自民党の薗浦健太郎衆議院議員(衆院千葉5区)が、政治資金収支報告書に約4千万円とされる政治資金パーティーの収入を記載せず、政治資金規正法違反に問われている事件で、東京地検特捜部が同氏を在宅で略式起訴する方針であることがわかった。薗浦氏は、それを受けて議員辞職する意向だ。
閣僚3人の辞任に続く自民党議員の不祥事。支持率低下に悩む岸田文雄政権にとっては、大きな打撃となりそうだ。
■「闇パーティー」疑惑
すでに特捜部から取調べを受けていた薗浦氏の公設第1秘書は、「パーティーの収支をメモして、過少申告すると薗浦氏に伝えていた」「薗浦氏が了解済みでやっていた」などと説明。薗浦氏も、「過少申告していることは知っていた」「秘書との共謀は否定しない」として容疑の一部を認めているという。
特捜部は、薗浦氏と公設第1秘書が「隠ぺい工作」を打ち合わせた際の録音データも押収している模様で、外堀を埋められた格好となっていた。
問題になっているのは、2019年4月3日に薗浦氏の資金管理団体「新時代政経研究会」が開催した「そのうら健太郎と未来を語る会」という政治資金パーティーの売り上げなど。新時代政経研究会の政治資金収支報告書には該当する収入及び支出の記録がないことから、「闇パーティー」との疑惑が浮上していた。4千万円もの政治資金の使途が明かせないとすれば、“ヤバイ”ことにカネを使ったと思われても仕方がない。
■事件が動く12月
「この時期になると、特捜部はざわつくね……」とそわそわした様子で語るのは、ある自民党の大臣経験者。2019年12月25日のクリスマスの早朝、東京地検特捜部に任意同行を求められた秋元司元IR担当副大臣には、中国企業からIR関連の見返りを求めて金銭を受け取った収賄容疑がかけられていた(その後、逮捕起訴され有罪判決)。
同じ年の12月29日には、日産自動車の元社長で特別背任などで逮捕・起訴されたカルロスゴーン氏が、公判中にもかかわらず、大阪の関西空港から密出国、2020年12月25日には鶏卵マネーに汚染された吉川貴盛元農水相の贈収賄事件で特捜部が家宅捜索し、昨年の12月には、日本大学の元理事長・田中英寿氏が逮捕されている。12月は、なにかと大きな事件が動く時期なのだ。薗浦氏の事件が大きく報じられる中、自民党の議員たちも心中はおだやかではないという。
同党を巡る「政治とカネ」の問題も深刻だ。記憶に新しい、元法相の河井克行受刑者と案里元参院議員の公職選挙法違反(買収)事件。元経産相、菅原一秀氏の公職選挙法違反(寄付の禁止)事件。薗浦氏の過少申告事件は、市民グループが刑事告発していた。特捜部OBの弁護士は次のように解説する。
「検察の甘い判断で起訴猶予となる可能性はある。しかし、菅原氏の場合は、検察審査会で起訴相当の議決が出され、再捜査の末に起訴された。薗浦氏はカネをばらまいた河井夫妻や菅原氏との比較から悪質性を考慮されようが、4千万円を何に使ったのか説明できていない。検察審査会にかかれば菅原氏と同様に起訴相当となる公算が大だ。秘書も犯意を認めているなら逃げられないとギブアップしたんだろう」
■計算ずくの辞任?
否認を続けた河井受刑者や菅原氏らから見れば「潔い」ともみられる薗浦氏。しかし、それはしっかりと計算された行動なのだという見方もある。
前出の大臣経験者は、「薗浦さんの事件がこれ以上こじれると、支持率が低迷している岸田首相にも大きな痛手となる。党幹部が薗浦さんを説得して、早めに事態を収拾するため、辞職を迫ったようだ」とした上で、次のように話す。
「菅原は略式起訴を受け入れることで、罰金40万円となり、公民権停止は3年でおさまった。河井夫妻からカネをもらった被買収側の広島の地方議員はかなり検察とやりあっていたが、有罪で公民権停止5年が大半だった。薗浦さんは、公民権停止3年を狙って弁護士経由で特捜部と話をつけ、略式起訴を了解することにしたようだ。万が一起訴され公判請求になれば、秘書に洗いざらいしゃべられて再起不能にもなりかねない。略式起訴なら裁判はないので、悪事の詳細な中身が公にはならないからね。岸田首相の決断次第だが、次の解散総選挙はしばらくない。菅原の事件の時、自民党は責任があるとして、東京9区からは候補を擁立せずに不戦敗の道を選んだ。薗浦さんの千葉5区も、支部長を決めずにそういう格好になる可能性がある。解散総選挙があっても1回休めば次にチャンスが巡ってくるという計算だ」
小選挙区の「10増10減」で千葉県全体では1つ小選挙区が増え、13から14になる。これは薗浦氏にとっては好都合なのだという。しかし、自民党には総務大臣を更迭された寺田稔衆議院議員や秋葉賢也復興相など、「政治とカネ」でグレーなメンツがまだまだいる。税金がかからない政治資金の使途を明確にできない政治家は消え去るべきだろう。