西村元経産相の先行きに影落とす斎藤元彦兵庫県知事の疑惑

「いったいどういうつもりなんだろう」とムッとした表情で話すのは、兵庫県洲本市の市議会関係者N氏。手にしたスマートフォンには、自民党裏金事件で1年間の党員資格停止となっている西村康稔元経産相のポスターが写っていた。

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淡路島全体の3市と明石市が西村氏の地元選挙区となる兵庫9区だ。今年4月に、党員資格停止の処分後も西村氏は「自民党」と入ったポスターを堂々と貼り続けていた。N氏がこう話す。

「西村は、頻繁に淡路島にやってきては地元の有力者や首長、市議らを集めて集会を開いていた。ある時、記者が取材に来ると『なぜわかったのか』と追い出すほどピリピリしていた。自民党の看板を失いとても焦っていた。それを象徴するのが、自民党じゃないのに、なぜ自民党のポスターを貼っているのかという問題でした。西村氏は集会で、『この1年間で解散総選挙があれば、無所属となる。私と維新の争いだ』と自民党が刺客を立てないことを明言していたが、党と対立候補は立てないという約束であるのだろう。ただし、西村が裏金事件を正当化するような発言ばかりするもんだから、自民党支持者から『お前、裏金100万円どころかもっともらっているんだろ』『裏金を俺にもくれよ』などと突っ込まれることも少なくなかった。西村は、そうした批判に屈しきれずポスターを貼り替えたようだ」

西村氏の依頼があったのか、ポスターを手に淡路島内をまわっていたのは地元の自民党系市議だという。まだ子分がいるということだ。

言い訳行脚を続ける西村氏だが、逆風はこれだけではない。パワハラ疑惑(既報)で迷走する斎藤元彦兵庫県知事のが初当選した2021年7月の知事選で、同知事を支援したのが西村氏なのだ。

当時、自民党県連の会長だったのは谷公一元国家公安委員長。県連は副知事だった金澤和夫氏を推薦していたが、突然、推薦候補が日本維新の会が推薦していた斎藤氏に差し替えられた。県選出のある自民党国会議員は、次のように解説する。

「谷さんに差し替えができるような力はない。こういう場合にしゃしゃり出るのが西村です。安倍政権の中枢にいた西村が、官邸などと調整してひっくり返し、斎藤に決めた。斎藤は総務省出身。とりわけ彼にご執心だったのが菅義偉元総理だった。西村は菅政権時、コロナ担当大臣だったこともあり、積極的に“斎藤”支持で地元の説得に動いた。西村には斎藤知事の製造者責任がある。しかし、まったく知らん顔だ。県民への説明責任を果たしていない」

7月29日、維新の馬場伸幸代表が兵庫県でスピーチしたときのこと。「維新スピリッツで頑張っている首長さん、兵庫県では西村知事さん、いや斎藤知事さん」と言い間違えた。西村氏の影響力がいかに強かったかを物語るエピソードだ。

一方、西村氏“小物”ぶりを証明する事例もある。前出の自民党国会議員が語る。
「斎藤知事の前任者である井戸敏三さんが、『井戸さんが『ああ、西村君な』と格下のよう扱っていたことを根に持っていたそうです。井戸県政の後継が金澤氏なら、また『西村君な』と言われるのが嫌だったから県連の決定を覆した。斎藤知事擁立に走ったのはその程度の理由だろう」

知事選で維新の吉村洋文知事とともに西村氏は斎藤知事の応援で何度もマイクを握った。当時の動画には「斎藤知事、謙虚だが行動力は抜群。兵庫県を前に進める人物です」と西村氏は絶賛していた。だが、内部告発にあるようなパワハラの数々で、斎藤知事に謙虚さなど少しもないがないことははっきりしている。

最近、N氏は西村氏と会ったというが、元大臣は「斎藤知事、あれはいかんね。後任? そうやね、自民党にいたら俺が中心でやるのだが、今は裏でやるしかない」と語ってといい、N氏はただ驚くばかりだったそうだ。

斎藤知事は8月末の百条委員会で、証人として出席が予定されている。ここで徹底的に追及されると、一気に県内政局は動く。

「斎藤知事が内部告発にある内容を1つでも認めれば、すべて終わりだ。しらばっくれても、側近たちが1つでも『内部告発が間違いない』と証言すれば知事の座は危うくなる。もう辞任までのカウントダウンがはじまっている」(ある兵庫県議)

西村氏の党員資格停止中に解散総選挙があれば、元大臣であろうと無所属での出馬となる。人気者の泉房穂前明石市長が兵庫9区で出馬すれば、十中八九西村氏に勝ち目はない。無所属なので、当然比例復活もない。

「斎藤知事は責任をとってすぐ辞任すべき。西村さんも責任をとり不出馬もしくは落選してほしい」――取材に歩くと、そんな声を何度も聞いた。斎藤知事のスキャンダルが、じわじわと西村氏にも影響を及ぼし始めている。

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