万博の入場者数アップに躍起となる維新の会

「暑い!」「歩いてばかりで疲れる!」――ゴールデンウイークに、こんな悲鳴をあげていたのは大阪・関西万博を訪れていた子どもたち。平日にあたる4月28日、30日、5月1日、、2日は遠足や校外学習、修学旅行などで万博にやってくる子どもたちが目立ったが、評判はよくなかった。万博を誘致した日本維新の会は、入場者数アップに躍起となっているが……。

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「朝10時過ぎに入場して、帰りは次の日の授業があるので午後4時までには学校に帰りたいしたい。万博に滞在できるのはせいぜい4時間か5時間。そのうち1時間はお昼ごはんで休憩。入場ゲートとパビリオンで並ばされ、何のために来たのか、よくわからなかった」――そう感想を漏らすのは、大阪市内の小学生を引率してきたA先生だ。

大阪府では府内の小学校、中学校、高校などに在学している子どもたちを無料招待する万博の入場券を配布している上、学校単位の招待事業も実施しており、A先生の小学校はその一環で万博にやってきたという。

国際博覧会協会では、毎日、来場者数を発表しており開幕日は14万6千人だったという。しかし、それはAD証というパスを保有している協会やパビリオン関係者、マスコミなども含めた数で、AD証組を除くと12万4千人という数字になる。

AD証を保有している人は、万博で何らかの業務に従事しているということ。入場券を買う必要がない。公表されている入場者数は、まさに「水増し」されたものなのだ。

これに対し、国際博覧会協会の副会長も兼務する大阪府の吉村洋文知事は4月30日、「一般来場者が何人、AD証が何人と発表しているので水増しにはあたらない」と反論した。

4月23日、国際博覧会協会は《大阪・関西万博来場者が100万人を超えました!》として、100万人目の来場者に記念品などが手渡されるセレモニーを実施した。だがその100万という数字は、AD証の来場者数も含め“盛った”ものだった。

ハンターが取材した4月末から5月初め、多い日で13万人超、少ない日は9万人台の入場者数だった。AD証の来場者数は1日平均で1万8千人前後とされ、連日15%から20%ほど「水増し」されている計算だ。

「万博が成功したと評価されるには、とにかく来場者数がすべて。目標値をクリアするのが至上命題ですよ」と話すのは大阪市の幹部。万博の来場者目標は184日間の開催で2,820万人。1日平均で15万人の来場者が必要になるが、この原稿の締め切り時点で「水増し」分を合わせても15万人を超えた日はない。

吉村知事は収支黒字の分岐点として「1,800万枚の入場券販売」をあげているが、「来場者1,800万人」で計算すると平均して1日に約10万人超が必要。だが、4月の平日で水増し分を差し引くと10万人に届いた日は4月28日のみだった。前出の府幹部がこうぼやく。

「赤字なら税金から補填しなければならなくなる。来場者数を伸ばして黒字にしたい。しかし、市議会とか府議会の維新の会所属議員は、とにかく数を増やせ、増やせとプレッシャーをかけてくるんです。入場券は配るものではなく、売るものでしょうに」

万博の誘致と成功は、2023年春の大阪府知事・大阪市長選などの統一地方選で盛り込まれた維新の会の政策だ。ある大阪維新の会の議員は、うんざりした表情で現状をこう話す。

「維新のキャッチコピーは身を切る改革ですが、万博の来場者数が目標に届かず、赤字に終われば、とんだ笑いものです。維新の地方議員には上から『とにかく万博に行かせろ』と大号令がかかっています。私も添乗員になったつもりで後援会や町内会ですでに2度、万博に行っています」

入場者確保に悪戦苦闘する万博関係者の間で重要なのが、地域の学校への「セールス」だという。だが、冒頭で紹介したように、万博会場の中の評判は良くない。雨よけなどが少ない不十分な設備のため、晴れた日は暑さ、雨の日なら寒さという問題が解決していないからだ。さらに、工事中に会場内でガス爆発が起こり、開幕直後には、地下鉄がストップし大混乱とになるというアクシデントもあった。そうしたせいで、学校単位の招待事業に参加を見合わせる学校が続出。大阪府吹田市の市立小中学校はすべて不参加となっている。維新が市長と市議会の最大会派を握る堺市の市立小中学校でさえ、8割近くが参加しない。

学校単位の参加はゼロという大阪府交野市の山本景市長は《学校単位で大阪関西万博に行く必要はありません。大阪府は“無料招待”と言っていますが、入場券より高くなるバス代は払ってくれません》としており、こちらも学校単位の参加はゼロだという。前出の維新の地方議員が本音を漏らす。

「万博の動員が目標を下回り赤字になったら、維新は公約違反だと追及されるでしょう。すっかり支持率が低下している維新にとって、万博の失敗は政治的な終わりを意味する。それもあってAD証を使った入場者水増しや、学校単位の無料招待をセールスするなど、なんでもいいから来場者数アップに必死になっている。私も地域の町内会や学校の先生と顔を合わせるたび、『ぜひ万博へ』とセールスしています。これが議員の仕事なのかと思うと、つらいですね」

冒頭のA先生は「大半の子どもたちは、家族で万博に行くと言っています。そのほうがはるかにゆっくり楽しめる。学校単位の万博なんて、まさに苦行。維新が一生懸命に万博に行けとやっているのは地元でも有名ですが、維新を助けるために子どもが利用されているようで、悲しいですね」と肩を落とす。

政治のためなら子どもまで動員する維新政治――。これで支持率が上がるはずはない。

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