いよいよ31日に迫った総選挙の投開票。声をからして支持を訴える候補者を、時に元気づけ、あるいは逆に意気消沈させたりするのが、各党や報道機関が行う情勢調査の結果だ。
数字に沿った報道の内容次第で、陣営の勢いが増したり削がれたりするのだから、気になるのは当然だろう。
問題は、調査結果がばらつき、メディアによって勝敗予想が違うものになることだ。福岡県の二つの選挙区で、関係者が戸惑うケースが実際に起きている。
■福岡9区・10区のまるで違う調査結果
下は、自民党本部、通信社、テレビ局のネットワークが、それぞれ直近で実施した情勢調査の、福岡県内11選挙区の数字だ。9区と10区に注目してほしい。
9区は、自民党本部とTVネットワークの数字が、ともに無所属元職の緒方林太郎氏が自民前職の三原朝彦氏を10ポイント前後リードしている結果となっているのに対し、通信社の方は逆に5ポイントちょっと三原氏がリードという状況だ。
10区も同じような形になっており、自民党本部とTVネットワークの数字は立憲の城井崇氏がリードしていることを示しているのに、通信社の調査では自民の山本幸三氏が上回っている。
自社の調査結果も加味しているようだが、通信社の調査結果をベースに記事を書けば、当然こうなる。(*下の画像、赤いラインはハンター編集部)
調査データを基に記事を書けば、こうなるのは当たり前。西日本新聞が間違いを犯したというわけではない。
しかし、自民党やテレビ局の調査結果を参考に記事を仕立てれば、「無所属・緒方、立憲・城井が一歩リード」あるいは「緒方、城井が大きくリード」と書くしかない。
ことほど左様に、政党や報道各社の情勢調査には、実施主体によって結果にばらつきが生じるケースが出てくるということだ。
ここ10年ほど、国政選挙が行われる度に、公示から数日で「自民、圧勝の見込み」「自民、3分の2に届く勢い」などと新聞の1面トップに大見出しが躍る状況が続いてきた。すると、いわゆるバンドワゴン効果が働くらしく、さらに自民党への支持が拡大する傾向が強まる。国民の意思を無視する安倍・菅政治は、そうして9年も続いた。報道の責任だと、記者は思っている。
情勢調査は絶対ではない。だからこそ、新聞やテレビは、原稿の最後に必ず「回答者の●割近くは態度を明らかにしておらず、情勢が変わる可能性がある」などという文句を入れて、記事の方向性と違う結果が出た場合の言い訳を潜ませる。いい加減、情勢調査の乱発は止めるべきだろう。
ちなみに、ハンターの調査と取材によれば、福岡9区と10区でリードを保っているのは、それぞれ無所属の緒方氏と立憲の城井氏。自民党前職の二人は、苦戦という結果になっている。