田川消防署「香春分遣所」廃止で香春町・下田川地区の住民に“命の危機”|汚れた土着権力(6)
田川市・郡8市町村の消防行政を司る「福岡県田川地区消防組合」(管理者:永原譲二大任町長)が進める「田川地区消防署 大任分署」の新設によって現在ある「香春分遣所」が廃止することに伴い、香春町や隣接する下田川地区(福智町、糸田町)に暮らす住民の生命・財産が危険にさらされる可能性が高くなることが分かった。
救急や消防の地域バランスがどうなるかシミュレートせずに消防施設の廃止・新設を決めた組合の責任が厳しく問われる事態。計画自体が永原氏周辺の「利権」と化しており、組合を構成する自治体の首長や議員らの見識が問われそうだ。

■救急車到着まで「プラス5~6分」が意味するのは・・・
命にかかわる急病やケガ、火事に対応する“救急出動”に求められるのは、現場到着までの時間や医療施設への搬送時間をいかに短縮するかという課題だ。
とりわけ、人の命を救うための救急搬送が1分1秒を争うのは常識。脳梗塞、心筋梗塞などの疾病はもちろん、大量の出血を伴う病気やケガの救命も時間との勝負になる。低体重出生の場合では「30分が人生を決める」とも言われており、救急搬送に要する時間がいかに重要か分かる。
119 番通報を受けてから救急車が現場に到着するまでに要する時間の平均は約10分。これは消防施設と現場の距離によって大きく変わる。距離が遠ければ到着までの時間がかかるのは自明の理。命の危険が増すということを意味する。
そうした意味で、田川地区消防組合が香春分遣所の廃止とそれに替わる大任分署の新設を決めたことは、香春町や隣接する下田川地区(福智町、糸田町)住民の生命や財産を軽視した結果と断ぜざるを得ない。
まず、下に田川市・郡にある消防施設――消防本署・金田分署・川崎分署・添田分署・香春分遣所――と大任分署予定地の位置を示す。

救急車の配置基準は、総務省消防庁の「消防力の整備指針」に基づき、市町村の人口に応じて算定されている。人口10万以下なら2万人に1台だ。福智町の人口は20,609人、糸田町が約8,300人、香春町は約9,800人で計約39,000人。3町をひとつの自治体と考えるなら、この地域の救急車はもう1台あってもいい。
ところが、香春分遣所の廃止によって、現在ある救急対応の体制のバランスが崩壊する。下の図に示した通り、同地域の救急車が福智町にある金田分署の1台だけになるからだ。3町で起きる病気やケガへの対応を、1台で賄わなければならないケースが出てくるということだ。

一方、田川市、川崎町、上田川地区(大任町、赤村、添田町)には、田川消防の本署、川崎分署、添田分署に加え大任分署まで設置されるため、救急車は5台(本署の2台のうち1台は予備車)が集中する形となる。明らかにアンバランス。こうした事態になることは容易に想像できたはずだが、田川地区消防組合の議会で議論された形跡はない。田川市郡の首長や議員たちが、組合管理者として権勢をふるう永原譲二大任町長の方針に、唯々諾々と従った結果だ。
現在の香春分遣所から新設予定の大任分署までの車での所要時間は約6分。救急車だと多少早くなるにしても5分はかかるというのが関係者の見方だ。それが何を意味するのか――。
香春分遣所から5分で行けたものが、大任分署からだと最低でもプラス5分余計にかかるようになることは子供でも解かる。つまり、「5分」だった救急車の到着までの時間が「10分」になるということだ。これは、香春分遣所のままなら救えたはずの命を、“時間”が障害となって救えずに終わる可能性が高くなるということを意味している。つまりは人命軽視ということ。香春町を中心とした地域の住民は、町や組合に対して抗議の声を上げるべきだ。
消防組合は、分遣所廃止と大任分署新設によってどのような影響が出るのかという“シミュレーション”を行っていない可能性がある。行っていれば、香春町分遣所を廃止し、離れた大任町に分署を整備するという愚かなマネはできなかったはず。仮にシミュレーションを行っておきながらこうした愚策を進めたというのなら、消防組合の管理者である永原大任町長や香春町の鶴我繁和町長は、将来重い十字架を背負うことになる。
(中願寺純則)















