参議院銀選挙の投開票日まで残すところ5日。注目選挙区となった北海道と新潟、そして全国比例の最新情報をお届けする。
■北海道選挙区
北海道選挙区は、定数3。自民党と立憲民主党が2人ずつ候補者を出し、ともに2議席を狙う。2016年の参院選では旧民主党系が、19年には代わって自民党が2議席を獲得するという激戦区だ。
自民党の公認候補は連続当選2回の長谷川岳氏と元衆議院議員の船橋利実氏。立憲民主党は、3期目を狙う徳永えり氏と元衆議院議員で新人の石川知裕氏を擁立している。
7月3日日曜日、札幌の繁華街には4人の候補者が集まった。「参議院選挙もラストサンデーだ。なぜ私が札幌に来たのか、船橋さんの支援を直接、訴えたいからだ」と声をあげたのは、岸田文雄首相。この日、岸田氏は長谷川氏と船橋氏の応援のために、2度、街頭でマイクを握った。
札幌は、前回の参議院選挙で「安部帰れ」と叫んだ有権者ら2人を北海道警が違法に排除。その後の損害賠償請求訴訟で、道警が敗訴した因縁の地だ。この日も、ものものしい警備が敷かれる中の演説だったが、「ヤジを言えない社会」というプラカードをあげる人がいた程度で混乱はなかった。
対峙する立憲民主党は、泉健太代表が札幌入り。同じ時間帯に徳永氏と石川氏の支援を訴えた。
「自民党、政権与党、まったく国民目線ではない。北海道で2議席勝ち取り、国民目線の政治に!」
自民党の情勢調査では、長谷川氏が23%前後で常にリード。それを徳永氏が追い、石川氏と船橋氏が続くという展開だ。1位は長谷川氏が有力視され、徳永氏も3位までには食い込める見通しとなっている。
残り1議席を石川氏と船橋氏が争う。自民党の調査では船橋氏支持が2%ほど上回るものの、ある報道機関の調査では、石川氏20.2%に対して船橋氏が19.2%という小数点以下の争いだ。
長谷川氏の勝利は揺るぎそうにないが、「不協和音もある」と、ある北海道議が打ち明ける。「自民党は長谷川さんが優位なので、一部の組織票を船橋氏に回す戦略だ。しかし、今回の選挙で3回目の当選を果たせば、閣僚ポストもみえてくる長谷川さんは、なんとしてもトップ当選で勝利を飾りたいから首を縦に振らない。立憲民主党は、労組などの組織が完全に徳永氏についている。石川氏はれいわ新選組の推薦を得ている関係で無党派層からの支持が上がっている。船橋氏とは最後まで接戦になるだろう」
■新潟選挙区
新潟選挙区は、自民党と野党共闘の一騎打ちだ。自民党は新人の小林一大氏、立憲民主党は現職で3回当選の森ゆうこ氏。自民党の調査では、小林氏が森氏に2%の差をつける。あるメディアの調査でも1%ほど小林氏が上回っている。
新潟は野党が強かった。2016年の参議院選挙では、森氏約2,000票という僅差ながら勝利。19年の選挙も野党が議席を得た。昨年10月の衆議院選挙では、新潟県内6小選挙区のうち、4つを野党サイドがとっている。
「自民党は、1人区で接戦の選挙区があまりないので、新潟をターゲットに徹底的に幹部を投入。安倍・菅の総理経験者に加え、茂木幹事長ら幹部が連日新潟入りし、小林支援を呼び掛けている。野党共闘が崩壊した今回の参院選で、新潟だけが違った状況。それがどこまで功を奏するのか」(新潟県議会議員)
■比例代表
もう一つの注目が、比例代表だ。自民党や報道機関の調査では、自民党が19~20議席前後、公明党は7議席を確保しそうな情勢だ。連立与党としては、安定した戦いと言えるだろう。
野党は、立憲民主党が8~9議席という予想に対して、日本維新の会が9~10議席。立憲民が野党第一党を維持するか、それとも維新がその座を奪うのかが焦点だ。
立憲には、自民党や維新が擁立したタレントのような知名度のある候補はおらず、辻元清美氏に期待が集まる。その辻元氏は当選圏内だが、昨年の衆議院選挙では維新に敗れており、比例でも復活できなかった。大きく個人票、政党票を取り込めるのか微妙な情勢になっている。
「辻元氏はマスコミ宛に毎日、遊説の日程をメール送信してきます。落選中でそこまで注目されていないんですが、必死なんでしょうね……」と地元、大阪のマスコミ関係者は話す。
維新は、元東京都知事の猪瀬直樹氏や歌手で俳優の中条きよし氏が優勢とも伝わる。だが、猪瀬氏には東京選挙区の海老沢由紀候補の胸に手をあててセクハラ疑惑が浮上し、評判がいいとは言えない。ここにきて、党全体への支持に陰りが見えるのも事実だ。ある維新の国会議員は、次のように話している。
「猪瀬氏のセクハラには批判が強く、あまり表に出さないようにしている。関西で人気の吉村洋文大阪府知事が東京に来ても、聴衆の多くはシラっとしており、大阪とは反応がまったく違う。東京もそうだが、全国的にみると、熱狂的な支持があるような手ごたえはない」