二階幹事長「災害視察」名目で知事選テコ入れ|鹿児島入りに県民反発

再び拡大傾向を示しはじめた新型コロナウイルスの感染者。東京で連日100人を超える一方、ほとんど感染者を出していないかった鹿児島県でもクラスターが発生し、100人を超えるまでに増えた。

小池百合子東京都知事は、他県への不要不急の外出を自粛するよう求め、三反園訓鹿児島県知事もフェイスブックに「感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控えましょう」と投稿している(下がその画面)。

そうした中、自民党の二階俊博幹事長が9日に東京を離れ、鹿児島入りすることが明らかとなった。

目的は「災害視察」なのだというが、なぜ鹿児島なのか――?九州を襲った豪雨で最大の被害を受けているのは熊本県。鹿児島でも被害は出ているが、わざわざ政権与党の幹事長が来る状況ではない。どうみても、二階氏の目的は“選挙”だ。

12日投開票の鹿児島県知事選挙で、自民党が推薦した現職の三反園訓氏が苦戦しており、直近の情勢調査では他候補の後塵を拝しているのが現状だ。災害視察は建前で、負けられない戦いに幹事長自らが乗り出し、業界・団体に活を入れようという魂胆だろう。実際、9日は鹿児島空港近くのホテルに建設業協会関係者を集め、災害復旧にかこつけて三反園支援を求めるものとみられている。いわゆる「締め付け」である。

自民党鹿児島県連の会長は、他派閥ながら二階幹事長の右腕と称される森山裕国会対策委員長。推薦候補が敗れれば森山氏の責任を問う声が上がる可能性もあり、盟友のためにもひと肌脱ぎたいところだ。しかし、鹿児島県民はおそらく、二階氏の来県を迷惑行為としか見ない。

前述した通り、三反園知事自身が「感染が流行している地域からの移動、感染が流行している地域への移動は控えましょう」と明言している上、小池都知事も移動の自粛を求めているからだ。しかも知事陣営には、支持の低下を招くきっかけとなった「前科」がある。

政府の緊急事態宣言が発出中だった5月9日、三反園氏は支持者や地元経済界の代表ら数十人を集めて鹿児島市内で事務所開きを開催。そこに国会開会中の東京から森山県連会長と、野村哲郎参院議員を招いていたのである。

不要不急の帰省や旅行は絶対に控えてください」「県境を越えて移動することは絶対に避けてください」と強く移動の自粛を求めていた知事自身が、ルールを破って東京から応援を呼ぶという矛盾する行動に、県民の激しい批判が集中したのは言うまでもない。

新型コロナの感染者が急増している鹿児島県に、これまた感染者が増え続けている東京から幹事長様ご一行が、災害視察という名目で“選挙支援”にやってくるというのだから、鹿児島県民が喜ぶはずがない。もちろん、被災地をだしに使った二階氏の行為は、熊本をはじめとする被災地に対する冒涜に他ならない。

選挙のためなら何でもありが自民党。しかし、最優先すべきは国民の安心・安全のはずだ。

9日に集合をかけられた建設業関係者は、憤りを隠そうともしない。
「災害視察なら熊本県に行くべきで、鹿児島県の建設業者を集める必要はないはずだ。どうせ選挙で『三反園をやれ』という指示をだすためのイベント。仕方がないから参加するが、言うことを聞くつもりはない。だいたい、知事本人が移動の自粛を訴えているのに、なんで東京からゾロゾロ政治家が来るのか?鹿屋には防災担当大臣が来るらしいが、どうせ選挙の話になる。自民党は、鹿児島県民の安心安全より、選挙結果の方が大事なんだろう。ふざけるなと言いたい」

二階幹事長が関係者を集める予定のホテルがある霧島市内のある主婦は、自民党の姿勢に猛反発。「頭にきた」と言いながら、次のように話している。
「災害視察だろうが、選挙だろうが、コロナが増えてる東京から鹿児島に来てもらうこと自体が迷惑。県内各地から人を集める神経も理解できない。二階だか三階だかわからないけど、傲慢な姿勢には我慢がならない。知事の陣営は、県民のことを軽く見過ぎだ」

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