足元ぐらつく自維連立

自民党と日本維新の会が連立を組み、高市早苗首相が誕生。憲政史上初の女性総理は、維新の議員たちからも拍手を浴びながら所信表明演説を行った。「私は、日本と日本人の底力を信じてやまない者として、日本の未来を切り拓く責任を担い、この場に立っております。今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。そして、日本列島を強く豊かにしていく」と力強く語ったが、足元は早くもぐらついている。

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所信表明後、維新の衆議院議員を捕まえると「石破さん、岸田さんの演説より拍手が大きく鳴りやまなかったのはさすが高市首相。ただ、自維連立がいつまで続くか、そちらのほうが不安ですよ。そう長くないのかな」とつぶやいた。

維新が連立条件として、自民党に突き付けた12項目の政策。中心となっているのは「議員定数削減」「副首都構想」「社会保障改革」「食料品の2%減税」「政治とカネ」などだ。だが、早くも暗雲が立ち込めている。「食料品を消費税の対象としない」つまり、0%を要求した維新。しかし藤田武文共同代表は「事実上先送りになった。短期間で自民党内をまとめ上げるのは厳しい」と早くも反故にされ、連立政権にひびが入りそうな雰囲気であることを示唆した。ある自民党の大臣経験者がこの先を予告する。

「高市首相の英断で維新の12項目を受け入れ、連立となった。しかし、12項目の大半が実現不可能か先送りになるだろうと思う。党内は『1つか2つか政策実現させて、維新に花を持たせるか』という感じが支配している。とりわけ消費税減税は、財務省が強い力を持っており、そのバックが麻生太郎副総裁と義弟の鈴木俊一幹事長。いわゆる財務省支配が実態だ。いくら維新が押し込んでも、そこに跳ね返されてしまうはずだ」

維新のトップである吉村洋文大阪府知事は当初、「衆議院の議員定数削減が一丁目一番地」「比例で50人削減だ」と威勢が良かった。だが、10月22日にインターネット番組「ReHacQ−リハック」に出演した藤田共同代表は、定数削減について「自民党とうちとで共同で議員立法を提出しようという話。自民党がやっぱりなぁと提出まで至らなければそれはご破算。提出できないというのは党内をまとめきれずやる気がなかったとなる」と述べ、連立離脱を示唆してまで自民党に決断を迫ってみせた。ただ、比例50議席削減の維新案について、自民党では反発が強いという。比例復活で当選している同党の衆院議員はこう話す。

「世界各国と我が国の国会議員数を比較すると、決して多いとは言えないのが実情。参議院に目を向けると、高知・徳島、島根・鳥取が合区になり、国民の声が届きにくい、地方の意見が反映されない、少数の訴えが論議すらされないという弊害が出ています。現在、衆議院で選挙制度協議会が設置されていますが、そこでは『議員数を増やすべき』という意見まで出ています。議員数を減らせば衆議院やそこに関連する職員、非正規採用の人たちのクビも切らなきゃいけない。定数削減すれば税金の支出も減らせると維新は言ってますが、それなら現状の定数で歳費などを減らす方が簡単でしょう」

一方、野党の立憲民主党やれいわ新選組からは「吉村さんは比例をターゲットにしているが、どの口が言っているのやら」と厳しい声がとぶ。吉村知事は、2014年の衆議院選挙で初当選した時、大阪4区から出馬して落選。比例復活だった。その後、吉村氏は衆議院議員として歳費、立法事務費などを受領し続けたからだ。比例復活の恩恵にあずかった身で何を偉そうに、ということのようだ。

昨年の衆院選で維新は、小選挙区で23、比例で15議席を得たが、南関東ブロックで議席を得た藤巻健太衆院議員の惜敗率は42.5%という極めて低いものだった。もし比例で50議席削減なら、維新の比例選出議員は15議席から半減するとみられている。

「吉村執行部がそこまで削減にこだわるなら、まず自らが模範を示すべき。次の選挙では比例当選者の重複立候補を認めないとか、厳しい姿勢を打ち出せばいい。なんなら、今すぐ比例復活組を議員辞職させ、繰り上げも辞退する。身を切る改革を打ち出していたのだから、まず身を切るべきだろう」(前出の維新議員)

「政治とカネ」の問題で、維新が強く打ち出していた企業団体献金の禁止も先送りとなった。こちらも自民党がそう簡単に飲めないもの。それどころか維新にも企業団体献金を受け取っている議員がいる。

元維新の会所属で現在は国民民主党の足立康史参議院議員はネット動画で、「結党から10年以上、維新は企業団体献金をもらわないといっていた。しかしパーティー券は企業団体から買ってもらっている」と指摘。古巣のご都合主義を批判した。

また、梅村聡衆議院議員の政治団体「医療政策研究会」の2023年分政治資金収支報告書を見ると、日本医師連盟から50万円を2度、整形外科医政協議会から100万円の合計200万円の企業団体献金を受領していたことが分かる。言行不一致ということだ。

維新内からも“不協和音”が聞こえはじめた。吉村知事は「食料品減税は譲れない」と語っていたが、藤田共同代表は前述のように早くも“白旗”状態。また、連立参加にあたって最重要課題として臨時国会で成立させると強調していた「定数削減」についても、いつの間にか「提出」にハードルを下げている。

「今の調子でいけば、維新はアドバルーンを上げたはいいが、何もできない、できなかったとなりかねません。連立に入って浮かれてしまい、党内がバラバラな感じですね。定数削減で浮足立っている議員もいますからね」(前出の維新議員)

維新と自民党の蜜月は、そう長くは続きそうもない気配だ。

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