自民党総裁選、各陣営の分析は・・・

熱を帯びる自民党の総裁選に、小林鷹之前経済安保相、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相が出馬を表明。小泉進次郎元環境相、高市早苗経済安保相、林芳正官房長官、茂木敏充幹事長も20人とされる推薦人確保にメドが立っている模様だ。

加藤勝信元官房長官、上川陽子外相は推薦人確保まであと一歩。斎藤健経産相、野田聖子元総務相、青山繫晴参議院議員は苦戦という構図になっている。

◆   ◆   ◆

「総裁選は、少なくとも7人、多ければ10人で争われる。いずれにしても過去の自民党総裁選でここまで乱立することはなかった。派閥解散のおかげだ」と自民党幹部は感慨深げだ。

総裁選は、国会議員票と党員票で争われる。党員票は全国に47ある自民党の都道府県連1つに3票、割り振られる。国会議員は一人1票。1回目の投票で過半数を獲得すれば当選が決まる。しかし、過去最多ともいわれる候補者数なので、票が割れる可能性が大きく決選投票になる見込みだ。

自民党や永田町で最も総裁に近いとされているのが抜群の知名度、発信力を誇る小泉氏で、次に名前があがるのが石破氏。世論調査の「次の総理」では、常にトップ争いで国民的な人気が高い。

党員票では小泉氏と石破氏が強いという見方が大半。どの候補者も推薦人が20人いるので、それぞれが少なくとも20票の議員票をとれることになる。1回目の投票で過半数の獲得は難しい計算だ。

小泉氏を支援するある議員の分析はこうだ。
「小泉さんが党員票で4割をとれば、1回目の投票で過半数がとれるかもしれません。しかし、そうはうまくいかないでしょう。小泉さんといえども獲得できるのは3割程度で、石破さんは2割を超えるくらいか。残り5割を5人以上の候補が奪い合うような構図になると思います。ただ石破さんが党員票で伸び悩めば、他の候補者にもチャンスがある」。

石破氏支援の別の議員も同様の見方だ。
「うちは国会議員から人気がないので議員票はそう期待できません。党員票でどこまでとれるか、小泉さんに迫り、上回れるかですね。なんとか、党員票で2位に食い込めれば、決選投票に持ち込めるというのが本音です」

河野氏を支援する麻生派の議員は、「小泉さんが党員票ではトップでしょう。党員票で石破さんが意外に伸びず2位が混戦になると、うちにもチャンスが生まれる。麻生派としてある程度まとまっているので、議員票はかたい。小泉さんと争えるんじゃないか」と情勢を分析する。

高市陣営の議員は、次のように話し、保守層の票に期待感を示す。
「うちは保守層から圧倒的に人気があるが限られている。小泉さんや石破さんのような幅広い人気はない。それなら、小泉さんが党員票で圧倒的に引き離して、2位以下にそう大きな差がつかない展開になることを願いたい。保守派の議員票は見込め、女性票もあるので、そこでなんとか2位になれないかと考えている」

小林氏の応援団に名前を連ねる議員は、少し元気がない。
「最初に出馬会見し、一気に知名度がアップした。小林さんの記者会見に24人の国会議員が参加したように、議員票は思った以上に獲得できる。しかし、小泉さんや石破さんらと比較すると、党員票がまったくダメ。地元の千葉県連にもお願いしているが、3票中1票取れればいいところだ。1回目で党員票を積み上げ議員票で2位になれないかと思っている」

1回目の投票は小泉氏が1位、2位候補の筆頭が石破氏という見方がほとんどだ。河野氏や高市氏、小林氏らの本音は「1回目の投票で石破氏に勝って2位になり、決選投票に」ということなのだ。つまり、小泉氏の“不動”のトップは変わりないということ。父親である小泉純一郎元首相は5年にも渡る長期政権で人気を博した。総裁選には初めての出馬となる小泉氏にとって怖いのが、スキャンダルだ。ある自民党幹部が次のように語る。
「小泉さんは、週刊誌で何度も女性問題がとりあげられた。若さゆえ、女とカネのスキャンダルがあちこちから聞こえてくる。一方で、長く注目されてきた石破さんは人気も高く、何度も総裁選を経験している。スキャンダルが出る心配はなさそうで、よほどの失言でもない限り支持がマイナスになることはない。小泉スキャンダルが総裁選の最中に爆発すれば、展開は一気に変わる」

清新なイメージだった小林氏は、出馬会見の直後、自身の政党支部「千葉県第2選挙区支部」の政治資金収支報告書に問題があることが指摘され、さっそく修正に追い込まれた。小泉氏は小林氏とは比べ物にならないほどの人気者。同様の問題があったら、痛手は小林氏以上に大きくなる。

「小泉さんに問題があれば、他の候補の何倍、何十倍も大げさに取り上げられ、マスコミで叩かれる。女性やカネ絡みのスキャンダルとなれば、よけいにだ」(前出・小泉陣営の議員)

総裁選まであと1か月を切った。トップ小泉氏、2位候補の筆頭は石破氏、続く河野氏、高市氏、小林氏という構図がこのまま維持されるのかどうか。アッと驚く逆転がないとは言えない。

 

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