“国税当局による刑事告発や重加算税をゼロに”――そう謳った「国税査察専門安心」というサイトをネット上に公開している「東京永田町税務事務所」。『交渉術。』とやらを駆使するという凄腕の税理士と『永田町交渉人チーム』は、経営者の心強い味方だとばかり思っていたが、話を聞こうと連絡をとってみると頑な取材拒否に驚かされる状況となった。トラブルの臭いを嗅ぎ取ったハンターの記者が調査を続けるうち、ある企業経営者が「酷い目にあった」として重い口を開いた。
■相談当日に契約書と着手金
長期にわたる国税の査察に困り果てていた首都圏に本社を置く企業の経営者A氏は、ある日、ネットで「国税査察専門安心」というサイトを見て「これだ!」と叫んだ。
「告発されず、かつ、加算税をゼロに」と夢のような宣伝文句。「あなたとご家族、ご親族の皆様すべて、従業員の皆様、取引先、ご友人の皆様、すべてをお守りいたします」という文言は、魅力的だった。何より“「告発」も、「重加算税」も、軽減ではなくゼロに致します”と断言しているところが頼もしい。間髪おかず、東京永田町税務事務所に連絡を入れたという。
着手金66万円+月額報酬66万円で初月合計が132万円という報酬額については、告発も重加算税もゼロになるという話が本当なら、逆に「ずいぶん高いが、話が本当だからこそだろう」と考えたのだとA氏は打ち明ける。
電話をかけたA氏は、代表税理士を名乗る人物に状況を説明。「急がないと大変なことになる」と言われ、その日のうちに永田町のビルの中にある東京永田町税務事務所に駆け込んだ。
税理士からの指示は「印鑑を持って来るように」。A氏は、何の疑いも持たずに税理士の指示通りに動き、その日のうちに「業務委託契約」を結んだ。その際、「今日中に着手金を振り込むように」と言われ、着手金112万円を指定の口座に振り込んでいた。
■「追徴に備えて」で1,500万円
その後、東京永田町税務事務所の税理士から「追徴に備えて、税理士が資金を預かっていれば国税側が安心する」などと言われたA氏は、「告発も重加算税もゼロ」という謳い文句とは違う展開に戸惑いながらも、税理士を信じて現金1,500万円を渡す。
だが、何カ月経っても事態は好転しなかった。国税当局が引き下がる気配さえない。当然ながら、疑念が芽生える。
A氏が疑念を抱くようになったのは、国税側との交渉経過などについて、税理士側からほとんど報告がなかったためだ。A氏のもとには、税理士事務所からの報告書も、口頭での説明もなかったという。同年11月には「契約解除」。当り前ではあるが、「預けたカネを返せ」となる。精算することになったが、税理士側が返すと言ってきたのは、預けた1,500万円の半分程度である約794万円だけだった。
到底納得できる話ではなかった上、催促してようやく約794万円が振り込まれてきたのは12月も20日を過ぎた頃。A氏がハンターの取材に応じたのは、こうした東京永田町税務事務所の不誠実な対応に加え、トラブルとなった11月になって登場した「交渉人」から、脅しともとれる言葉を投げかけられていたからに他ならない。次の配信記事で、税理士事務所側が得た「報酬」の内訳と、顧客勧誘の違法性の有無について、検証してみたい。
(以下、次稿)