沖縄“屋那覇島”売買の裏に中国人の怪しい動き

先月初め、中国のニュースが、30歳代の「張」と名乗る中国人女性が沖縄県北部・伊是名島の沖合1.3kmに浮かぶ「屋那覇島」を購入したと女性のSNS投稿を引用して伝えた。
米中関係が悪化する中、台湾有事が懸念される状況での中国人による無人島購入――。中国のSNSに「これでまた中国の領土が増える」などと歓迎するような内容が書き込まれる一方で、松野博一官房長官は「規制法の対象にはなっていない」と弱腰発言。今後の動向を「注視する」と述べるにとどまっている。

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かつては人が住んでいたという屋那覇島は、現在ではもずくの養殖が行われているだけ。伊是名島から水道はひかれているが、電気もガスはない。携帯電話もつながりにくいというから不便であることは確かだ。もちろん、インターネット回線も設置されていない。島への定期船もなく、地元の漁師に往復5,000円程度で渡船を依頼するしかないという。

屋那覇島は、伊是名島の伊是名村の一部である。そこで、不動産登記を確認すると2006年に沖縄県の企業組合が取得。その後、企業組合が解散を命じられ法人格を失ったため、所有権は東京都のYという会社に移転される。

その後、Y社は横浜市のテレビ局関連会社・T社への売却を前提に3億円あまりを借り入れる。しかし、話はまとまらず2021年3月に東京都のG社に転売されていた。

Y社の取締役である奥茂治さんによれば、「東南アジアのリゾート開発業者のソネバグループから22億円で買いたいという打診があった。しかし、うちのY社には詐欺師まがいの人間がこっそりと入っているなど信用ならない部分があった。そんなときにT社が『うちとやりましょう』と申し入れてきた。T社は神奈川県のテレビ局と密接な関係で、そちらの偉いさんも沖縄までやってきた。Y社は資金繰りが苦しくT社から3億円ほど借りていたが、信用性がない上に勝手に会社のカネを使う取締役がいるなどバラバラ。T社がしびれを切らせて『どうなっているんだ』とクレームをつけるようになった。T社はそのうち、Y社を破産させて屋那覇島を会社ごと手に入れようとした」

ソネバグループが22億円で本当に買ったとしても、外国人に所有権がわたることになりかねなかった。奥さんはこうも話す。
「外国企業でも、しっかりした会社ならば、リゾート経営で沖縄に雇用が増え観光客も来る。沖縄県民の私から見ると非常によいことです。Y社では信用がなく無理だったので、T社はしっかり見極めてくれると考えていた。T社の関係者は菅義偉元首相とのツーショット写真を見せてくれ『こういう関係なのできちんとやります』と私に言っていた」。T社の背後に菅元首相という「大物」が控えていたというのだ。

だが、最終的にはT社との話はまとまらず、3億円の借金を返済する必要もあってG社に売却された。奥さんの手元にはその売買契約書の写しも残っている。

G社の会社登記を見ると、代表者は中国人とみられる人物だ。だが、この人物はかつて中国のテレビ広告関連会社A社に在籍していた。2,007年に東証マザーズに上場したA社だが翌年には不正発覚で上場廃止となったている。「G社とは、2020年12月末に3億5千万円で売却する契約を締結。翌年に移転登記されました。G社は中国系企業ということで不安もあったが、社長が上場企業の代表だったと聞き大丈夫だろうと思った。それにすぐソネバに転売するという契約もできているとか言っていた」と奥さんは当時を振り返る。

しかし、ソネバには転売されず、G社所有のままとなっていた。SNSに動画を投稿した張という30歳代の女性だが、G社の会社登記には同じ「張」という苗字の女性の名前がある。また、SNSの動画でも「2021年2月に屋那覇島の土地を正式に取得した」と述べている。

そこで、G社の会社所在地を訪ねると、なぜかグループ会社とされる3社と同じ看板が、東京・赤坂にある裏通りのマンションに掲げられていた。インターホンを押すと、「私はグループ会社の人間だ。質問があればホームページからメール送信してくれ。何もわからない。無人島、知らない」と一方的に怒鳴り散らされた。

G社が取得した屋那覇島の土地はおおよそ7割程度で、残りは伊是名村や国の所有だ。G社が島のすべての土地の所有権を得たわけではない。G社を知る関係者に聞くと「G社は、うまい話があればなんでも口をはさんでいくような会社。資金は中国から調達してきます。日本のホテルや旅館もそれで乗っ取られています。しかし、すぐ別の事業に投資してさらに儲けようとするので自転車操業。ホテルや旅館もすぐに転売しているようです。G社はバックには日本の複数の元衆議院議員がいるとされていて、周囲には一緒にうつった写真を見せています。怖いのは、G社が直接的に中国当局とつながる会社に転売しかねないことです」と危険性を指摘する。

屋那覇島が沖縄の米軍基地に近いことから、“ヒゲの隊長”として知られる自民党の佐藤正久参議院議員は自身のSNSで「問題の無人島も法律対象になるべき、してゆくべき」と懸念を表明している。

屋那覇島は、手つかずの自然がそのままで実に美しいと奥さんは語る。だが、その島を巡って、どす黒い動きがあることも確かだ。

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