北海道・江差看護学院パワハラ訴訟で重要証言|元学院長「退学の道を選ばせる狙いだった」

本サイトで折に触れ報告している北海道・江差町の看護学院のパワーハラスメント問題で(既報)、学生の自殺事案の第三者調査で元学院トップがハラスメントの事実を認める証言をしていたことがわかった。学生の遺族が起こした裁判で、被告の北海道側が新たに提出した書面から証言の事実があきらかになった。当時の聴取に対し、江差の元学院長は「その学生を落として退学の道を選ばせるのが教員の狙いだった」などと証言していた。

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2021年に長期間のパワハラ問題が発覚した道立江差高等看護学院では、同年に始まった第三者調査で複数の教員によるハラスメントが認められることとなった。22年には当初の調査対象になっていなかった自殺事案があきらかになり、別の第三者委員会による事実調査の結果、自殺とハラスメントとの因果関係が認定される結果に。ところがその後、学院設置者である北海道は亡くなった学生の遺族との交渉の過程でこの因果関係を否定、第三者調査の結果を白紙に戻す「手のひら返し」を決め込むことになる。不信感を募らせた遺族が改めて道に賠償を求める裁判を函館地方裁判所に起こしたのは、24年9月のことだった。

裁判は提訴後に2度の口頭弁論が設けられたが、昨年8月に原告の意見陳述が法廷で公開されて以降は非公開の弁論準備手続きが重ねられている。直近では3月中旬に同手続きがあり、同日までに被告の道側が新たな証拠として元学院長の証言を記録した第三者委の聴取書などを提出していたことがわかった。

記録によると、元学院長の聴き取り調査があったのは2022年12月。元学院長は事前に第三者委へ提出していたメモをもとに証言に臨み、パワハラの主犯とされた当時の副学院長らが「退学の道を選ばせる狙いで」亡くなった学生へのハラスメントを続けていた、と証言した。学生の相談相手は同級生らを除いては校務補の男性1人だけで、学院の環境はその人にとって「地獄」だったという。元学院長自身も「強制収容所」「ホロコースト」を連想したといい、亡くなった学生や多くの退学者たちにとって教員たちはナチスの看守に匹敵する存在だったと評した。

第三者聴取での告発を買って出た元学院長は、学生が亡くなった2019年には遺族宅を訪問、トップとして被害を喰い止められなかった悔恨から遺族へ直接謝罪しており、お詫びのメールも送信していたことがわかっている(既報2)。

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この経緯は遺族への取材をもとにハンターなどがすでに報じたところだが、報道を機に元学院長は当時の部下である保健所の職員から「勝手に(謝罪に)行って駄目でしたね」「管理職としていかがなものか」と批難されたという。道の本庁からも「注意」を受けることとなったが、元学院長自身は「自分の中の打算、狡猾、虚弱を排し追悼できてよかった」「遺族の補償・救済に繋がればよいと思った」と、その後も謝罪行為を悔いていない考えを明かしている。

今回こうした事実があきらかになったのは、繰り返しになるが被告の北海道が自ら第三者委の聴取記録を提出したことによる。同記録は原告側にとってパワハラの事実を裏づける重要な証拠となり、言い換えれば被告の道にとってはむしろ不利になる証拠。その開示は遺族側がかねてから強く望んできたことだが、提訴から1年半以上が過ぎてようやくそれが実現した形。道としてはできるだけ今回の証言を隠しておきたかった事情が窺えるところだ。

道は裁判でも一貫してハラスメントの事実を否定しており、今後見込まれる原告側の指摘にどう反論するのかが注目される。次回の日程は5月中旬、やはり非公開の弁論準備として設けられる。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

 

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