【2020鹿児島知事選】三反園推薦と「党議拘束」 森山国対委員長に直撃取材 

自民党が、今年7月に予定される鹿児島県知事選挙で、現職の三反園訓氏を推薦することを決めた。2016年の知事選で共産党を含む野党勢力の支援を受けた脱原発派の知事と、その三反園氏と敵対していた政党の双方が“変節”した結果である。

自民党の中には「なんで三反園なんだ」という不満が渦巻いており、伊藤祐一郎前知事や塩田康一前九州経済産業局長といった保守系の立候補希望者がいることから、事実上の分裂選挙が視野に入る状況となっている。

ところが、こうした動きに自民党鹿児島県連の会長を務める森山裕国会対策委員長が待ったをかけた。一部のメディアが、三反園推薦が決まった直後の会見において、森山氏が「党議拘束がかかる」と発言したことを報じたのである。処分を匂わすこの一言で、反三反園派の動きは、急激に鈍ったという。事程左様に、政党の党員にとって党議拘束という言葉は重いということだ。だが、地方自治体の首長選で、「党議拘束」がかかることなどあり得ない。

■そもそも「党議拘束」とは

大型選挙があるたび、新聞やテレビのニュースに出てくるのが、この「党議拘束」という言葉だ。多くの報道関係者が、意味も確認しないまま、選挙絡みの記事に「党議拘束」を使ってくる。結論から述べれば、明らかな間違い。使った記者は不勉強だと断言しておく。

「党議拘束」とは本来、予算案や法案審議といった重要な案件に関して政党が所属議員に縛りをかけること。じつは選挙とは関係がない。自民党本部に確認したところ、次のような回答だった。
「自民党には総務会というものがあって、基本的にそこで決まったことには党議拘束がかかります。予算や重要法案は特に。選挙は関係ありません」

各級議員や首長の選挙に関する記事に平気で「党議拘束」を使うケースが後を絶たないが、これは報道機関や記事を書いた記者が、自ら不勉強を宣伝しているようなものなのだ。

ネット上にも残っているが、選挙に関する記事で《「推薦」なら党議拘束、「支持」なら自由投票》などという文章に出くわすことは日常茶飯。党が「推薦」を決めたものの、造反する議員や党員が出そうな場合は、必ず党議拘束の是非が取り沙汰されることになる。三反園知事の推薦に関するニュースがその典型だった。

■森山代議士 ― 「記憶にない」が「注意喚起ぐらい」ある

関係者の話を総合すると、「党議拘束」の話が出たのは、三反園推薦が決まった直後の囲み会見における森山氏と記者団との質疑の中。地元テレビ局の記者が「党議拘束をかけるのか」と聞いたところ、森山氏が「党議拘束をかけるのは、政党としては当たり前」と答えたのだという。一部報道でも、森山氏が「党議拘束をかける」と言ったことになっている。

前述した通り、知ったかぶりして質問した記者はただの不勉強ということになるが、森山氏が本当に「党議拘束」と言ったとは思えない。なにしろ、森山氏は鹿児島市議会議員を7期、衆議院議員を6期務めてきた根っからの党人派。しかも、現在は安倍政権を支える国会対策委員長で、党の中枢にいる大物政治家なのだ。「党議拘束」の意味を知らないはずがない。やむなく、お叱りを覚悟で森山国対委員長本人に話を聞いた。以下、記者と森山代議士のやり取りとりの概要である。

――自民党が、鹿児島県県知事選挙で現職の三反園さんを推薦することを決めました。その件で、「党議拘束がかかる」と発言されたとの報道があります。事実ですか?
森山:党議拘束がかかるちゅうことよりも、党で決めたことは皆で守ろうという話です。

――「党議拘束がかかる」と発言されたのですね?
森山:党議拘束だったかどうか、そこ、ちょっと私も記憶がありませんが……。基本的にはですね、決めたことは守ってもらわなければならないということ。

――自民党の場合、党本部の総務会で決まったことのみに党議拘束がかかるということですが?
森山:そう、そう。そうですね。まぁ、本部の推薦まで決まりましたので、党員と違うことをすると、注意喚起ぐらいは行くと思います。

――なるほど、注意喚起ですね。こころして選挙をやれと……。
森山:そう、そう、そう。

――国対委員長である森山先生が、軽々に党議拘束という言葉を使ったとは思えなかったものですから、失礼な質問でした。
森山:党議拘束という言葉を使ったかどうかは分かりませんが、私の気持ちは、決まったことはしっかりとやろうということです。党員の資格というのは非常に大事なことで、いい加減にはできないのです。

さすがに政権を支える国対委員長。党議拘束の何たるかはよくご存じだった。鹿児島知事選に関しては、党議拘束はないということだ。ただし、三反園氏以外の候補者を支援する議員や党員に対しては、「注意喚起ぐらい」はあるとのこと。関係者は、十分注意した上で、それぞれの政治信条を全うされたい。

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