北海道・旭川で女子高校生が川に落とされ亡くなった事件で、『週刊文春』に加害者女性との不倫疑惑を報じられた警察官らが、同加害者や未成年女性らと飲食をともにしているとみられる写真がみつかった。市内の歓楽街で写真を入手したという男性は「地元市民として情けない。警察は襟を正して」と、警察官らの不適切な行為を批判している。
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問題の写真を入手したのは、悪質ホスト問題の被害者などを支援する「青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)」旭川支部長で、NPO法人「北海道駆け込み相談所」の代表も務める旭川市の岸本和幸さん(51)。同市内で探偵業を営む傍ら2011年からボランティアで夜の街の青少年らの困りごと相談に応じ始め、地域の問題のみならずいじめや家庭内暴力などの問題とも向き合ってきた。旭川の歓楽街「三六街」に加え、札幌・ススキノで働く女性からホスト被害の相談を受けたこともあり、活動を通じて行政や警察と連携する機会も多いという。
先の殺人事件で起訴された女性被告(21)は、週刊文春などによると三六街でよく知られた存在だったという。地元の歓楽街にネットワークを持つ岸本さんは当初、同事件にとくに強い関心を寄せていたわけではなかったが、旧知の警察関係者に促されて調査を試みたところ、7月上旬に聴き込みに回った先で被告女性と警察官らの写真を入手することになった。
「文春に書かれていた警部補が被告と一緒に写っていただけでなく、多くの警察官が未成年とみられる女性と一緒に飲んでいる様子が撮影されていました。常々、ボランティア活動を通じて『警察は何もしてくれない』とかの声をよく聴いていたので、文春の不倫報道にも『さもありなん』と驚きはありませんでしたが、まさか何人もの捜査員が集団で不適切な飲み会を開いていたとは…」
くだんの警部補ら旭川中央警察署の捜査員たちが夜な夜な繰り出していたとされるのは、三六街で築30年余の8階建て商業ビル内にあるカラオケスナック。同署刑事一課強行犯係や同二課組織犯罪対策係などの警察官少なくとも13人が同店を利用した形跡が確認でき、時には部下に誘われて刑事・生活安全官の警視が足を踏み入れることもあった。岸本さんの調査によれば、警察官らは飲食の場で「職務質問や取り調べを受けることがあったらこういう対応を」などのアドバイスを被告女性に与えていたという。一部の警察官は「毎晩のように店に顔を出していた」が、店内での振る舞いは「とにかくセコい飲み方」で、店の設定する飲み放題の利用料金を「少し安くならないか」などと値切ろうとすることもしばしばだった。
1月中旬に撮影されたという写真に納まっていたのは、被告女性とともにカメラ目線で写る「不倫」警部補、未成年とみられる別の女性とともにアルコール飲料を囲む捜査員ら、同僚の女性警察官に腹を抓られる上半身裸の男性警察官、などなど。くだんの警部補が店員を差し置いてカウンター内に陣取っている姿もあり、常連の警察官たちは店内で我が物顔に振る舞っていたようだ。6月の事件報道以降は一時的に彼らの足も途絶えたが、メンバーの何人かはその後も再び集まるようになったという。
↑不倫警部補と被告女性ら
↑警察官とは思えぬ醜態
↑くだんの警部補が店員を差し置いてカウンター内に陣取っている
写真を入手した岸本さんは「あの被告に取り調べ対応を助言していたというのが事実なら、警察が犯罪を手助けしていたようなもの」と指摘、「それで被告女性が『自分の後ろには警察がついている』みたいに振る舞っていたとしたら、飲み仲間の捜査員たちの罪は重い。警察にはもっと襟を正してもらいたい」と、署員らの軽率な行為を批判している。
地元報道などによると、旭川の殺人事件は本年4月中旬に発生。被告女性らは、旭川市内を流れる石狩川の吊り橋から知人の女子高校生を落として殺害した疑いが持たれ、7月上旬に殺人などで起訴された。事件を取材した週刊文春は先週発売の7月11日号で、同被告と旭川中央署の男性警部補との不倫疑惑をスクープ、地元の暴力団関係者と親しい被告女性を捜査協力者に仕立てる思惑が捜査員らにあったなどの証言を掲載した。
文春の報道後、かの男性警部補は刑事畑を離れ、内勤職である警務課の係長に異動したという。筆者は同警部補とみられる人物のLINEアカウントを入手、電話などでのやり取りを試みたが、本稿配信までに当人との接触は果たせなかった。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |