ヒグマ駆除巡り北海道に苦情殺到|感情的意見、現役ハンターは「無視すべき」

 北海道内で行なわれたヒグマの駆除をめぐって行政の担当課に苦情が殺到する事態が起き、地元報道などで繰り返し話題となっている。道が公表した意見の例を見ると「さっさと駆除しろ」といった声と「クマを殺すな」という苦情の両極端な意見が目立ち、道内で狩猟免許を持つハンターの1人は「どちらもヒステリック。無視すべき」と、地元行政に毅然とした対応を求めている。

 ◆   ◆   ◆

 北海道の担当課にヒグマ関連の苦情が増え始めたのは、7月中旬に道南の檜山管内福島町で起きた事件がきっかけ。新聞配達の男性が住宅街でヒグマに襲われ亡くなるという痛ましい事故で、加害個体とみられるクマはのちに駆除された。道の鈴木直道知事は同25日の定例記者会見でこの話題に触れ、現地へのヒグマ注意報発出などの考えを示しつつ「ヒグマを殺すのは可哀想だからやめて欲しいという多数の連絡をいただいている」と、担当課へ苦情が殺到している事態を明かすことになった( ⇒こちら)。

《2時間以上、長時間に及んで、ご連絡を多数いただいておりまして、職員が対応に大変な時間を拘束されている状況であります》

《北海道民から電話が来るというよりは、むしろ道外の方からじゃんじゃん電話が来て、しかも1時間、2時間と》

 苦情などに対応した担当課は8月に入ってから、地元報道の求めに応じて実際に届いた意見の一部公表に踏み切っている。筆者も同中旬になってその報道資料を入手した。電話やメールで寄せられた多数の声の中から主要なものを抜粋したメモにはまず、以下のような意見が採録されていた。

・7月12日・メール ――お前らがクマの駆除をしっかりしないからまた人が殺されたじゃねーかよ/日本で一番危険害獣のクマとの共生なんてできないんだっての/お前らどんだけ馬鹿なんだ? 絶滅させろって/種を残したいなら適当に檻の中で管理しろよ/いい加減にしろって無能集団が!

・7月12日・メール ――ヒグマ警報とかそんな意味のないことしないでさっさとクマを駆除しなよ/ちゃんと仕事してください/ゾーニングとかそんなことは意味がないので徹底的に駆除しなよ/とにかく駆除駆除駆除

・7月12日・メール ――ヒグマを絶滅させなさい/批判があったって大丈夫/全国のクマ愛好家のご機嫌ばっかとってんじゃないよ/仕事しないなら退職しなさいよ!

・7月14日・電話 ――駆除を進めないから人身事故が起きた/北海道からヒグマを根絶すべき

・7月14日・電話 ――地元が福島町/安心して帰省できない/不安である/ヒグマをすべて駆除し、全滅させて欲しい

 福島町の事件の発生直後に記録されていたのが、上のような駆除対応の遅れを批判する声。加害個体の駆除方針が伝えられると、これが一転、以下のような「クマを殺すな」などの抗議が相継ぐことになる。

・7月16日・電話 ――クマ殺し/人間が駆除されるべき(一方的に意見を述べられ電話が切られる)

・7月18日・電話 ――なんでもかんでもクマを殺すな/クマを山に返すべきだ/里山を復活させるべきだ

・7月18日・電話 ――動物たちは意味があって生きている/麻酔で眠らせて動物園に送り、その姿に癒やされるべき/クマを殺さないで欲しい

・7月22日・電話 ――クマの命も大切だ/人を襲ったクマだとか、いい加減なことを言うな

・7月22日・電話 ――なんでもかんでもクマを殺すべきではない/可哀想だ/麻酔銃を使うなどもっと方法はあるはずだ/狩猟により動物を殺せる世の中が間違っている

・7月25日・電話 ――クマを殺すのは可哀想/動物の命を何だと思っているのか/殺すのではなく、山へ返せばよい(同様の意見を繰り返し主張)

 それぞれの発言者の属性は明かされていないが、内容の限りでは駆除推進の声は地元住民から、駆除反対の声はおもに北海道外から届いたと推察できる。こうした両極端な声について、北海道内の猟友会支部で部会長を務める現役ハンターの男性(73)は「どちらもヒステリック」と評し、いずれの意見も耳を傾けるに値しないと言い切る。

 ともに現実を無視した感情的な意見で、無視すべきです。行政批判については、ヒグマ対応のフローチャートがうまく機能していないことの現われでしょう

 そう指摘する男性は、行政自らがより積極的な情報発信に努めることも大切と強調する。

 一番いいのは、現状を素速く、記者会見のような形で行政自ら伝えることでは。津波や台風のように『早く、的確に』が原則です。その上で毅然とした対応をとることが大事。曖昧な対応は時に責任逃がれと見なされることになりかねません

 道内では、先の福島町の一件から1カ月余りを経た8月中旬にもオホーツク管内斜里町で登山者の男性がヒグマに襲われ亡くなる事件が起きている。福島町と同じ道南に位置する檜山管内の江差町や厚沢部町などでも作物の被害などが相継いでおり、本稿で引用したような苦情の多寡にかかわらず、各地で問題を起こしているヒグマの早急な捕獲・駆除が待たれているのが現状だ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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