【2025参院選】自民党・第2次紀州戦争の行方

「昨年に続く第2次紀州戦争。二階王国の土壇場だ」と話すのは自民党旧二階派の幹部。昨年10月の衆議院選挙で保守分裂となった和歌山2区だが、今年夏の参議院選挙でも自民党が割れることが決定的だ。

◆   ◆   ◆

和歌山2区といえば、自民党の幹事長で歴代最長の最長在任記録1,885日を誇った二階俊博元幹事長の「王国」だった。「国政から地方選挙の候補者まで、大半が二階氏の息がかかった者だった」とある自民党の地方議員が振り返る。しかし、二階氏は自民党のパーティー券裏金事件で派閥の会計責任者が有罪判決を受けるなどして政界引退に追い込まれ、後継として二階氏の三男・伸康氏が出馬。そこへ、自民党の裏金事件で離党勧告を受けた世耕弘成氏が参議院から鞍替え出馬し、紀州戦争に勝利した。当選直後、「この結果には満足している」と世耕氏は豪語。伸康氏は比例復活にも届かないほどの「惨敗」を喫した。

伸康氏は和歌山2区の支部長として次の衆議院選挙に照準を合わせているとみられていたが、参議院和歌山県選挙区公認候補の公募に名乗りをあげ、望月良男元有田市長を制して夏の決戦に臨むことになった。

その際伸康氏と望月氏は、自民党の和歌山県議によれば「どちらが選ばれても、自民党候補の勝利に尽力する」という内容の誓約書を提出。望月氏がその誓約を反故にして無所属での出馬を決めたため、「第二次紀州戦争が勃発した」と言われている。

望月氏のバックに控えるのは世耕氏だ。4月3日に記者会見し、無所属での出馬を発表した望月氏は、「世耕氏に相談? 申し上げにくいが普段からコミュニケーションはとっている。相談に乗っていただくこともある」と述べ、世耕氏とのつながりを隠そうともしなかった。

また「保守分裂」や「誓約書」については、「保守分裂、党を割るという懸念の声も胸が痛いほど承知している。ただ、もともと県連から参議院選挙の公募の話が出たときは、(二階氏を含み)誰もいなかったはず。そこで出馬の思いを強くした」、「誓約書にサインをしたのは事実。だから随分と熟慮しました。最終的に心に火が付いたのは、国や県のためにこれまで培った経験を活かしたいという思いがあったから。そして支援者から『無所属でも出てほしい』という声を受けて決断をした」と語っている。

予想されたこととはいえ、伸康氏の陣営からはブーイングの嵐だ。前出の旧二階派幹部は不満げにこう話す。

「誓約書に署名したのに、それを守らずに保守分裂――。望月のバックに世耕さんがいることは間違いないところだ。応援している地方議員も、世耕さんに近い人ばかり。保守分裂となれば、お互いが票を食い合って野党を利することもあり得る。望月の出馬はまさに反党行為。そこに乗っているのが世耕さんだろう。そこまでして二階家を蹴落としたいのか。世耕さんも二階元幹事長には世話になってきたはずで、人としてどうなのかという問題。今からでも伸康氏に一本化すべきだ」

和歌山県連の投票では伸康氏が86票、望月氏が46票という大差だった。保守分裂となっても伸康氏が勝つという見方が強いはず。しかし、地元では「望月氏が伸康氏を大きくリード」という見立てが圧倒的だという。

また、望月陣営は「世耕さんの応援を求めない」としていたが、今年3月に行われた和歌山県議のパーティーでは「和歌山の可能性」というテーマで、望月氏が司会。そこに世耕氏が現れ、県議とのパネルディスカッションに参加するという一幕があった。県議のSNSには、世耕氏や望月氏と一緒のスリーショット写真がアップされている。キーマンはやはり世耕氏なのだ。

「紀州戦争なんだから、選挙になれば世耕さんが先頭で応援に立つでしょう。ここで、世耕さんが望月を使って参議院選に勝てば自民党への復党に大きく近づく。伸康氏は衆議院選挙、参議院選挙と2度も続けて負ければ、国政挑戦の目はなくなるでしょう。参議院選挙の望月も、ある意味世耕氏が復権して二階王国をせん滅するための道具かもしれません。伸康氏にも頑張ってほしいが、女性スキャンダルが週刊誌にすっぱ抜かれたことが響いている。保守分裂が世耕さんと伸康氏だけならいいが、もう一人、会社経営の女性が出馬する。保守が3つに分裂しそうで、よけいに面倒だ」(前出の旧二階派幹部)

参議院選挙には参政党の林元政子氏、立憲民主党の村上賀厚氏がすでに出馬表明。そこへ、無所属で不動産会社を経営する末吉亜矢氏も出るという。末吉氏の出馬の理由が、大臣経験もある鶴保庸介参議院議員との近さだ。

「地元では鶴保氏と末吉氏の近過ぎる関係は有名だ。以前、鶴保氏の事務所が末吉氏所有の物件に入居していたことでもよくわかる」(地元事情通)

末吉氏のSNSには《昨日は、つるほ庸介候補、和歌山市内をまわらせていただきました。また、夜は、四ヶ郷小学校にて、個人演説会を開催させていただきました。皆様、有難うございました》と鶴保氏の選挙を熱心に応援する内容もある。

「保守票が、伸康さんと望月さんに加えて末吉氏にも分散されれば、まったく先が読めなくなる。ただ、望月さんが一歩リードという声が多いのは確かだ」(前出の地元事情通)

3分裂になりそうな紀州戦争の行方はいかに……。

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