維新・吉村府政「新型コロナ見回り隊」の実情|警察使って圧力も

大阪府の吉村洋文知事20日、第46回大阪府新型コロナウイルス対策本部会議を開催し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出を国に要請することを正式決定した。全国で、3度目の緊急事態宣言は大阪府が初。連日、新規感染者が1,000人を超え、重症病床使用率は100%以上という医療崩壊寸前の状態だ。

■滋賀県からは不満の声

府は滋賀県に患者の受け入れを要請しており、国も看護師40人を大阪府に支援する方針となっている。

滋賀県の三日月大造知事は、「吉村知事から直接、要請が電話でありました。切迫した状況がよくわかり、決断した」と話している。だが、滋賀県でコロナ患者の治療にあたる医師は、不満を隠そうとしない。
「第3波が収束して、やっと医師や看護師はわずかですが、休暇をとっている状況です。大阪から何人の患者が来て、治療にあたるかはわかりません。三日月知事は受け入れて、政治的、世間的にはいい顔ができるでしょう。しかし、大阪は早く緊急事態宣言を解除して、医療崩壊のようになっている。吉村知事の自業自得じゃないのかという声が現場からあがっている」

■警察まで動員

そうした中、大阪府と大阪市は「飲食店等に対する感染防止対策徹底のための見回り調査」を4月5日からスタートさせている。いわゆる「見回り隊」と呼ばれるものだ。大阪市内の飲食店に感染防止対策を促すため、4万店を5月5日までにチェックする計画で、現在、昼と夜で民間事業者に依頼した400人の見回り隊が稼働している。

大阪府の資料によれば、見回り隊の<心得>は、次のようなものだ。

調査に協力していただくという姿勢の保持、笑顔の接遇>

感染防止策についてマニュアルに基づき懇切丁寧な説明

あくまでも「感染が拡大しないように協力をお願いする」と説明する大阪府だが、資料には営業時間の短縮要請に応じない場合において、重大なことが記されていた。

営業時間短縮要請にかかる現地調査 民間委託事業者100名+大阪府警察確認地区周辺重点警ら

未協力店舗の訪問調査 大阪府職員+大阪府警察(同行)

なんと、調査を拒否した場合、警察が同行するというのだ。危ない匂いがする。そこで、民間見回り隊の業務内容をチェックするため、時給1,300円で見回り隊のアルバイトしている男性に様子を聞いてみた。あっけらかんと、彼はこう言う。
「スマホでアルバイトを探していたら、『コロナ対策をしているかどうかの見回り業務、サクッと稼げるオイシイお仕事!』 とあったので応募しました。求人広告にあった、キャッチコピーの通り、楽でオイシイですよ。事前に特別な研修もなくチェックシートを渡されて、行ってらっしゃいです。指定された店に行って、簡単な話を聞いて、大阪府から渡されたチェックシートに書き込む。早い店なら2、3分。調査拒否の店はバッテンをチェックシートに書くだけです。やっている人は全員、アルバイトだと思う。コロナでアルバイトが少ないから、ラッキーでした」

チェックシートが警察同行の一つの指標になっているのだが、それを集めて回る「見回り隊」は、民間事業者から派遣された、研修すらほとんど受けていないアルバイトなのだ。「やってる感」を演出するだけの吉村府政らしい現状が、そこにある。

■維新の暴走で感染拡大

大阪府で、新型コロナウイルスの感染が急拡大している要因の一つが、吉村知事が3月まで設定されていた緊急事態宣言を前倒しで終了させたことにあるのは確か。明らかな失政だが、維新という政治集団は「反省」は絶対にしない。

時短要請までの「まん延防止措置」から、休業要請が可能となる緊急事態宣言の再々発出で、飲食店などはさらなる苦境に陥る。強制的ではない調査を拒否して警察まで押しかけるというのは、とんでもないことだ。弁護士でもある、吉村知事は、<命令等の法的措置>まで視野に入れていることが、前出の資料でも分かっている。ある自民党の大阪府議は、次のように疑問を呈する。
「吉村知事は自分の失政をごまかそう、なかったことにしようと、警察権力の導入や法的措置まで言い出している。見回り隊はコロナの防止、拡大が主眼のはず。強制的に、警察を同行し法的措置までやれば、本末転倒ではないか。今はコロナの拡大を抑える、感染防止が先だ」

大阪都構想でもわかるように、一度、決めると権力を使って強引に突き進むのは、大阪維新の会の得意技。2度も大阪都構想が否決されると「大阪都構想は反対されたが、賛成という市民も半分近くいた」と否決になっているにもかかわらず、意味不明な理由で大阪府と大阪市の一部の行政を一つにする広域一元条例を可決させた。都市計画の権限を政令指定都市から道府県に移すのは全国で初めてだという。それも、新型コロナウイルスの感染者が300人をこえて、急増している3月末のことだった。

最優先のコロナ対策に失敗する中での形を変えた都構想――維新「暴走政治」の最たる例である。大阪のコロナは拡大するばかりだ。

 

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