功奏するか?自・公のばら撒き

石破茂首相は、参議院選挙の公約に物価高対策として全国民に一律2万円を給付するとした上で、子どもや住民税非課税の大人に2万円を上積みして最高4万円の現金給付を行うと表明した。

7月3日からの参議院選挙直前に決まった“バラマキ”。「賃上げが、物価上昇を上回るまでの間の対応が必要」と理由を説明した。

◆   ◆   ◆

首相は4月にも、現金給付を一部のメディアに「書かせた」ことがある。しかし直後の世論調査で4%ほど支持率を落としたことで「封印」されていた。

それが突然の変わりよう。「露払い」をしたのが連立与党の公明党で、6月6日に「生活応援給付」の公約を発表。これまで、同党は食料品の消費税減税の可能性も示唆していたが、そちらは取り下げた。

「自民党と歩調を合わせるということ。石破総理は『減税はなし』という方針だったから、残るは“バラマキ”だよね」(公明党の国会議員)

参議院選挙は7月3日公示、20日投開票という日程が固まった。「石破首相は『バラマキはダメ』とずっと周囲に語っていた。財務省寄りの人だから『減税もダメ』。現金給付以外に選挙に勝てる効果的な経済対策は見当たらない。何もしないと参議院選挙での惨敗が確実視される。もう“バラマキ”に頼るしかなかった」とある官邸関係者が内幕を明かす。

1度ダメ出しを食らった“バラマキ”が浮上したのは5月の中旬だった。自民党が行った参議院選挙の情勢調査結果がメディアにも出回った頃だ。自民党49議席、公明党12議席、合計61議席で連立与党が圧勝という数字だった。

しかし、調査結果のコメント欄には《無党派層に響く政策が必要》《例えば、所得税の基礎控除、給与所得控除の引き上げ》《食料品を所得税の控除対象とする》《ガソリン税の暫定税率(25.1円)廃止》《備蓄米の継続的な放出と米のさらなる増産など米価対策》《物価高、トランプ関税対策にために現金給付》と言った文言が並んでいた。

この2~3週間、備蓄米放出で米の価格はは一定程度引き下げ傾向にある。小泉進次郎農相が全国行脚してPRすることで、石破政権の支持率がアップしている状況だ。ある自民党の大臣経験者がこう話す。

「コメント欄の備蓄米放出をやって成功した。減税には手を付けたくないとなれば、ガソリン税や食料品には触れたくない。わかりやすく、しかも選挙に勝てる対策といえば、現金給付しかなかったということ。自民党本部の並べたメニューで、一番、効果がありそうなのを参議院選挙の目玉公約とした。ある意味わかりやすい。そんな複雑なことは考えてないよ」

一方で、嘆きの声も上がる。大阪のある市役所の幹部職員は「現金給付はいいが、しわ寄せはこちらにきます。事務手続きを実際に担うのは市町村ですから。残業の嵐が吹き荒れます。そういうこと、石破さんはわかっているのか。選挙に勝つためには市町村の職員が苦しんでもいいのか」と憤る。

千葉県の熊谷俊人知事はXで《また、政府が現金給付を検討。それを実施するのは全国の市町村公務員。「どうせ今後も選挙の度に現金給付するんだから、国で一元的に給付作業をする効率的な仕組みを作りましょう」と何度も何度も提案しているのですが、いつまでも自治体任せです》

兵庫県の高島りょうすけ市長は《様々な党から国民に給付金を支給する案が浮上しています。物価高騰対策をしたいのは理解しますが、どうか、やり方を考えていただきたいです。5年前の一律10万円の給付金、覚えていらっしゃいますか。申請は、市区町村にしたはずです》《これって何か、おかしくありませんか》と厳しい意見を述べている。

しかし、石破首相にはそんな声は届かないようで、衆参ダブル選挙の話までが浮上しているという。その理由は、国民民主党の支持率が「山尾ショック」の影響で急落していることだ。

6月14,15の両日に共同通信が実施した世論調査では、“小泉米”の効果か、石破政権の支持率は37%と前月比で5%以上アップ。現金給付については、賛成が41%、反対が54%。政党支持率では、国民民主党が10.6%と前月比で4%近くダウンしている。国民民主党の落ちた分を吸収している形なのが参政党で、前月比2倍の4.8%。日本保守党も1.4%と前月比で0.5%上がった。国民民主党のマイナス分が、立憲民主党や日本維新の会ではなく、少数政党に反映されていることがわかる。

「石破首相にとって一番きついのは衆議院で少数与党であること。重要法案を通す際など、何かにつけて野党に頭を下げて賛成してもらわないと通過しない。その中で、与党的な参政党や日本保守党に国民民主党の支持分がまわっている数字。それなら、解散総選挙で衆参ダブルを打つ。他の野党はそこまで準備ができていないはずで、勝機ありと打って出る可能性も否定できない」(前出の大臣経験者)

過去、衆参ダブル選挙は2回あり、いずれも自民党が圧勝しているというデータが、さらに現実味を帯びる背景になっている。

現金給付の原資は国民の血税。コメ不足も物価高騰も自民党政権の“失政“が招いたものだったはずだ。自民党がすべきことは、バラマキではなく退場だろう。

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

最近の記事一覧

  1. 7月8日、自民党公認で参議院選挙に出馬している二階伸康氏の応援に駆け付けた石破茂首相の“前座”を務め…
  2. 2025/7/11

    参政党の正体
    参議院選挙も中盤。改選議席数の過半数確保を最初からあきらめた自民党・公明党の連立政権が、「50議席」…
  3. 9日、福岡県大任町の町長選挙を巡る公職選挙法違反事件で、永原譲二町長陣営の運動員として複数の…
  4. 今月20日に投開票される参議院議員選挙で、全国屈指の注目区となっているのが兵庫選挙区。定数3のところ…
  5. 田川市・郡8市町村のし尿処理やごみ処理を司る一部事務組合「田川地区広域環境衛生施設組合」の組合長を務…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る