知人間のトラブル処理にあたった福岡県警田川署が、親の承諾を得ずに関係のない5歳女児の服をめくって身体検査し、ショックを受けた女児が「分離不安障害」と「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)を発症し、現在も苦しんでいることが分かった。
女児側は昨年7月、違法な検査で被害を受けたとして福岡県に損害賠償を求める訴訟を福岡地方裁判所田川支部に提起。いまも裁判が続いている。
■謝罪一転、行為を否定
事件が起きたのは2020年9月。知人とのトラブルに巻き込まれた女児の親が田川署に呼び出され、トラブルの相手と向き合う中でのこと。夜間である上に急場の話で預け先もなく、5歳の女児を同行せざるを得ない状況だったという。
田川署1階の応接スペースで親が警察官に事情を聞かれていた時だった。親は女児とトラブル相手、女性警察官の3人がいたパーテーションの向こう側の異変に気付き、そちらを見ると、制服姿の女性警察官が、女児の服をめくりながら「おなか見せて」「背中見せて」と言いながら身体検査を行っていた。
「なんで私の娘の身体を勝手に見るのか!」と声を上げた親に対し、女性警察官は「見ないといけないから」の一点張り。トラブル相手は「虐待してるかもしれないから、警察が見ただけ」と言い返してきた。虐待など一切なく、トラブル相手の単なる言いがかりだった。
女性警官が女児の身体検査を行った場所は、パーテーション越しにいた親から1メートル足らずのところ。声をかけることは当然可能だったが、断りもせず、いきなり身体を調べるという不適切極まりない行為だった。
トラブルの話はいったん済んだものの、その日を境に明るかった女児の様子が一変、次のような状態になっていった。
・夜、眠れない。
・親から離れない。
・赤ちゃん言葉。
・ようやく寝ても「怖い夢」で起きる。
一向に収まらない女児の様態。翌2021年1月、ケースワーカーなどに相談して医療機関を受診。診断結果は「分離不安障害」「心的外傷後ストレス障害疑い」だった。症状は治まらず、女児が7歳になった22年には心的外傷後ストレス障害」の診断を受けている。
一連の動きの中で田川署は、一度は非を認めて謝罪しながら、その後「服をめくったのはトラブル相手」などと主張を変え、違法行為を否定する姿勢に転じている。
民事訴訟の審理はこれまでに3回開かれており、「長くかかるかもしれない」と女児側の代理人弁護士は話す。ただし、違法な身体検査を受けた女児は9歳になった今も過去の被害に苦しんでおり、警察官やパトカーを見ると震えが来て身体が動かなくなるという。
福岡県警田川署を巡っては、22年4月、福岡県香春町で起きた暴行事件で事件とは無関係の少年宅を誤って家宅捜索したことが発覚し謝罪。同年9月には暴力団側に捜査情報を漏らしたとして現職の田川署員が逮捕された。不祥事は止まらず、同年12月には署内での拳銃誤射。23年12月には同署の警部補が、北九州市内の実家で実の妹を複数回殴り死亡させたとして逮捕されている。