音声データが示す鹿児島県医師会非常識会見での「嘘」
先月27日、鹿児島県医師会が会見を開き、会見に臨んだ立元千帆常任理事と大西浩之副会長が、2021年秋に新型コロナウイルス感染者の療養施設で同会の男性職員(2022年10月に退職)から性被害を受けたと訴えている女性を愚弄する、非常識な主張を繰り広げた。「(男性職員)に関するセクハラ・パワハラの訴えはなかった」、「(被害女性の)ハニートラップと思われても仕方がない」――当時者不在をいいことに、次から次への悪口雑言。興奮したのか、いくつもの嘘を公言し、墓穴を掘る格好となった。
■調査委採決「13対0」も「セクハラ・パワハラない」も真っ赤な嘘
一つ目の嘘は、大西副会長の口から出た。同氏は、強制性交が疑われる事件を受けて医師会が設置した調査委員会の調査過程を「外には出していない」としながら「実際この強制性交だと思うか、思わないかの採決の時は13対0でした。弁護士さんも含めて。“強制性交ではない”と」とあっさり暴露。コロナ療養施設でのわいせつ事案について検証した医師会の調査委員会で、13人の委員全員が「合意があった」とする結論を出したと断言した。
しかし、実際の採決は「13対0」ではなく「11対2」だったことがハンターの取材で明らかになっており、「合意があった」と結論付けようとする大西氏らの主張に、少なくとも2人の委員が反対の意思表示をしていた。
「セクハラ・パワハラの訴えはなかった」という医師会側の説明も真っ赤な嘘である。調査委員会が設置されたのは2022年3月。しかし、県医師会の池田琢哉会長は2月の段階で県の担当課に出向き、強制性交を否定していた。調査委員会は、こうした池田氏の意向に沿って進められたため、計6回開かれた会議のうち1回目と2回目で男性職員の常習的なセクハラ、パワハラが確認されていたにもかかわらず、3回目以降の会議でハラスメントが議題になることはなかった。常習的なハラスメントを正式認定すれば、県はもちろん世間の目も“強制性交をやりかねない職員”と見る可能性が高くなる。それを避けるため、ハラスメントの隠蔽が図られたということだ。(参照記事 ⇒“鹿児島県医師会男性職員「セクハラ・パワハラ」の証明”)
■立元氏の「嘘」
立元氏も平気で嘘をついた。人権を無視した県医師会と事件のもみ消しを図った県警の癒着を追及してきたハンターの電話取材が、まるで恫喝だったかのような発言を行い被害者ぶる一幕があった。立元氏は、会見の中で次のように発言している。
「最後に申し上げたいのがオンラインメディア、ハンターに掲載されている私自身に関する記事についてです。ハンターを運営する中願寺さんが2022年4月下旬ごろ、突然私の個人携帯に電話をかけてこられました。個人の携帯電話番号をどこから入手したのかはわかりません。こちらが何を言っても聞く耳を持たない状況で、かき消すような大声で一方的に怒鳴られるばかりで怖い思いをしました。なので、長々と話をした事実はありません。しかしなぜか、4月28日付のハンター記事では私が長々と取材に答え、被害を訴える女性の人権を踏みにじっていることになっています」
これは明らかな虚偽。立元氏への電話取材の顛末は、以下の通りだった。
2022年4月21日、立元氏は、鹿児島市医師会臨時代議員会の席上、男性職員が強制性交とみられる行為に及んでいた問題で池田会長が県に行ったとされる“謝罪”について、私見と断った上で、「謝罪については、その事実があったかどうかということではなく、世間をお騒がせしたことに関する謝罪」と発言。さらに同氏は、「県の理事会や郡市医師会長会議等で得た事実」として「報道があった(強制性交での)告訴については、ある理事の先生が、捜査一課が動いているとのことを発言されました。ただ、それから2カ月経過しておりますが、該当の職員というのは、警察の取り調べも逮捕も受けておらず、それらのことがすべてを物語っているのではないかと私自身は考えています」とも話していた。
まず、この発言の真意を質そうと立元理事に電話取材した時のやり取りの概要を再掲しておく。
――今月21日に開かれた鹿児島市医師会の臨時代議員会のことで、お尋ねしたい。
立元理事:はいはいはい、はい。――確認だが、その会議で先生が池田医師会長の文書の代読をしたということで間違いないか?
立元理事:はい。――代読後に、当該職員は警察の取り調べも逮捕も受けていないと述べたか?
立元理事:はい。――それが全てを物語っていると?
立元理事:いるのではないか、と私見を述べましたね。――私見を述べた。間違いないか?
立元院長:はい。間違いないです。――池田会長の謝罪については、事実があったかどうかではなく、世間を騒がせたことに対する謝罪だと言われたようだが、これも私見か?
