北海道警察の現職警部補が昨年9月に不同意わいせつ事件を起こし、およそ1年後の本年9月に懲戒処分を受けていたことがわかった。事案は地元メディアなどで報道された形跡がなく、事件・処分ともに警察が公表を控えていた可能性が高い。
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未発表とみられる道警の処分があきらかになったのは、本年10月下旬。直近の四半期(7月~9月)に道警で処分・措置があった不祥事について筆者が各件の記録などを公文書開示請求したところ、10月17日付で『懲戒処分一覧』など10種の文書計38枚の一部開示が決定、同20日にそれらの写しが交付された。
開示された文書によると、上の3カ月間に道警で記録された懲戒処分は1件、同じく監督上の措置(懲戒に到らない軽微な制裁)は27件に上る。全体の3割以上を占める12件が異性関係事案で、その多くが「不適切異性交際」など私的な異性関係が問題とされた事案だった中、唯一の懲戒処分となった事案は「不同意わいせつ事案」として記録されていた。

警察が内部文書にはっきり罪名を記していることから犯罪であることがほぼ確実な事案だが、この事実が地元報道などからニュースとして発信された形跡はない。当事者はいずれかの警察署に勤務する警部補で、本年9月10日付で「減給10分の1(1カ月)」の処分を受けていた。開示文書によれば、処分の対象となったわいせつ行為の概要は以下のごとし。
《当該職員は、令和6年9月30日、北海道内の路上において、知人である異性に対し、同意しない意思を全うすることが困難な状態にさせ、その顔に数回キスをするわいせつな行為をした》

ことが発覚したのは、発生から8カ月以上が過ぎた本年6月中旬。きっかけは、被害者による被害申告だった。その後の捜査などの対応はあきらかでなく、起訴の有無なども文書には記録されていない。本年9月10日に到って加害者の減給処分が決まったのは上述の通りだが、その時点で一連の事実が報道された形跡がないことから、道警は事件も処分も報道発表しなかった可能性が高い。
警察庁の『懲戒処分の発表の指針』こちら)では、職務時間外の行為で減給以下の処分となった事案は報道発表の対象になっていない。道警が公表を控えたのは今回の処分が「減給」だったためと考えられるが、そもそもこの処分自体が適切でなかったとしたらどうか。処分の目安を定めた『懲戒処分の指針』( ⇒こちら )には、こうあるのだ。
《不同意わいせつをすること……免職又は停職》

現職警察官の不同意わいせつ行為について、道警は事件そのものを報道発表せず、その上で処分の事実をも伏せ置くため、当事者への制裁を『指針』に反する軽い処分に留めることにした――。そう疑われてもやむを得まい。
筆者は現在、同事案を含む直近3カ月間の処分・措置の「報道発表の有無」と「事件捜査の有無」がわかる公文書の特定を道警に打診中。文書の存在があきらかになり次第、追加の開示請求などで事実関係を確認していく考えだ。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















