期待される立憲民主・野田代表に「維新だけはダメ」の声

9月23日、第一野党の立憲民主党が代表選を行い、野田佳彦元首相が枝野幸男元代表、泉健太前代表、吉田晴美衆議院議員を破って新しい代表に選出された。野田氏は、民主党政権時代に首相を務めたが、解散総選挙に打って出て自民党に惨敗。民主党政権が終えんを迎えた“戦犯”とも呼ばれている。しかし、立憲が次の党の顔に選んだのは野田氏。その野田氏が日本維新の会との選挙協力を匂わせていることに、党内から懸念が示されている。

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「解散総選挙が近いからですよ。野田さんは維新をはじめとする他の野党との連携を打ち出している。うまく選挙区調整してくれると当選の確率が高くなるということです」と野田氏を支援したある議員はそう話す。党役員には小川淳也幹事長、重徳和彦政調会長、笠浩史国対委員長、大串博志選対委員長と中堅どころを起用しており、“刷新”のイメージを狙った人事だ。

野田氏が打ち出す野党連携の主眼は維新に向いている。「選挙でいつも苦戦している小川さんなんかは、野田さんが維新と調整すると言っていることが嬉しくて仕方ない感じですよ」(前出の議員)

維新の馬場伸幸代表は以前から立憲民主党を徹底的に攻撃しているが、「野田さんなら話し合える。組めるかもしれない」と語っており、事実8月23日には野田氏を維新の勉強会に講師として招いている。しかし、こうした状況を危惧する声は少なくない。

「他の党との選挙協力は必要だが、維新だけは危険だ」と反対するのは、吉田氏を支援した別の立憲議員だ。彼は、維新の支持率が急落していることと、所属議員による不祥事が頻発していることに懸念を示す。

「維新は前回の衆議院で41議席をとったが、解散総選挙になれば半分程度に落とすことが確実だ。そんな維新と手を組むなんておかしい。野田さんは、維新が強い大阪などの関西は譲り、他では立憲民主党の候補者に、という考えのようだ。しかし、大阪や関西でも維新は議席を減らす見込みで、直近に行われた大阪府内の地方選挙でも負け続けている。関西を譲る必要なんてない」

8月末の箕面市長選では、維新の現職候補が無所属の新人に大敗。9月22日投開票の摂津市長選では、維新を離党して無所属で出馬した候補が敗れ、同日の大阪府議補選摂津市選挙区でも維新の候補が141票差で落選している。

おひざ元の大阪で連敗が続く維新は相変わらず「不祥事のデパート」状態。藤田文武幹事長も記者から不祥事の連発を突っ込まれ「毎週というが(不祥事が)ない週だってある」と意味不明な回答を余儀なくされているほどだ。

不祥事の代表が、県議会から全会一致で不信任決議を可決され、自動失職することになった兵庫県の斎藤元彦知事だろう。2021年の知事選では維新の推薦を受け、吉村洋文知事の応援で当選したが、パワハラやおねだりに関する内部告発を巡り県民の猛反発を受ける立場に――。最初は庇い気味だった吉村知事も、箕面市長選で負けた時は「斎藤知事の問題の影響もある」と認めざるを得なくなった。

斎藤知事絡みでは、別の不祥事も起きた。維新所属で兵庫県が地盤の掘井健智衆議院議員は、斎藤知事の悪行を内部告発をした元西播磨県民局長の個人情報などを市民に漏らし、「厳重注意」の処分を受けた。掘井氏は「亡くなった方(元局長)は、自民党さんらとつくった。あの怪文書」「ビラ(告発文書)は神戸新聞に出したと思うけど、やっぱりくしゃくしゃにして捨てられている。内容が(うすいので)そんなやから」「なんで(県が元局長のパソコン)押収したか。証拠があったから押収した。出てきたもん、なんや思います?。えらいもんが出てきた。彼(元局長)の(プライベートな)データがいっぱい出てきたわけ。それでお前、何しとんねんと」などと地盤の兵庫9区の有権者に話していたことが分かっており、「とても厳重注意で済む問題ではない」と維新内部からも疑問視する声が上がっている。

関西以外でも支持率低下の火種は尽きない。千葉市議会では、市民の声を代弁する「請願書」の署名を維新の市議2人が偽造するという「自作自演」が発覚。千葉市議会は辞職勧告決議案を可決したが、法的拘束力がないため2人とも辞職を否定している。

昨年、衆院京都4区の維新支部長に就任した松井春樹氏は9月24日、支部長の辞任と次期衆議院選挙への出馬を取りやめると発表した。事務局長だった男性が同じ京都4区選出の北神圭朗衆議院議員の事務所に偽名を使って出入り。後援会の名簿など、内部情報を盗む目的ではなかったのかと疑惑が浮上したからだ。すでに事務局長は解任されたというが「ボランティアなので雇用契約もなし。解任とか関係ないと元事務局長は言っています。早起きせず、活動の真剣さが足りない松井とはよくもめていた。一方、事務局長といいながら事務所にはほとんど来なかった。そのうえ、他陣営をスパイしていたなんて、ドラマのようだ」と松井氏の関係者は話す。

また9月8日には、維新の元衆議院議員、椎木保容疑者が警視庁に逮捕されるという驚きの報道も――。東京都新宿区の繁華街で、中学1年の女子生徒に「2万円あげるから」と誘い、カラオケボックスでわいせつ行為に及んだ不同意性交容疑だ。元職の行為とはいえ、このような人物を国会議員にしていたのは維新の責任は決して軽くはあるまい。

維新の遠藤敬国対委員長は野田氏と太いパイプを有する。野田氏が代表就任の挨拶に行くと「共通点は多くあり、一緒にやれることがある」「野党連携を十分やっていくべき」と持ち上げてみせた。また政治資金規正法改正案の共同提出も呼びかけている。取材していた記者たちからは、「立憲民主党をぼろくそに言っていたのはどこの政党だったか」と失笑が漏れたという。

ある維新の国会議員は、「立憲民主党が、『タッグを組みたい、一緒にやりましょう』と言ってくれれば本当にうれしい。今の維新の党勢では、党内抗争が起きて近いうちに分裂しかねない。まだ立憲民主党のほうがかなりマシ。こちらが抱きつきたいほどだ」と本音を漏らす。

泉前代表を応援していた衆議院議員は、こう話している。

「野田さんを選んだのが吉とでるかどうか。選挙協力で泥船の維新を助けても意味がない。維新は、ほっとけば沈んでいくだけ。維新と組んだら、政権交代どころかまた党が割れかねない。自民党は政治とカネに加え旧統一教会の問題を抱えているが、維新も極めてたちの悪い不祥事が多すぎる。野田代表が言う、裏金議員のいる選挙区での統一候補擁立には賛成だが、組む相手は選ばないといけない」

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