不評の万博で問われる維新の会の責任

4月12日から開催される大阪・関西万博。テストランが始まったが、前稿で述べたように今も会場内では工事が続く。会場から出てきた工事関係者に聞くと「うちの会社でやっている海外のあるパビリオンは、まだ内装工事が完了していません。とても開幕に間に合いそうにない。外装工事をしながら、内装もはじめてしまうという信じがたい遅延ぶりです。その場合、パビリオンの一部だけオープン。開幕後、会場が閉まった深夜に工事をするという案もあるそうです」と打ち明ける。どうなるのか、万博。

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出展する国が独自で建設するタイプAのパビリオン。47カ国が42のパビリオン建設を進めてきた。大阪市などの資料によれば、外装の建築が終わった時点で、日本国際博覧会協会を通じて大阪市の検査を受け完了証明の交付を受けることになる。その後に内装工事に着工して展示品などを搬入。今度は使用許可を得るという手順になっている。だが、国際博覧会協会関係者は暗い表情だ。

「3月末くらいで、完了証明を交付されたのは13のパビリオンのみ。内装、展示品まで終わらせて使用許可を得たのは2つのパビリオンしかない。外装と内装工事を平行して行い、完了証明と使用許可を一緒に交付してほしいという要望を出している参加国もある。おそらく10棟前後のパビリオンは一部のオープンで開幕を迎えることになりそうだ」――そうなれば、入場者は未完成のパビリオンしか見学できないという事態になってしまう。

万博は、開幕前からトイレの建築中にガス爆発が起こり一部が損傷。今月6日には爆発事故の危険性が高い高濃度のメタンガスが検知されるなど、開幕を前にマイナスばかりが表面化する状況だ。

トラブルはそれだけではない。日本国際博覧会協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事が「万博周辺をクルクルと空飛ぶクルマが普通の人が自転車で走っているようにクルクルまわっている」と豪語していた空飛ぶクルマの商用運航はなく、デモンストレーションフライトだけとなった。それも、4社が運航予定だったが3社に減っている。

「2,820万人の入場者の目標」「前売り券は1,400万枚」と吉村氏は掲げていたが、万博のホームページによれば、3月19日時点で830万枚しか売れていない。

しかし、吉村知事は3月20日に自身のYouTubeチャンネルをアップデート。その中で前売り券販売が「いろんなの全部入れて1,000万枚を超えた」と根拠を示さずに語った。目標にしていた前売り券の販売数1,400万枚について問われると、「言うてたかなぁ」「(目標が)1,000万枚くらいじゃなかった?」と大ボケでごまかした。

誤算は続く。入場者数の増加を狙って大阪府などが「遠足」と称して計画していた「大阪府万博子ども招待事業」も辞退する市町村が続出。事業に参加しないことを決めた大阪府のある小学校の校長は「先生が下見もできず、ガス爆発が起こり、どのパビリオンが見学できるかもわからない。バス代金はこちらの負担で、それでなくとも運転手が不足しており万博まで行ってくれるバスがない。子どもたちを安全、安心に連れていけない場所だ」と厳しい意見を述べている。

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万博の公式ガイドブックでを巡ってもひと悶着あった。《未来都市のイラストを描きましたが、完成品ではなく、制作途中でレイアウト検討のために必要と言われスマホで撮って編集部に送ったものがそのまま載ってました!画像はガイドブックの表紙、載ってしまった描きかけ状態、そして本来載るべき完成品です》と前代未聞のクレームがついたのだ。これについて吉村知事は、「お詫びするしかない。理由はわからないがあってはならないこと」と謝罪に追われた。

間違いはさらに。公式ガイドブックの制作にあたったJTBパブリッシングは、開幕していないにもかかわらず《『2025年日本国際博覧会 大阪・関西万博 公式ガイドブック』掲載内容に関するお詫びと訂正》を公表。国際連合のページに掲載されたのは「国際連合旗」ではなく、違う旗だったという。

また、イスラエルの首都を日本が認めていない「エルサレム」と表記。またイスラエルと対立するパレスチナの首都を「東エルサレム」とするなどデタラメな記述が目立った。トラブル続出でお先真っ暗というのが実情だ。

万博誘致を主導したのは吉村知事が代表を務めるが日本維新の会だ。6月に東京都議選、夏には参議院選挙、石破政権の動向次第では解散総選挙も囁かれる中、万博に関する暗いニュースが連続する状況だ。維新の地方議員はこうぼやく。

「万博でトラブルが起こるたびに、地元では『維新のせいだ』と指摘されて困っている。維新の十八番となった不祥事も相変わらず続いている。万博が不評なら、都議選も参議院選挙も維新はぼろ負け。まさに存続の危機だ。吉村代表もそれがわかっているから『1,800万枚チケットが販売できれば、黒字になる』と予防線を張っている。2,820万人という目標はどうなったのかと地元でも突っ込まれているが、答えようがない」

先に紹介した吉村氏のYouTubeでも「(チケット販売が)何万枚で黒字かというと1,800万枚。開幕前で1,000万枚いきましたから、あと800万枚で一応黒字にはなる」と、ボーダーラインをいきなり下げ始めている。そして「赤字黒字、(万博は)収益事業をやっているわけではないので、本質的には重要でないと思っている」と信じられない無責任さだ。

万博が赤字なら、当然補填が必要で「税金投入」は避けられない。府民、国民に負担を強いる可能性も十分な万博。「身を切る改革」と言い続けてきた維新の責任は、選挙で問われることになる。

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