石破氏「最後の戦い」の行方

国民的人気が高い石破茂元幹事長が、地元の鳥取県八頭町にある和多理神社で、自民党総裁選に出馬することを表明した。「次の総理」の世論調査で、毎回トップの支持を集めている石破氏。ある意味「本命」の立候補者だ。

◆   ◆   ◆

「38年間の政治生活の集大成として、これが最後の戦いとして、原点に戻って、全身全霊で皆様にご支持を求めたい。この地を選びましたのは、今から40年前、私が、自民党の公認もまったく見通せない時に、1軒ずつ、お願いをしてまわった土地。国民の皆様、ひとりひとりと向き合う、それが私の政治生活の原点」と述べた。

そして、裏金事件を念頭にしたのか「総裁選に臨むにあたり、ルールを守る政治でありたい。政治家のための政治ではなく、国民のため。ルールを守る、それは、政治のためのカネ。カネが必要であるならば、きちんと節度を持って集めなきゃいけません。限りない透明性を持って、国民に向けて公開をいたしてまいります。改正された政治資金規正法を守るのは当然であり、透明性を深めるための努力を最大限にいたしてまいります。カネのために政治をするのではない」

「(次期選挙での)公認は選対で論議すべきだ」とこれまで主流派だった安倍派をターゲットにすえたように語った石破氏。岸田首相はすでに、安倍派などの裏金議員の次期選挙での「党公認」を事実上決めている。石破氏は、これに明確にNOを突き付けた形だ。

石破氏の意見はまっとうだが、これを聞いた旧安倍派の議員はこう憤る。

「裏金議員はすでに処分が決まっている。総裁選で勝てば、公認するかどうかわからないという。石破氏は、最大派閥だった安倍派にケンカを売っているんだろう。大体、本当に(推薦人)20人が集まっているのか?」

旧石破派は2021年12月に派閥を解消して、グループとなった。派閥の中核だった伊藤達也元金融担当相や山下貴司元法相は茂木派へ、田村憲久元厚労相は岸田派へ鞍替え。そこへ、かつて石破派の一員だった斎藤健農相も総裁選を目指すと表明しているのだ。かつては石破氏に近かった自民党のある議員がこう話す。

「斎藤さんは世論調査の『次の総理』では名前すらあがりません。それが、出馬の意向というのは誰かが斎藤さんをけしかけているからです。石破さんに出てほしくない人が仕掛けている。それに、石破さんのグループは現在8人とされる。うち2~3人が斎藤さんについている。残りは5人ほどでしょう。もともと10人にも満たないグループで、石破さんと斎藤さんに割れていたら、とてもじゃないが人数は集まりませんよ」

2012年の総裁選では、第1回目の投票でトップの199票(地方票165票、国会議員票34票)を獲得した石破氏。しかし、過半数には足りず、安倍晋三元首相との国会議員だけの決選投票で敗れた。

2021年、岸田首相が勝利した総裁選では、河野太郎デジタル相を小泉進次郎元環境相とともに支援。国民的人気の高い「小石河連合」という作戦が功を奏して、河野氏は第1回目の投票で岸田首相を上回った。しかし、決選投票で敗退している。

「石破さんは最後の総裁選と明言している。本音は、小石河連合の小泉氏と河野氏には『今回だけは俺の支援にまわってくれ』と言いたいところなんですよ、石破さんは。しかし、それを直接石破さんは言わないし、裏で根回しできる側近もいない。ゆえに、小石河連合の3人ともが出馬するという事態になっている。石破さんの人望のなさが如実に出ている」(前出の自民党議員)

10年ほど前、石破氏が安倍元首相と並び自民党の覇権を争っていた時のことだ。石破氏がある若手議員を見込んで、グループのメンバーを通じて会食に誘ったという。当時のことを知る国会議員が、次のように振り返る。

「石破さんは自分の派閥に入れたいと、若手議員に声をかけた。居酒屋の会合では話が弾み、若手議員も『とてもためになる』と喜んでいた。だが、お開きになろうかという時でした。『みんな、割り勘でいこう』と石破さん。若手議員も興ざめてしまい、その後は呼んでも来なくなった。その後、安倍派の有力者が石破さんの割り勘発言を聞きつけ、若手議員に接近して派閥に取り込んだ。こういう細かさがダメなんです、人がついてこない」

一時は、菅義偉元首相と武田良太元総務相が石破氏擁立で動いたが「話し合いにすらならず」決裂。その後、小林鷹之衆議院議員が出馬表明し、小泉氏と河野氏もタイミングを計っている状況だ。

「総裁選が注目されているのは小林の若さ、勢いがあるからだ。今回の総裁選はおそらく世代交代がキーワード。世論調査で人気が高い石破さんだが若い3人に党員票を根こそぎもっていかれる可能性が高い。石破さんが第1回目で過半数をとれずに決選投票まで持ち込んでも、麻生派、岸田派、茂木派の主流派がウラで集まれば石破さんに勝てる見込みはない。出馬という選択をするよりも、小石河連合をもとに誰かの支援に回ったほうがよかったのではないか」(前出の旧安部派議員)

「安倍派切り」で最後の賭けに出た石破氏の戦略は吉と出るか、それとも?

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