規範意識欠く「日本維新の会」、ごまかし まやかしの歴史
自民党と連立を組んだ日本維新の会が“政治とカネ”の問題から目を逸らすために考えついたのが「センターピン」と称する策。企業団体献金の廃止ではなく、衆議院議員の定数削減を連立維持の条件として持ち出した。
自民・維新両党によって臨時国会に提出された法案は、与野党協議で1年以内に結論が出なければ小選挙区25、比例代表20の計45を自動的に消滅させるという極めて乱暴な一項を盛り込んだ非常識なもの。当然ながら野党の猛反発を受けて審議にも入れず、来年の通常国会に持ち越しとなった。
重要課題である「企業・団体献金の廃止」を先送りするため維新と高市早苗首相が唐突に始めた茶番劇だったが、国民の間から強く定数削減を求める声は上がらなかった。まやかしの政治に騙されるほど、有権者は愚かではない。
■倒れなかった「センターピン」
「センターピン」とは、ボウリングで一番前にあるピンのことだという。記者は寡聞にして知らなかったが、これを倒せばストライクにつながるというので、様々な問題を解決に導く最重要の一歩という意味らしい。では、「センターピン」だという定数削減を実現することによって、維新が解決しようとしている政治課題は何か――。残念ながら、肝心なその先は見えてこない。
同党の代表である吉村洋文大阪府知事や藤田文武共同代表の発言を拾ってみたが、連立離脱を匂わせながら意気込みを語るばかりで要領を得ない。自民党の裏金事件に象徴される「政治とカネ」や、企業団体献金の廃止といった諸課題の解決につながる策でないことだけは確かだ。
そもそも、議員の数が減ったとしても、政治とカネの問題はなくならない。政治家の不正と議員の数には因果関係がないからだ。衆議院議員が半分以下になったとしても、「政治にはカネがかかる」という政治家の身勝手な認識が変わらない限り、裏金問題に象徴される不正が減ることはない。
結局維新は、自民党が嫌がる企業団体献金の廃止という時代の要求から逃れるため、国民受けしそうだと考えて定数削減に活路を求めたに過ぎない。維新得意のごまかし、まやかしだ。
維新のこれまで――特に吉村府知事の過去の言動などを振り返ってみれば、この政党がいかにいい加減な組織であるかが解る。
■「ポビドンヨード」はどうなった?
新型コロナウイルスが猛威を振るい出した2020年の8月、大阪府の吉村洋文知事と大阪市の松井一郎市長が会見を開き、「ポビドンヨード」を含んだうがい薬が、新型コロナウイルス感染防止に一定の効果があると発表した。分かりやすく言えば、イソジンのうがい薬がコロナに効くというもの。話を持ち込んだのは、大阪府立病院機構「大阪はびきの医療センター」の松山晃文次世代創薬創生センター長だった。
「ウソみたいな本当の話をさせていただく」で始まった吉村氏の会見の模様は、繰り返しテレビでも映し出され、店頭には「うがい薬完売」の張り紙が出されるほど期待を集めた。
ところが、実際に実証調査されたのは41例しかなく論文発表もなし。十分な検証はなされておらず、大阪はびきの医療センターによる臨床研究の審査すら終わっていなかったことが分かって吉村氏と松井氏は非難を浴びる事態となった。うまい話に飛びつく軽率さには呆れるしかない。
当時、ポビドンヨードが品薄になった状況を重く見た大阪府歯科保険医協会は、“大阪府知事の「うがい薬に新型コロナウイルスの効果確認」会見 医療機関と府民を混乱に陥れたことを真摯に受け止めよ”という激しいタイトルの抗議文を公表していた。
■消えた「大阪発コロナワクチン」
大見得を切ったはいいが、頓挫して沈黙という事例がもう一つ。吉村知事は2020年4月、会見で「日本初、大阪産コロナワクチン」「今年春から秋には国産ワクチンとして接種」と誇らしげに語り、「アンジェス」というワクチン開発を進めていた創薬ベンチャー企業の名前まで出して、大々的にPRした。
当時大阪府と大阪市は、アンジェス及び新型コロナウイルスのワクチンを共同研究している大阪大学と<新型コロナウイルス感染症にかかる予防ワクチン・治療薬等の研究開発に係る連携に関する協定>と題した協定を締結。同年5月の記者会見では、パナソニックから新型コロナウイルスのワクチン開発に大阪府に寄付された2億円のうち、1億5千万円を大阪大学に割り当てたことを公表し、「まず大阪大学においては、DNAワクチンの開発を今進めています。これは7月に現実に、動物実験はやっていますから、7月からは現実に治験として人に打つ、そういったことを開始していく予定です。10月には対象者を拡大した治験というのもやっていく予定です」と発表していた。
