南大隅町議会、休眠ホテル関係議案“10対1”否決の背景|直近に「馬毛島」「自衛隊射撃場」で国防への懸念 

本土最南端に位置する鹿児島県南大隅町(石畑博町長)の議会が今年1月、町の執行部が提出したある議案を10対1で否決した。生まれた時から同町住まいという70代の男性が「2005年に根占町と佐多町が合併して南大隅町になりましたが、初代町長の税所(篤朗)さん、次の森田(俊彦)さん、そして今の石畑博町長までの約20年間で、執行部の議案が10対1なんて数で否決されたことは1度もなかった。この町では考えられない話」と語るほど、同町にとっては異例の事態。取材したところ、「国防」絡みの脅威に直面した町の現状が浮かび上がってきた。

■異例の議案否決

下が否決された議案「南大隅町佐多岬ふれあいセンターの指定管理者の指定について議決を求める件」。本土で最も南の端にある佐多岬の町有ホテル「佐多岬ふれあいセンター」(以下、ホテル佐多岬)の運営を担う指定管理者を、東京に本社があるS社とその関連企業に委ねることを求める議案だ。

ホテル佐多岬(別称:ふれあいセンターホテル佐多岬)は、シングル、ツイン、和室など24の客室に展望浴場や宴会場なども備えた町営施設。新型コロナの影響を受け2023年3月末で休館し、それまで運営を担っていた指定管理者は撤退した。

町は施設の利活用を検討していたが、昨年になって新たな指定管理者に名乗り出た東京の不動産関係会社の企画提案を受け、今年1月の議会に前掲の議案を提出した。結果は定数12のところ、10対1で否決。議会として、到底認めることのできない提案内容であると同時に、「国防」と密接に交わる位置にある同町の事情が、S社の進出を許さなかったとみられる。

■指定管理者候補会社のデタラメ運営計画

下は、同町への情報公開請求で入手した資料に記載されている、撤退した指定管理者の時代となる2017年度から2022年度までの宿泊者数と料金収入だ。

2007年度から2017年度までの宿泊客数の推移を記録した別の資料によれば、泊り客のピークは2013年度の3,643人。2017年度2022年度までの6年間で売上額の最高を記録したのは、上掲の表の通り2018年の3,972万円だった。翌19年度に3,779万円を売り上げた後、20年に新型コロナの感染が拡大。客数は1,000人台に落ち、売上高も1,000万円台へと急落していた。20年度から3年間の料金収入は、毎年コロナ前の半分以下だったことが分かる。ちなみに、コロナ前の月平均収入は約300万円程度の計算となる。

一方、東京のS社が町に提出した「事業計画書」には、ホテル休館までの実績を全く無視した驚くべき数字が記載されている。それが下。2025年12月、26年度、27年度、28年度の事業計画書に記された売上見通しである。

S社グループが管理運営を開始する予定だった2025年度の12月だけで、かつての月平均300万円の倍以上となる750万円の売上げ。26年3月までの4か月間で3,000万円という売上げ予測だ。翌26年は月平均910万円を売上げて年間約1億1,016万円、27年が月平均1,500万円で年間1億8,360万円、28年度には月平均が1,800万円まで上がり年間で2億1,600万円を稼ぎ出すという夢物語のような計画となっていた。議案に反対したある議員が、「あり得ない数字。人をばかにしている」と憤るのも無理はない。

もう一点、議会を怒らせた理由の一つが、S社提出のホテル改修費見積り。計3回出された見積り書の金額が、議員や町民の怒りを倍加させた(*下の画像参照)。内訳が非開示になっているため数字の妥当性が検証できないが、ホテルの改修費用であるこことは確か。しかし、毎回違う金額が提出されている理由は判然としない。

いずれにせよ、東京の会社を儲けさせるために、貴重な町の財源を1億円近く投入する形となる案を議員らが認めるはずもなかった。

複数の町議が、議案が提出された際に町の執行部が示した民間の調査会社「東京商工リサーチ」の調査報告書に「評点40点」「取引留意」という記述があったことを記録しており、そうしたマイナス面を無視してまで議決を求めた石畑博町長に対し、疑念の声が上がる状況だ。

■「馬毛島」に最も近い港

ホテル佐多岬が町のお荷物になっているのは確かだろう。石畑町長としては、なんとか利活用につなげたい。しかし、議会側がS社を拒んだ背景には、無謀な事業計画とは別に、「国防」に関わる大きな懸念があった。注目すべきは、米空母艦載機の離発着訓練場に供される自衛隊基地の建設が進む「馬毛島」と同町の位置関係である。

下の図で示したように、南大隅町には馬毛島に最も近い本土の港湾施設「大泊港」がある。その少し先が陸上自衛隊の「佐多射撃場」。ホテル佐多岬は、国防上の要地に位置する施設なのだ。

その佐多岬ホテルに、日本以外の国籍を有する人物の関係する企業が運営管理者として乗り込んできたらどうなるか――。そして、その企業の創業者であり現在の役員でもある人物の国籍が、高市早苗首相の不用意な「台湾有事発言」によって我が国と微妙な関係にある中国にあるとしたら――。

ホテル佐多岬の指定管理を巡る様々な噂が飛び交うようになって、多くの町の関係者が「国防」に関する懸念を抱いたのは言うまでもない。情報提供を受けたハンターは今年2月、東京のS社を直撃取材した。

S社の本社は都内にある賃貸マンション(下の写真)の一室。ネット上で調べたところ、部屋は1Kもしくは1DK程度で、家賃は15万円前後という規模のようだ。

同社を訪ねたところ、応対してくれたのは取締役の男性。記者は2点に絞って質問した。2026年に日本の苗字に変わっているS社の創業者で現在も役員に名を連ねる人物の国籍と、前述した事業計画のとんでもない数字についてだ。

取締役は、創業者の国籍は日本の苗字に変わったいまも「中国」だと明言。韓国系だという説明もあった。事業計画については「一応、そういったものを出さなければならなかったから……」。町に提出した事業計画自体が、杜撰だった可能性は否定できない。個人的な感想になるが、同社の現況と夢の事業計画は、どうしても結び付かなかった。

町の関係者に取材結果をぶつけたところ、次のように話している。

「やっぱり創業者は中国の人だったということですね。噂は本当だったのか。だったら、なおのこと佐多のホテルは任せられない。国籍で人や計画を判断したくはないが、国防の観点からするとストップをかけざるを得ない。事業計画もデタラメに近い。不可解なのは、そうした背景や実現性に乏しい事業計画であることを知りながら、石畑町長が議案を出してきたことです。どう考えても無理筋の話。裏に何かあると勘ぐられてもおかしくない。いったん否決された議案ですが、町長の方針に賛成する人もいるらしく、まだ動きがあるとも聞いています。国防絡みで騒ぎになるようなことは御免こうむりたいですね」

 

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