「小さい小さい集団の中でですね、後ろからバンバンバンバン仲間を撃つということをすると、すぐに日本維新の会は潰れてしまう」――6月26日、日本維新の会が開催した「説明会」で馬場伸幸代表は憮然とした表情でそう訴えた。「終わりの始まりじゃないですかね」とは参加した大阪の維新所属議員だ。

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自民党の裏金事件など「政治とカネ」に対する批判が渦巻く中で開かれたこの日の会合だったが、国会では政治資金規正法の改正が論議されていた。維新は、衆議院で「政策活動費を10年後に使途を公開」などを盛り込んだ法案に賛成。しかし、今国会で成立が困難な状況とわかると参議院では一転して反対に回る。

常識で考えられない対応に国会議員、地方議員から不満が爆発。地方議員からは「馬場代表からバンバンバンバン仲間を撃つとか先に言われると、何も言えなくなる」とクレームもあがった。日本維新の会の国会議員X氏はこう話す。

「いわばガス抜きのためにオンラインで説明会をやった。しかし、冒頭に馬場代表が『バンバンバンバン仲間を撃つ』と先制攻撃。それに加えて、馬場代表が自民党にすり寄り連立入りまで示唆したことでよけいに不満が高まっている」

馬場代表は、自民党と政治資金規正法の改正を論議する過程で、「他党に協力する場合、例えば連立入りするか、閣外協力をするか、パーシャル連合を組むのかとか、いろんな連携の形がある」、「連立政権に入って、政策を実現させられるかがカギだ」などと発言。次の解散総選挙の結果いかんで、連立入りする可能性を示唆していた。

一方、吉村洋文知事は政治資金規正法の改正について「衆議院で合意に至る経緯を維新の中で説明し、総括すべき。自民党と大喧嘩すると(維新の)藤田幹事長も言っている。どう大喧嘩するのか、自民党と対峙していくのか。正面から自民党とぶつかるべきだ」、「与党に入らなくても、政策の実現は可能だ」など、馬場代表とは相反する見解を述べた。

まさに「内紛」となりつつある維新だが、過去に2回、割れた経緯がある。まず、石原慎太郎氏が率いた「次世代の党」とは「分党」。その後、「結いの党」と合流して「維新の党」を結成したが、こちらも分裂。「二度あることは三度あるじゃないでしょうか」とX氏は苦笑する。

昨年の統一地方選では全国的に圧勝した維新。しかし、そこが頂点で、支持率は「地元の大阪でも下がっている」という指摘が出ている。

今年4月の大阪府大東市長選では維新候補が惨敗。6月の大阪府河内長野市長選でも候補者を擁立できずに自民党の元府議が無投票当選している。河内長野市は吉村知事の生まれ故郷、大東市は藤田文武幹事長の地元、大阪12区だ。

創立から維新を率いてきたのは橋下徹氏と松井一郎氏だった。代表が馬場氏に代わり統一地方選は勝ち切ったが、今年4月の衆院補選でも、東京15区と長崎3区で候補者を立てながら惨敗。結果が出せない状況となっている。

「馬場代表は自身でも『8番キャッチャー』と語っていたように、代表の器ではないことを露呈している。それどころか、親しい議員との飲み会では『連立入りすれば、どの大臣ポストがいいかな』など、すっかり自民党入りを目指すような発言をしていると聞きました。『第2自民党』などと平気で言う馬場さんが代表でいる限り、いずれ自民党に吸収され、維新は分裂、霧散してしまうでしょう。今のうちに馬場代表をバンバン撃って退陣させ、新たな代表にという声も出ています」(前出のX氏)

藤田幹事長や音喜多駿政調会長などの名前まで出ているというが最も待望されているのが、言うまでもなく吉村知事だ。X議員は次のように解説する。
「もともと、吉村知事と馬場代表の仲はよくありません。馬場代表の政権与党入りするような発言に、側近とされている議員も一歩も二歩も引くようになっています。解散総選挙もそう遠くない中、維新の支持率は下降傾向で、立憲民主党からはっきり差をつけられている。東京都知事選でも候補者を出せなかった。吉村知事も、内心ではもう馬場さんには任せておけないと思っているはずです。橋下、松井に匹敵する顔になれるのは吉村知事しかいません。来年、万博が開催されれば一区切りで、国政に戻ってほしいという議員はかなりいます」

つまり、党内では吉村知事の国政復帰待望論が大きくなりつつあるということだ。だが、馬場代表には橋下氏や松井氏という「後ろ盾」がある。「馬場代表も勝負となれば、子分を何人か率いて本当に自民党入りもあり得るでしょう。なんせ、元は自民党でしたから」とは維新の大阪府議。馬場代表の言うように「小さい集団」の維新。「内紛」が終わりの始まりなのかもしれない。

 

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