さらに、同年6月の会見ではより踏み込んで、「日本産、そして大阪産の新型コロナのワクチンの開発をこの間進めてまいりましたが、6月30日、今月末に人への投与、治験を実施いたします。これは全国で初になると思います」「今、大阪大学の森下教授が中心になって進められているワクチンです。これはDNAワクチンと申しまして、そのDNAを組み込んだワクチン、非常に安全な部類に入ります」とぶち上げていた。
期待を持たせた大阪発のコロナワクチンだったが、2021年11月、アンジェスは実施した治験で効果が得られていないことを公表。22年9月には、正式に開発中止を決める。
治験データなどのしっかりした裏付けもとらぬまま、胸を張って「大阪発コロナワクチン」を宣伝した吉村氏は、現在に至るまで何の責任もとっていない。
■「公金還流」は以前から
今回、定数削減で大騒ぎした維新には、企業団体献金の廃止先送りとは別に、ごまかさなければならない別の話があった。共産党の機関紙「新聞赤旗」のスクープによって、藤田文武共同代表ら複数の所属議員に浮上した、「公金還流」に関する疑惑である。大手メディアの後ろ向きな姿勢もあって鎮静化しそうな状況だが、実はこの公金還流、維新の体質やこれまでの政治資金処理の手法に由来している可能性がある。
日本維新の会の前身は、2012年に橋下徹氏や松井一郎氏によって設立された地域政党「大阪維新の会」。他党との合併、分裂といった紆余曲折を経て14年に「維新の党」を結成。15年には東と西に分かれる形で党内対立が表面化し、分党という事態に発展する。こうして誕生したのが、西組が新たに立ち上げた「おおさか維新の会」である。
その際、橋下氏らは「経費を除いた政党交付金の国庫返納」を公言していたが(*下の画像参照)、15年12月に党所属議員の政党支部に交付された政党助成金のうち、おおさか維新に参加した議員らの支部が受け取った交付金の残額が、国に返納されることなく議員側に還流していたことが分かっている。

2015年に維新の党に支給された政党交付金は26億6,000万円。4月、7月、10月、12月の4回に分けて、同党の口座に振り込まれたが、分裂騒ぎの影響で銀行側が維新の党の銀行口座を凍結。カネの出し入れが不可能となり、所属議員の政党支部に交付金の振り込みが行われない事態となっていた。
同年12月「維新の党の将来的な解党」「人件費など党運営に必要な経費を除いた政党交付金の国庫返納」などで東西が合意。これを受けて同月18日、維新の党の各議員の支部口座に、政党交付金500万円が振り込まれる。
東側は、使い切れなかった交付金を年末までに政党支部の基金口座に移動することで翌年の活動費に回したが、おおさか維新組は、残ったカネを基金口座に移動させることが出来ない。党を離れる以上、維新の党の支部を解散する必要があり、年内に清算する必要があったからだ。そうした経緯から、おおさか組の使い残し分は当然国庫に返納されるものと見られていたが、この主張は守られなかった。
師走の18日に振り込まれたカネを年末までに使い切るのはさすがに困難で、余剰金が発生。おおさか組は、そのカネをいったん別の財布に移して、再び各議員の財布に戻していたのである。
ロンダリングにあたる手口はこうだ。まず、「なんば維新」(所在地は「おおさか維新の会」本部と同じ)という政治団体を新たに作り、その団体に各議員の支部で使い切れなかった交付金を寄附させる。次に、「維新の党」を離れ「おおさか維新の会」に参加した各議員の新設支部に、年を超えてから寄附の形で返すというもの。「なんば維新」は、松井一郎氏の秘書だった人物を代表に、2015年12月に全国団体として設立。ロンダリング総額は約2億4,300万円にのぼったが、役割を終えた「なんば維新」は、おおさか組の各支部に対する最後の寄附を行った次の日の2016年3月10日に解散していた。維新内の「公金還流」は、この時期に始まっていたということだ。規範意識を欠く維新は、公金還流を悪いことだと思っていないのだろう。
■余談ながら……
ちなみに、吉村知事が連呼してきた「センターピン」というのはボウリングの用語集に載っていない。ボウリングでは一番前に立っているピンをヘッドピンあるいは一番ピンと呼んでおり、ボウリング愛好者が「センターピンを狙え」などと言うことは、まずないという。言葉だけを先行させて注目を集めようとするのが吉村流だが、ボウリングのボールはどのピンにも当たらず、ガターとなった。こんな政党、まっぴらごめんだ。















