8月下旬とも、9月の臨時国会召集前ともいわれている内閣改造と党役員人事。昨年行われた内閣改造での目玉は、河野太郎デジタル相と高市早苗経済安全保障相だったが、その二人の去就に注目が集まっている。
■評価ガタ落ちの河野氏
岸田文雄首相が打ち出したデジタル田園都市構想を河野氏が、ウクライナ戦争や北朝鮮のミサイル発射、台湾有事問題などを高市氏が担当し、それぞれが手腕を発揮するものと大きな期待が寄せられていた。
しかし、結果は無残なもの。保険証として使えるマイナンバーカードだが、他人の情報が表示され使用できなくなるなどトラブル続出。河野氏の失言・暴言が騒動に拍車をかけた。
マイナンバーカードを取得し保険証と紐づけすると「マイナポイント」として加算される仕組みだが、ポイントが別人に加算されるなど制度そのものの信頼が揺らいでいる。
カードの自主返納が相次ぎ、連日のように釈明に追われた河野氏は、「マイナンバーという名前が正しく理解されていない。将来的に変更も検討」と発言。松野博一官房長官が「政府として名称変更を検討していません」と否定し、閣内不一致を露呈した。
よせばいいのに「マイナンバー制度は民主党政権がつくった制度」と反論した河野氏だったが、マイナンバー制度が法制化されたのは2013年。第2次安倍政権の時だった。
新型コロナウイルスの感が拡大する中、菅義偉政権のもと、クチン接種の担当大臣として一定の功績があったとされる河野氏。同氏が所属する麻生派のある国会議員がこう話す。
「波に乗っている時はいいが、脱線すると修正が効かない。2021年の自民党総裁選でも、序盤は河野氏圧勝かと思われていた。しかし、最後は3位に転落して惨敗。危なっかしさが、デジタル相でも証明された。麻生先生も『まだまだダメだ』と言っているんです」
■高市氏は過去の人?
もう一人の目玉、高市氏も今年3月に立憲民主党の小西洋之参議院議員が入手した放送法の公文書を巡って国会を紛糾させた。
官邸と当時の総務相だった高市氏との2014年から15年にかけてのやりとりが明るみに出、放送法で定める「政治的公平」に反するものではないかと大きな波紋を呼んだことは記憶に新しい。
公表された文書によれば、高市氏が「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある? どの番組も『極端』な印象」、「関西の朝日放送は維新一色」、「民放相手に徹底抗戦するか。TBSとテレビ朝日よね」などと発言したことが記録されていた。
形勢不利とみたのか、高市氏は「総務省からそのようなレクはなかった」、「これがねつ造でなければ、議員辞職」などと反論し、役人が作成した文書が「公文書」であることを否定。しかし、その後総務省が「公文書」であることを実質的に認めたことで、高市氏は窮地に追い込まれ、ついには国会で高市氏の罷免を求める声まで上がった。
悪いことは重なるもので、高市氏が県連会長を務める4月の奈良県知事選では、「腹心」の総務官僚を擁立しながら、保守一本化の調整に失敗して惨敗。大阪以外ではじめて、日本維新の会に知事の座を奪われてしまった。自民党の大臣経験者は、「高市、河野、ともに総裁選で岸田首相と争い2位と3位になったこともあって入閣となった。だが目玉の2人が、岸田政権にダメージを与える言動が続いている。とても再任は無理だ」とした上で、こう話す。
「高市が入閣できたのは、安倍晋三元総理が総裁選で推したことが大きい。安倍元総理という最大の実力者がバックに控えていたからだ。しかし、安倍さんはこの世から去り、岸田総理は高市に配慮する必要がなくなった。奈良県知事選で敗れて維新を勢いづかせてしまったことも大きなマイナス。岸田政権による解散総選挙の戦略を狂わせてしまった。高市はもう、過去の人だ。
一方の河野は、1点突破は得意だが、逆目に出てしまうととんでもない方向に振れてしまうラグビーボール。どこへいってしまうかわからない。2人とも再任はないのではないか。現状では、来年の総裁選に2人が出馬することもあり得ない。安倍元首相がバックにいない高市では誰も推薦人にならないし、河野では、麻生派もまとまらない。岸田総理は、ライバルの自爆で高笑いだろう」
内閣改造と党役員人事は政権が求心力を高める重要な手段だ。だが、次の改造では入閣の最有力とされた木原誠二官房副長官がスキャンダルにまみれ「更迭」が必至。党内からは、「地味なイメージの岸田首相は、どうしても発信力のある人物を起用したいはず。閣外に去った小泉進次郎元環境相や野田聖子元総務相らがあがってくるんじゃないのか」という声もある。
かわりばえのしないメンツに落ち着くのか、それともサプライズか?内閣改造の行方に注目が集まる。