懲戒処分を2度も受けた福岡県田川市の現職課長が自発的に退職し、9月から大任町に採用されることが分かった。背景にあるのは……。
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市職員の立場を捨てて町役場に再就職するという不可解な動きをみせているのは、公務員としての不適切行為で2度も懲戒処分を受けた池口芳幸市立病院総務課長。昨年4月の田川市長選挙で3期目を目指した二場公人氏が敗れたが、そのきっかけとなったごみ収集運搬業者を選ぶポロポーザル審査を巡る疑惑で、中心的な役割を果たしていたとみられている人物だ。
池口氏は、2021年5月に実施された「田川市一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」の業者選定プロポーザルで審査委員を務めていながら、選定1位となった早雲商事(田川市)が2022年1月に開催したゴルフコンぺの会場を予約した上、自身も部下を誘いコンペに参加していたことがハンターの報道で判明。不正を伴う悪質な官業癒着ではないかとして批判の対象となっている。
このポロポーザル審査に絡む別の不適切行為などが発覚し、今年7月には減給1か月の懲戒処分。また、田川市長選の投開票日となった昨年4月23日には、50人以上の同窓生が参加するグループラインで二場公人市長(当時)への投票を呼び掛けるメッセージを投稿したとして(*下の画像)、同年6月に戒告の懲戒処分を受けていた。
選挙運動期間終了後の投票呼びかけは公職選挙法違反。池口氏は事情を知った市民団体から刑事告発されている。告発状を正式受理した福岡県警が捜査を続けている最中で、近く送検される見通しだという。
疑惑まみれの池口課長を、田川市・郡の8市町村で構成する一部事務組合が行っているごみ処理行政の担当として出向させるよう、早くから求めていたのが大任町の独裁者・永原町長だったという。池口氏が退職願いを提出したのは先月末か8月の初め頃だったとされ、9月から大任町に採用されることが既に決まっている。
池口氏を雇用する永原町長の狙いは、既に手中に収めたし尿処理行政に加え、ごみ処理行政までも牛耳ることだろう。建設中のごみ処理施設が完成する来年の春から、し尿処理の一部事務組合「田川地区広域環境衛生施設組合」とごみ処理を所管する「田川郡東部環境衛生施設組合」が統合される予定。池口氏は、市立病院総務課長に異動する前、長く環境政策課(2021年度までは「環境対策課」)の課長を務めていたことで、ごみ処理を含む田川市の環境行政に精通している。しかも、問題のプロポーザルでは永原氏周辺の業者に便宜を図った疑いがあり、「田川市をクビになっても、いずれ永原が何らかの形で引き取るんじゃないか」(市関係者)と言われるほどの関係だった。
ここ数カ月の間に、現在は病院勤務のはずの池口課長が、し尿処理施設「田川地区クリーンセンター」や、ごみ収集運搬車の拠点である「田川市環境政策課清掃事務所」に出入りしているところを目撃されており(画像あり)、業務外とみられる行動に、市関係者などから批判の声が上がる状況となっていた。
二場前市長時代からの懸案事項となっているごみ収集運搬業者選定プロポーザルを巡っては今月、田川市議会に二度目となる百条委員会が設置されており、池口課長や二場前市長などを証人として呼ぶことが確実視されている。
懲戒2度に加え刑事処分を受ける可能性まである人物を拾う形となる永原氏。指定暴力団の企業舎弟あがりらしい、侠気ある人事ではある。