緊急銃猟で警察庁が都道府県警通達 ハンターへの行政処分「適当でない」

鳥獣保護法の一部改正で9月1日にスタートした緊急銃猟について、警察庁が各地の警察本部などへ通達を出し、ヒグマなど有害鳥獣の駆除を引き受けるハンターへの行政処分を不適当とする考えを示していたことがわかった。緊急銃猟の実施主体は自治体の長とされており、現場で事故が生じた場合の被害補償の責任も自治体が負うことになるため、駆除を担うハンターは原則として行政処分の対象にすべきでないとしている。

◆   ◆   ◆

通達は8月22日付で、警察庁保安課などが警視庁(東京都警)と各道府県警察本部へ発出。その後の同28日には警察庁の公式サイト上で全文が公開された(⇒参考)。ハンターの免責に言及しているのは、緊急銃猟の発砲要件を確認する部分のうち「留意事項」と題された項目。市街地などでの発砲を認める緊急銃猟の主体が市町村の長であることを確認した上で、こう記している。

《市町村長の委託を受けて緊急銃猟を実施する者が損失の補償を行うことは適当ではない》

通達にいう「損失」とは、発砲時に跳弾などの事故が起きた場合に生じる建物などへの被害のこと。それらの被害の補償責任はハンターではなく市町村が負うとの考え方だ。これをふまえ、市町村の委託で有害鳥獣の駆除にあたるハンターの免責が以下のように明記されることになった(引用文中の「銃刀法第10条第3項違反による行政処分」とは、銃の所持に関わる行政処分のこと)。

《鉄砲等の所持許可者がその許可銃砲等により行った発射が緊急銃猟に該当する場合には、緊急銃猟の結果として、人の財産に危害が生じた場合であっても、当該所持許可者に対し、原則として、銃刀法第10条第3項違反により行政処分を行うことは適当ではない》

改正鳥獣法の緊急銃猟をめぐっては、北海道内各地でヒグマなどの駆除を引き受けている北海道猟友会が改正法施行直前の8月下旬、発砲拒否も想定した通知を全道の支部へ発出したところだ(既報1)。通知の背景には、駆除を引き受けるハンターの責任の範囲が明確化されていなかった事情があった。会として事前に問い合わせを寄せていた駆除従事者の免責について、環境省からは「人身事故などが発生した場合は行政処分の対象になる」(大意)との回答があったという。またクマの反撃などによるハンター自身の被害への補償なども、駆除を引き受けるか否かの「重要な要因」になると考えられた。

今回の警察庁通達では、少なくとも銃所持許可に関わる行政処分が適切でないとの警察の考えは確認できたことになる。だが既報2の通り、その警察(公安委員会)は今まさにヒグマ駆除を担った猟友会員の銃所持をめぐる裁判でハンター側と対立しており、最高裁に持ち込まれている争いでは所持許可の取り消しを適法だったとする主張を維持している。通達で「人の財産に危害が生じた場合であっても」ハンターの処分は適当ではないと明記している一方で、裁判では実際に何の「危害」も生んでいない発砲行為に「建物に当たるおそれがあった」などと言い募っているのだ。

裁判の一審原告・池上治男さん(76)のもとには今も銃が戻らないまま。地元・砂川市では今夏とりわけクマの目撃情報が相継ぎ、北海道は同市一円を対象とした「ヒグマ注意報」の発令期間を2度にわたって延長せざるを得なくなったが(⇒こちら )、現地の猟友会支部では裁判の影響で銃による駆除を自粛しており、緊急銃猟どころか従来の警察官職務執行法に基づく発砲もできていない状況だ。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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