8月23日未明から早朝にかけ、札幌市のホームレス支援団体が同市内で路上生活をしている人たちの概数調査を行ない、車中生活者も含めた当事者55人を確認した。国が公式に発表している札幌市のホームレスの人数は30人ということになっているが、実際には少なくとも公称の2倍弱の人たちが路上で過ごしていることがわかった。
調査を実施したのは、国の調査でも委託を受けている「北海道の労働と福祉を考える会」(労福会、山内太郎代表)。夏季に独自の調査を行なうのは2015年以来5年ぶりで、毎年1月に全国一斉に実施される国の調査を補完する目的で企画した。
学生など同会関係者31人が、午前3時から同6時にかけて市内11エリアを調査。毎週末の「夜回り」ではホームレスに積極的に声をかけ、食料や日用品などを差し入れているが、深夜帯の人数調査では「目視」で当事者を確認し、寝起きしている場所などを記録した。国の調査からは漏れてしまいがちな「車中生活者」の存在にも目を向け、郊外の駐車場なども細かくチェックした。
同日中にまとまった速報値によると、この日確認されたのは公式な数字を25人上回る55人(男性41、女性4、性別不明10)。うち車中生活者は12人に上り(男4、女2、不明6)、多くが公園やショッピングセンターの駐車場などを寝起きの場としていた。またこれらとは別に、荷物のみが確認できた生活拠点6カ所が報告されている。独自調査の速報値は、国の発表する公式な数字を大きく上回った
国の調査ではホームレスの数は年々減り続けてきたことになっているが、いわゆる「ネットカフェ難民」や車中生活者は調査で捕捉しきれていない可能性がある。労福会代表の山内太郎さん(45)は「夏に調査をする意義はあった」と話し、次のように指摘する。
「国はなぜか一斉調査の時期を1月に固定していて、積雪寒冷地の札幌では実態を反映できていない可能性が高かった。実際、これまで独自に実施した夏季調査では今回を含めて毎回、冬よりも数字が増えている」
山内さんによると、本年1月の国の調査では実際には42人のホームレスが確認されていたが、うち車中生活者だった12人が札幌市の意向で当事者と見做されなかったため、公称が30人になってしまった経緯がある。労福会では今回の調査結果をもとに、より詳細な実態調査を進めて有効な支援に繋げる考えだ。
初めて夏季の調査に参加した市内の大学院生(26)は「車中生活の人を初めて見た。比較的小さな公園や24時間営業の駐車場を利用する人が多いことがわかり、たいへん勉強になった」と話していた。
※ 国が1月に実施した全国一斉調査の結果は、7月下旬から厚生労働省の公式サイト内で公開中( https://www.mhlw.go.jp/content/12003000/000649857.pdf )。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 北方ジャーナル→こちらから |