鹿児島市内の公立校で起きた「いじめの重大事態」について審議していた「鹿児島市いじめ問題等調査委員会」(以下、第三者委員会)が作成した調査報告書の内容に数多くの不審な点がみつかり、当該事案の保護者が「納得できない」として抗議したため、先月30日に予定されていた「答申」が延期されていたことが分かった。市教委側は保護者への説明で、報告書を「凍結する」と明言している。
■1年間かけて議論したが……
市教委の諮問を受け第三者委員会が作成したのは「令和2年度鹿児島市立中学校生徒のいじめの事案に関する調査報告書」。令和2年に鹿児島市内の市立中学で起きた暴力的ないじめについて関係者から聞き取り調査し、経緯や課題をまとめたものだ。
当該事案の被害者が受けたのは、いじめというより激しい暴行。首を吊り上げた形で絞める。お姫様抱っこして3階の教室から落とそうとする。両手で頭を押させて扉に打ち付ける。高所恐怖症を知った上での肩車。同時に、「死ね」、「殺すぞ」、「きもい」、「消えろ」、「臭い」といった暴言も日常的に繰り返されていた。
1年もかけた議論の結論=報告書を作成する作業は、何度も延ばされたあげく1年が経過。その間、「いじめは解消」と虚偽の記録を残すなどして事の隠蔽を図った学校長や市教委青少年課の猿渡功課長は、謝罪すらせずに異動していた(*現在、猿渡氏は校長に就任)。
先月29日に市教委から“第三者委員会から報告書が届きました”という連絡を受けた保護者は、答申前に内容を確認するため、30日に急遽市教委へ。そこで示された報告書を読んだ保護者は、内容の酷さに震えがきたという。
「事実無根のことが多々記されており、こちらが時系列で記録していた事実や、提出した意見書等は全く目を通していないと思われる内容でした。また、被害者であるうちの子供が弱い人間であるかのようなイメージを勝手に作り上げ、加害事実を過小評価するような記述ばかりで、いじめの内容についてもかなり省略されていました。学校の責任を第一にし、市教委を第二にして庇うかのような報告書になっており、『いじめは解消』などとふざけた記録を残したことについては、一切触れられていませんでした。“いじめ防止対策推進法”の趣旨や、“いじめの重大事態に関する調査のガイドライン”が定めたルールは完全に無視されており、こんなものを結論にされたら、うちの子供は二重の被害を受けることになります。絶対に容認できないと強く抗議しました」(保護者)
調査委員には、弁護士・臨床心理士・精神科医・警察OBと専門的な知識を持っているメンバーが選任されているにも関わらず、学校・市教委の杜撰な対応を容認するかのような内容の報告書だったということ。保護者の質問や抗議に答えることができなかった第三者委員会に代わって市教委の担当課長が「いったん凍結しましょう」と引き取ったことで、当日予定されていた答申は見送られている。第三者委員会は、一体誰に寄り添ったのか?
(*この件については、次稿で詳細を報じる)