平気で嘘をつく人だと分かってはいたが、自身が出馬した県知事選挙の真っ最中に、重要な争点となっている新型コロナウイルスへの対応策で、デタラメな数字を並べて県民を騙そうというのだから救いようがない。三反園訓という人物に、政治家を名乗る資格はない。
新型コロナの感染者が急増している鹿児島県で、12日投開票の知事選に2期目を目指して立候補している三反園訓知事が、PCR検査の件数について実数を大きく上回る幾通りもの数字を発信。県民に混乱の種をまいた上に、「休業補償」の対象でも虚偽の発表を行っていたことが分かった。
■7日の配信動画で知事が語ったのは……
下は、鹿児島市内の繁華街天文館にあるニューハーフバー「NEWおだまLee男爵」でクラスターが発生したことや県内の豪雨被害を受けて、三反園知事が今月7日に発信したメッセージ動画の画面。赤いアンダーラインで示した箇所にあるように、知事は『最近のPCR検査の数は、1日当たり400件から500件』に上っていると述べている。
さらに、『私は「接待を伴う飲食店」の皆さまに対しまして、明日から2週間の休業を要請いたしました。また要請に応じていただいた皆さまに対しましては、協力金をお支払いすることを表明させていただきました』とあり、後半でこれを補足するように『対象は「接待を伴う飲食店」だけではなくて、広く「飲食店」、「宿泊施設」を対象とするようにしたところであります』と続く。
この動画を見るか、知事の発言を読んだかした県民の大半は、PCR検査は1日当たり400件から500件が可能で、「飲食店」と「宿泊施設」には漏れなく休業補償が支給されるものと信じることだろう。もっと言えば、それ以外の解釈をするのは不可能な発言内容だ。
しかし、この二つのコロナ対策はデタラメもいいところ。「400件から500件」はどこの自治体の話かも分からない架空の数字で、休業補償の対象は「接待を伴う飲食店」だけなのである。
■どれが本当?PCR検査―「147件」「279件」「400件から500件」
論より証拠という。次に三反園知事自身が発信したPCR検査に関する数字を並べてみた。
地元紙南日本新聞の候補者アンケートには「279件」、4日に投稿した自身のフェイスブックには「147件」、7日の県民向けメッセージ動画では「400件から500件」――。デタラメというか、口から出まかせというか、本当の数字はまるで見えてこない。
新型コロナを所管する県健康増進課からもはっきりした回答がない状況だ。県政トップがいくつもの数字を公表しているため、フォローするのが困難になったということだろう。
参照記事⇒“三反園鹿児島県知事・新型コロナ「病床253床」「PCR検査279人分」に虚偽の疑い”:“新型コロナで失政露呈|鹿児島県知事がFBに投稿した本当の病床数とPCR検査件数”
■選挙目あてに県民を欺く手法
極めて悪質な虚偽公表だと思われるのは、協力金が支払われる休業要請の対象についての発言だ。三反園氏は『対象は「接待を伴う飲食店」だけではなくて、広く「飲食店」、「宿泊施設」を対象とするようにしたところであります』と断言しているが、実際に休業補償の対象になるのは「接待を伴う飲食店」のみ。接待なしの飲食店や宿泊施設は、補償の対象ではないのだという。健康増進課に確認を求めたが、折り返し回答といいながら、出稿までに連絡もなかった。
この問題は「間違いでした」では済まない。接待を伴わない「飲食店」や「宿泊施設」の関係者は、休業補償が出るものと信じただろう。しかも、現在は知事選の真っ最中。再選を狙う現職知事が嘘をつくなど、誰も思うまい。もちろん、飲食店関係者以外の県民は、「知事はよくやっている」と評価している可能性が高い。票めあてのウソは三反園氏の得意とするところだろうが、新型コロナ絡みのいくつものウソは、人命や経済活動にかかわる問題だけに容認するわけにはいかない。
ちなみに、炎上した7日のメッセージ動画は、ハンターが県に取材した8日夕になって突然削除されていた。ウソの次は姑息な隠蔽。三反園氏は、県民に謝罪して引退すべきだ。