立元理事:うん。そうです、そうです。――池田会長が仰ったわけじゃないのか?
立元理事:じゃないですし、○○先生が、まあ、あのー、結局事実として謝罪したんだという風に仰ったんですけど、私は、そう(世間を騒がせたことに対する謝罪と)考えるってお伝えしたんですが、○○先生が、いや僕はそう考えると仰ったので……。――現在も、県庁での池田会長の謝罪は、世間を騒がせたことに関する謝罪で、療養施設でわいせつ行為があったことに対する謝罪ではないというお考えに変わりはないか?
立元理事:いや、それはあの、結局最後にお伝えしたのは、最終的には私は会長ではないので、「わかりません」と答えたんです。――分からないけど、私見は述べた?
立元理事:そうです、そうです。私はそうとったんですけど、と。で、それでも○○先生があの、私に対して、ものすごく攻撃をされてきましたので。私は代読して、ちょっと私見を述べただけですが、それに対して、攻撃してこられたので、私としてはじゃあ、あの、結局会長ではありませんので、本当のところはわかりませんって最終的にはお伝えしています。――もう一度聞くが、池田会長の謝罪というのは、世間を騒がせたことに対する謝罪であって、医師会の職員が猥褻行為をしたことへの謝罪ではないのか?
立元理事:えっとですね、それは、わからないんですが。――わからない?
立元理事:私にはわかりません。――先生は県医師会の理事ではないのか?
立元理事:うん。で、だからわかりません。あの、なぜなら、調査委員会が立ち上げられてて、現在調査中で、事実がまだわかっていない段階で、私は何も答えられません、ということも、その時私言っています。――しかし、わいせつ行為があったことについては、池田会長自身が早い段階で県に行って認められているのではないか?県も、その際の記録を情報公開で公開している。
立元理事:ちょっとすみません。そこは私も、理事会とかで報告もないですし、分かりません。――しかし、あなた自身が代読した池田会長の文書の中に、「新型コロナウイルスの宿泊療養施設における本会職員の今回の不祥事」という文言があったはずだ。
立元理事:まあ、どうだったかな。ちょっと今、もう手元にないので分からないんですが。――池田さん自身が、わいせつ行為があったことを認めている。ハンターの取材にも、それが複数回あったと認めている。
立元理事:あっ、わいせつって、何をもってわいせつっていうんですか?――今回の場合は、性交渉。
立元理事:あー、そうですね。それはお聞きしています。はい。――それをコロナの療養施設でやったことに対しての謝罪があって然るべきではないかというのが、ハンターとしての考え方。知事や県議会も同じだ。
立元理事:あー、なるほど。あーそれは、謝罪されているんだと思います。それを謝罪はしてるかもしれませんね。――いや、あなたは、世間を騒がせたことに対する謝罪で、事実があったかどうかはわからんと仰ったはずだが?
立元理事:あっ、えっとですね。言葉……。――わいせつ行為に関する謝罪がないから、県知事も県議会もおかしい、不適切だと言っている。
立元理事:ちょっと、そこまでは……。まあ、あの私がお伝えしたいのは、ええっと、ええっとですね。当初、当初と言うか、今でも、強制性交に問われているわけですよね?――いやいやいや。これは、強制があったかないかについては、関係のない話だ。
立元理事:もしそうであれば、女性もその同意のもとされたんであれば、女性も罰せられてしかるべきですよね?そしたら、その女性の……。――それは議論のすり替えだ。県医師会の職員が――。
ここで一方的に電話を切られたが、その後かけてきた立元理事は「これ以上話すことはない」。記者は、“ダメなものはダメ。少しは被害女性の人権を考えたらどうですか”とお願いして、取材を終えていた。
■音声データ
立元氏は会見で、「こちらが何を言っても聞く耳を持たない状況で、かき消すような大声で一方的に怒鳴られるばかりで怖い思いをしました」と発言した。文字起こしした概要だけでは伝わらないと判断したので、立元氏の「噓」を明らかにするため、あえて実際の録音データを公開する。
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メールやラインといった他人の個人情報を晒してまで、性犯罪被害に遭った女性の人権や尊厳を踏みにじった鹿児島県医師会。『被害を訴える女性の人権を踏みにじっている』のは明らかに立元氏と大西氏だろう。公式発表の内容の中に「嘘」が一つでもあれば主張全体の信憑性が揺らぐのは言うまでもない。それがいくつも重なると、さすがに子供でもセンセイたちの言い分を信用することはないだろう。大西氏や立元氏、さらには池田氏に代わって県医師会の会長に就任した牧角寛郎氏は、公開の場で嘘ばかりついて他者を貶めた責任を、どうとるのだろうか。