
今月25日に投開票される沖縄県名護市の市長選挙を取材した。現職で3期目を目指す渡具知武豊氏と新人の元市議・翁長久美子氏による事実上の一騎打ちとなっているが、コロナ禍の前回選挙は別として、以前のような熱気は感じない。
同市辺野古で新基地建設を進める政府側の支援を受ける現職に対し、移設反対の姿勢を崩さない「オール沖縄」が推す翁長氏。突然の衆議院解散で政局が揺れる中とはいえ、本土メディアがかつてのように名護市長選を大きく取り上げることはない。極右政権によって沖縄が置き去りにされる構図は、まさに戦前と同じ。高市早苗の眼中に沖縄はないのだろう。
■競り合いを制するのは・・・
一部報道によれば、渡具知氏と翁長氏が競り合う状況で、今は同県内で行われる選挙の最終盤を指す「3日攻防」の真っ最中だ。


渡具知氏を支持しているのは自民、維新、国民、公明。聞いただけで胸糞が悪くなる政党ばかりだ。一方の翁長氏は、県民の声を代弁してきた「オール沖縄」が支える。正直、個人的には女性初の名護市長誕生を祈っている。
■変わりつつある辺野古集落
残念なことだが、新基地建設が強行される現状を受け、前回の市長選から「辺野古」を争点化することが難しくなっているのは事実だ。市長選のたびに訪れる辺野古集落は、確実に変化を見せており、米軍基地が繁栄をもたらした頃のライブハウスやバーの廃屋は減り、新しい建物や店舗が増えている。政府から、交付金という名のエサがばら撒かれている証左といえるのではないだろうか。
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■埋立て進むジュゴンの海
その辺野古の海だが、かつての姿はなくなった。下の写真は2014年に辺野古海岸から見た海、次が同じ場所からの海の景色。“ジュゴンが生息していた海は、二度と元に戻らない”という現実を見せつけられる。



新基地建設によって埋め立てられる大浦湾では、おそらく効果がないとみられる軟弱地盤へのくい打ち作業が再開されている。




工事車両が出入りする米軍基地「キャンプ・シュワブ」の入り口は、依然として異様な警備態勢が敷かれており、車を徐行させて通るだけでも警察官から睨まれる。いつ完成するのか分からない米軍の新基地建設に莫大な税金を投入し、その工事を進めるため、さらに巨額の警備費を米軍のために使うという滑稽な話だ。念願の総理大臣に就任した戦争好きな高市氏は、そんな沖縄の現状について何も語ろうとしてこなかった。

■沖縄に冷淡な裏金組織「旧安倍派」
自民党内で高市氏を支えているのは、裏金組織である旧安倍派の議員たち。彼女自身、依然は旧安倍派に所属していた。旧安倍派の源流を遡れば、岸信介元首相が率いた「岸派」があり、それを継いだのが福田赳夫元首相の旧福田派=「清和会」だ。
清和会系の議員は沖縄に極めて冷淡で、同派をバックに長期政権を敷いた小泉純一郎氏をはじめ、歴代の清和会系総理は沖縄の声を一顧だにしない。
2004年8月、宜野湾市の沖縄国際大学構内に、米軍普天間基地所属のヘリコプターが墜落するという事件が起きた。民間人に被害はなかったものの、広範囲にヘリコプターの部品が落下、沖縄県民の怒りに火が付いた。この時、首相就任から3年目を迎えていた小泉は、稲嶺恵一沖縄県知事(当時)の面談要請を、“夏休み中”とのふざけた理由で拒否。沖縄県を足蹴にした。06年には辺野古における「V字形飛行場」を含む新基地建設案を閣議決定し、米政府との合意を行ったのも小泉である。
安倍晋三、福田康夫、安倍を官房長官として支えた菅義偉、そして高市早苗――。清和会系の権力者たちは、沖縄を「捨て石」としか見ていない。2019年に行われた辺野古移設の是非を問う県民投票では投票者の7割以上が「反対」したが、当時首相だった安倍は、この民意を無視して移設工事を強行着工した。沖縄に民主主義はない。その象徴が、カネと権力で分断を余儀なくされた名護市である。
■「ひめゆり学徒隊」の史実を歪めた安倍派・西田
右翼政治家の沖縄蔑視は病的だ。そして、少数民族や沖縄を軽んずる姿勢こそが「保守」だという考え方をする政治家は、ほとんどが旧安倍派である。代表的なのが西田昌司参議院議員(京都選挙区)。同氏は昨年、沖縄戦で犠牲になった「ひめゆり学徒隊」の慰霊碑「ひめゆりの塔」の展示内容を巡り、「日本軍が入ってきて、ひめゆり隊が死ぬことになった。アメリカが入ってきて沖縄は解放された。(展示の説明文は)そういう文脈で書いている」などと発言し、世論の猛反発を買った。批判を受けて謝罪に追い込まれたが、「歴史を書き換えた展示内容」とする自説については「事実は事実」として撤回を拒んだままだ。こんな人物を国会に送っているのは京都の有権者。恥ずかしくないのかと問いたい。
名護市長選取材の帰り、改めて「ひめゆりの塔」とひめゆり平和祈念資料館を訪問した。どうみても、展示内容に「歴史の書き換え」など一切ない。学徒隊生き残りの証言集や展示品が語りかけてくるのは、戦争の悲惨さ、残酷さだ。そのひめゆり学徒隊や鉄血勤皇隊など10代の「子供たち」を死地に追いやったのは日本軍であり、当時の日本政府であることを忘れてはなるまい。




■戦争煽る高市氏
「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか」という、とうてい“大義”にはなり得ないふざけた理由で衆院を解散する高市早苗。しかし、点数を付ける前に解散するのだから評価のしようがない。「働いて、働いて、働いて、働いて」――彼女が何をやったかというと、台湾有事発言の悪影響が国内に広がる中、裏金議員の復活を後押しし、自らに浮上した献金疑惑や旧統一教会との関係、さらには連立を組む日本維新の会による国保逃れ事件などに蓋をするため、無理筋の総選挙という選択をしただけだ。
実際に台湾有事が起きた場合、真っ先に戦争と向き合うことになるのは国内にある米軍基地の7割を抱える沖縄。予想される辺野古新基地の完成時期は2033年で、米軍への引き渡しはさらに数年後になるという。だが、軟弱地盤を克服できる保証はなく、完工時期は見込み通りにならないとみられている。本当に新基地ができるかどうかさえ危うい状況ということだ。仮に日本が存立危機事態を迎えても、辺野古新基地が役に立つことはおそらくない。
巨額の交付金で名護市民を黙らせてきた政府自民党。そのトップに立って戦争を煽る高市氏が、沖縄の歴史や県民の思いを理解しているとは思えない。
(中願寺純則)















