離反をよそに意欲満々だ。世耕氏が狙うのは、10増10減で3から2に選挙区が減る和歌山県の新2区。「政界引退」を表明している二階俊博元幹事長の地元に殴り込みをかけるというのだ。

これまで、何度も衆議院への鞍替えがうわさされた世耕だが、同氏を支援する和歌山県の地方議員は現状をこう分析する。
「和歌山県選挙区という広い地域になる参議院選挙を無所属で戦うより、衆議院の小選挙区、つまり和歌山2区でやるほうがまだ楽でしょう。今度のスキャンダルがなければ、世耕さんは十分、勝利できるだけの支持や人気があったと思います。ただ、裏金事件で信用は失墜した。それに二階先生は後継に2人の息子のどちらかを出してくるはず。世耕さんが出ると保守分裂になりますが、それを勝ち抜けるほどのパワーはないと感じています。それなら無所属で参議院選挙に出て、刺客を出さないように自民党と交渉した方がいいんじゃないでしょうか。世耕さんは策士なので、一度、マスコミに衆議院へと書かせて、様子を見ているのかもしれません。しかし、このタイミングでやったら反発がかなり強いはずです」

また、世耕氏が衆議院転出となれば、現在の和歌山2区選出で次期総選挙の比例区転出が決まっていた石田真敏元総務相も黙っていないと、その地方議員は言う。
「近畿ブロックは維新が強い。比例区で確実に勝てるかどうかわからないとなれば、岸田派でもある石田さんが2区から出るという話もある。世耕さんは地元の空気を理解していない」(同地方議員)

確かに、先に「政界引退」を明らかにした記者会見で二階氏は「バカ野郎」と暴言を吐いたが、反面「責任をとった感」を巧みに演出し、好感度が少しアップした。岸田首相に恩を売ったとみる向きもある。
「二階さんは政界引退を表明し、岸田首相が処分を出しやすくする環境を作った。それが、ひいては世耕氏への離党勧告につながったのです。当然、岸田首相も二階さんのバックアップに応えなければなりません。世耕さんが衆議院へ転身するなら、二階陣営とガチンコで勝負になるはず。参議院に出ても、岸田首相が刺客を送るんじゃないですかね。それほど世耕さんに対する怒りは凄まじい」(前出・自民党幹部)

4月6日、理事長を務める近畿大学(大阪府東大阪市)の入学式で世耕氏が述べた「社会で自分の立ち位置をしっかりと把握し、立派な社会人に」という祝辞の言葉が虚しく聞こえる状況だ。

裏下問題の処分に関しては、岸田首相が厳しい対応で臨むことが早くから報じられていた。世耕氏が二階氏に先駆け、離党なり議員辞職を選択していれば、「責任をとった政治家」を演出するが十分に可能だったはず。しかし、政治倫理審査会では、「何があったのか知りたい」などと他人事のような答弁を繰り返し、無責任さを露呈した。

自分の立ち位置さえ理解していないのが世耕氏で、しっかり先を見据えていたのが二階氏であることは確かなようだ。

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