被害者無視! 江差看護学院パワハラ問題の主役「副学院長」が事件の説明対応

教員による長期間のパワーハラスメントが疑われている北海道立江差高等看護学院で、パワハラの中心人物とされる教員が入学希望者の保護者の相談対応にあたっていた事実がわかった。地元議会でこれを追及した議員は「どういう神経をしているのか」と道庁の認識の甘さを厳しく批判している。

◇  ◇  ◇

問題が発覚したのは、7日午前に招集された北海道議会保健福祉委員会。今春以降ほぼ毎月、パワハラ問題を追及してきた同委の平出陽子委員(民主、函館市)は、保護者から得られた情報としてこう切り出した。
「来年度の受験を希望している子の保護者が、一連のパワハラが心配で学院に説明を求めに行ったところ、なんと渦中の人、副学院長が対応したというではないですか」

これまで報じてきた通り、江差看護学院では現副学院長を中心に複数の教員がパワハラ加害を疑われており、この春からは同副学院長を含む6人が一時的に授業を離れ、学生と接触する機会のない業務に就いている。多くの被害報告がある中では当然の対応といえるが、まさにそのパワハラを心配する入学希望者の保護者に“主犯”の副学院長が対応するとは、およそ本末転倒の事態。平出委員は、議会質問をこう続けている。
「この件はテレビでも特集を組まれるほど世間に知れ渡っている事件なのに、学院は当事者能力があるのだろうか、どんな神経を持っているんだろうかと疑いたくなる」

問題はこれだけではない。上の件のほかにも、道庁が副学院長らをコントロールしきれていない事実を示す出来事がつい最近起きていたのだ。

「ちょっとひどくないですか」と憤るのは、事情を知る保護者の1人だ。
「前期を休学し、後期から復学を考えていた学生さんが、10月になっても学校から後期の時間割が届かなかったので、仕方なく同級生に時間割を教えてもらったそうなんです。そして、授業について問い合わせるため学校に電話をかけたら、電話口に副学院長が出て普通に対応したっていうんですよ」

今もパワハラ被害の記憶を拭えていない学生は、電話越しに副学院の声を聴いただけで一連の被害を思い出し、大きなストレスを感じることになったという。

現場がこうした“無法地帯”となっている事実を、担当課はどう捉えているのか。先の相談対応の件について、7日の委員会で道は次のように釈明した。
「問い合わせに対応することになっている教務主幹が入院加療のため不在であり、当日は複数の教員が出張中であるなど、対応できる教員が限られていた。迅速な対応が必要と判断し、複数名の教員で対応しましたが、今後は外部の問い合わせ等にあたっては心証を損ねることのないよう配意して参ります」

委員会終了後、筆者が平出委員に問いを向けると、答弁であきらかになった「複数名の教員で対応」という事実に改めて厳しい指摘を聴くことができた。
「だったら副学院長は席を外して、もう1人に任せておけばよかったでしょうに……」

同日の議会では、教員の処分が決まらない中でスタートした後期授業について、場合によっては授業料納付の留保を検討する意向を道が表明したほか、5月に発足した「第三者調査委員会」が近く調査結果のとりまとめに入るスケジュールが明かされた。道はこれを受けてハラスメントの有無や教員の処分などを判断することになるが、その時期は早くとも「1カ月以内」とされている。

現役学生の保護者の1人は、疑念を隠さず次のように話す。
「道は、結論をできるだけ長引かせて問題の風化を狙っていたはず。議員やマスコミが騒ぐのでそれがうまくいかないとわかると、自分たちでコントロールできる第三者委をつくって『真摯に向き合っている』とアピールし始めました。第三者委が出すことになる結論も『パワハラの疑いはあるけど軽微なものでした。教員には厳重に注意したのでもう二度とありません。復学するかどうかは学生の勝手ですが』というような思惑が、やっぱり透けて見えるのです」

その後の発表によると、同第三者委は今月12日午後に函館市内で会合を設け、一定の結論を示すことになるという。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

 

 

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