昨年4月の町長選で2期目の当選を果たした福岡県糸田町の森下博輝町長が、町の選挙管理委員会に提出した選挙運動費用収支報告書に後援会活動の支出を計上し、違法な状態であることが判明。ハンターの選管への指摘を受けて間違いを認め、修正するとしている。
■「後援会討議資料」作成費を選挙運動費用に計上
森下氏の選挙運動費用収支報告書に記載されていた後援会活動の支出とは、下の画像にある印刷物の作成費である。
作成団体やその団体の住所といった”あるべき記載”が一切ない不可解な印刷物だが、「後援会討議資料」とあることから、町長の支援団体「森下博輝後援会」のリーフレットであることは確か。町の関係者に確認したところ、昨年の町長選までの期間に、森下陣営が配布していた印刷物であることが分かった。
すると、このリーフレットの印刷費は、政治活動の支出として政治資金収支報告書に記載すべきもの。しかし、森下氏側が当該支出を「リーフレット作成」として記載したのは、選挙運動費用収支報告書だった。(*下の画像参照)
“リーフレットは後援会活動で使用されたもの。町長の選挙運動費用収支報告書の記載は間違いではないのか?”――10日、糸田町選管に指摘して確認を求めたところ、選管は町長サイドに確認したとして、「ご指摘のようにリーフレットの作成費は後援会活動のものだった。(町長側は)本来、その欄にはポスターの印刷費とビラの印刷費を記載すべきだった話している」と回答。リーフレットに関する2件の支出を抹消し、代わってポスターの印刷費とビラの印刷費を記載するという。違法な状態であることを認めた形で修正は当然だが、問題は残る。
選挙に関する規定を定めているのは「公職選挙法」。後援会などの政治活動の基本法は「政治資金規正法」だ。公選法は、選任された出納責任者に、選挙運動に関するすべての収入と支出を記入した会計帳簿を作成して3年間保存するよう義務付けており、会計帳簿の内容を一定のルールに従って転記したものが選挙運動費用収支報告書である。
一方、後援会などの政治活動にかかる収入、支出を管理するのは政治団体の会計責任者。会計責任者は、政治活動に関するすべての収入、支出を記入した「会計帳簿」を作成し、3年間保存する義務を負う。会計帳簿の内容を、定められた形式でまとめたものが政治資金収支報告書ということになる。
つまり、きちんと二つの会計帳簿が別々に作成され、その内容がそれぞれ選挙運動費用収支報告書と政治資金収支報告書に転記されていれば、後援会活動の支出を選挙運動費用収支報告書に記載するというような間違いは起こり得ないのだ。森下町長の陣営に、法定の帳簿が備え付けられていない可能性もある。
自民党の裏金問題で政治資金処理の在り方が問われているが、選挙運動費用や政治活動費を管理し、適正に報告書を作成して公表するというのは政治家にとってはイロハのイ。杜撰な報告をした挙句、指摘を受けて修正というのではあまりにお粗末と言うしかない。