学校用地絡みのトラブルで虚偽公文書作成の疑い|刑事告発された兵庫県尼崎市(下)

昨日報じた学校法人重里学園(大阪府:重里國麿理事長)と兵庫県尼崎市の、学校用地を巡る対立。当初両者の間で結ばれた協定書の内容通りに市有地売却を行うよう学園側が求めた民事訴訟では、裁判所が重里学園の主張を全面的に認める和解案を示すという、異例の展開をみせた。尼崎市にとっては事実上の敗訴。しかし、一件落着とはならず、民事訴訟で出てきた証拠から、重里学園側が虚偽公文書作成で尼崎市の役人を刑事告発せざるを得ない状況となった。

■公文書は“でっち上げ”のオンパレード

重里学園が神戸地方検察庁尼崎支部に提出した告発状によれば、被告発人は尼崎市環境局のA課長とB係長。問題視されているのは、尼崎市が重里学園との民事訴訟で提出した公文書だった。

2018年8月6日、別の専門学校を設立する方向で動いていた重里学園と面会したA課長とB係長は、次のような見解を示したという。
法的な部分もありますので、私たちの考えだけではいきません

ところが、民事訴訟の証拠として提出されたその時の記録を見た重里理事長は、腰を抜かさんばかりに驚いた。「8月6日の会話はすべて録音し、反訳していましたが、尼崎市の記録には、言ってもないことが記されていたのです」(重里理事長)

尼崎市が民事訴訟で証拠として出した『環境学園専門学校の廃校について』という8月6日の会合の内容を記した文書には、「市からの意見」として、8月6日には一切出ていないかった発言が記されていた。

市からの意見
契約上、現状回復して返してもらうのが基本と考えている
契約解除後の当該土地の利用については、庁内で検討する

当初、尼崎市はA課長とB係長が回議欄に押印したこの文書の一部を黒塗りにして、神戸地裁に提出してきた。一般的に、民事訴訟において立証を求められた自治体が、自らのための証拠を黒塗りすることは、訴訟とは無関係な人物の個人情報などに限定される。しかし、尼崎市はその時には言ってもいない「市からの意見」を記した上で、「法制課の見解」「今後について」という極めて重要な事項は黒塗りにしていた。(*下の2枚の文書参照)

2018年11月21日、再度、重里学園と尼崎市が会談。A課長、B係長に加えて上司のC部長が加わった。その時の記録文書は『環境学園専門学校廃校後の計画案について』というもの。C部長は冒頭から、「学校を廃止されるのであれば、更地で返還していただく」と厳しい姿勢をみせている。この日のやりとりの記録文書も尼崎市が民事裁判の証拠として提出しているのだが、やはり、驚くような“でっち上げ”があった。学園側は、こう言ったことになっている

・契約解除になるのは仕方ないだろうと思う。
 ・契約書に基づいて、当該地の無償賃貸契約が終了するのはわかっている。

あたかも重里学園が、問題の土地の取得をあきらめていたかのような発言が列挙されていたのだ(*下の文書参照。赤いアンダーラインはハンター編集部)。しかし、学園側の録音データには、このような発言はまったく出てこない。

そして翌日、11月22日には重里学園側がB係長に電話。尼崎市はその時の記録を『環境学園からの土地買い取り検討について』という文書にまとめて、裁判の証拠として出している。そこには、市側が示した「市からの意見」として次のような記述がある。

市からの意見
・市として現状、当該土地を重里学園に売るつもりはない。

しかし、重里学園の録音データに、そのような市側の発言は残っていない。

■議会では「虚偽答弁」

学園側が刑事告発にまで至ったのは、尼崎市が、A課長やB係長の“でっち上げ発言”を記載し、「公文書」として裁判に提出したからだ。学園側は、一連の公文書に虚偽内容が記されていることが、刑法156条の虚偽公文書作成罪にあたるとしている。

その背景にあるのもはなにか、重里理事長は次のように話す。
「民事裁判の争点の一つが、重里学園が尼崎市に土地買い取りを求めた時期です。はじめは、8月6日の公文書を黒塗りにした理由がわかりませんでした。裁判所が黒塗りを外した文書の提出命令を出したので明らかになったのですが、やはり、買い取りを求めた時期に矛盾があるから非開示にしていたことが判明しました。尼崎市は虚偽の公文書をでっち上げることで、裁判を優位に進めようと目論んだのではないでしょうか」

言ってもいないことを言ったとして、公文書に書き加える――。都合が悪いと、黒塗りの証拠で裁判所まで欺こうとする――。行政として絶対にやってはいけないことを、尼崎市はやったということだ。おまけにA課長は2019年12月19日の尼崎市議会で重里学園の土地問題について、こう答弁していた。

土地使用貸借契約の中でも、直ちに原状回復の上、市のほうに返還するという条項が明記されております。学校法人側も認識されています

これは契約書の前に交わされている協定書の《将来土地について譲渡の申し出を受けたときは協議のうえ、時価で譲渡するものとする》の内容のうちの、“土地を時価で譲渡できる”という内容を隠して、尼崎市の都合がいいところだけを使ったものだ。重里学園側はこうした誤った認識はしておらず、「虚偽答弁」といえるだろう。

虚偽公文書作成に「証拠隠し」「虚偽答弁」と犯罪の温床ともいえる尼崎市のおかげで、重里学園の新設校の開校は大きく遅れている。
(*下が「協定書」。赤いアンダーラインはハンター編集部)

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