あす19日に公示される総選挙。就任したばかりの岸田文雄首相にとっては、いきなりの大舞台となる。
ハンターのホームグラウンド九州では、安倍政権時代から大半の小選挙区で自民党の圧勝が続いてきた。だが、今回は様子が変わってきたことが、自民党や立憲民主党の情勢調査で判明している。
■福岡5区のおかしな裁定
最後まで公認問題でもめたのが、原田義昭元環境相と栗原渉元県議会議長がぶつかった福岡5区だ。自民党本部は現職優先で、原田氏を公認とする裁定を下したが、地元の7支部中5支部が「栗原推薦」。農政連や医師会といった団体も、ほとんどが栗原支持で固まっていた。栗原氏が公認されず、比例区の候補からも漏れたことで反発が予想される。
自民党本部は「勝てる候補を選んだ」「総合的な判断」とコメントしているが、自民党が行った調査結果は、それが偽りであるこちを証明している。下は、党本部が今年4月、8月、今月7日~10日に行ったとされる情勢調査の結果だ。
直近の情勢調査では、原田氏27.3%に対して栗原氏が29.2%と2%リード。3番手につけている立憲民主党の堤かなめ氏も24.2%と僅差で追いかける。菅政権への批判が高まっていた8月の調査では、栗原氏は10%以上原田氏を上回っていた。「勝てる候補」は明らかに栗原氏だったということになる。
党本部のおかしな裁定で栗原氏の支持者に厭戦ムードが広がっており、原田氏の票が積み増しされる可能性は低い。
激化した公認争いは自民党の「内紛」とも受け取られかねず、閣僚経験者の原田氏は苦しい選挙戦となりそうだ。
■長崎4区もお先真っ暗
大臣時代の「失言」で、地元県連からダメ出しを食らったのが長崎4区の北村誠吾元地方創生規制改革担当相。県連は県議会議長も務めた瀬川光之氏を公認するよう党本部に上申していたが、最終的には北村氏が公認となった。
県連が瀬川氏の公認を党本部に求めたのは9月中旬。ぎりぎりのタイミングで現職の大臣経験者、当選7回の北村氏を引きずり降ろそうとしたのは、情勢調査の結果からだ。8月に自民党が調査したときは、北村氏が30.3%。対立候補となる予定の立憲民主党新人・末次精一氏は35.7%で北村氏は5%以上離されていた。直近の調査では瀬川氏が27.1%、末次氏が30.6%と接戦だが、北村氏は大きく水をあけられ18.2%にとどまっていた。ここでも地元の意向は無視され、「勝てる候補」を潰している。
自民党の分裂が回避されたというのは表向きの話で、小選挙区の議席確保は厳しい見通しだ。
■鹿児島2区には“あの人”が出馬
鹿児島2区は、ある意味、保守分裂選挙となりそうだ。現職の金子万寿夫氏が自民党公認とされたが、対抗馬として無所属での出馬を表明したのは、昨年の鹿児島県知事選挙で自民党から推薦をもらった三反園訓氏。知事選では公明党の支持も得て再選を狙うも、自らの失策で落選した人物だ。本サイトでも、平気で嘘をつき人を裏切る同氏を政治家の資格なしとして知事時代から厳しく追及してきた。
落選直後から鹿児島2区をターゲットに辻立ちを繰り返し、「二階派に入る」などとして支持を広げるかにみえたが、圧勝するほどの人気はなく、金子氏と競り合う状況となっている。
■沖縄自民は全敗の可能性
初の入閣を果たした西銘恒三郎復興相の地元は沖縄4区。対立候補は立憲民主党の金城徹氏で、オール沖縄がバックについて支援する。しかし、ここも自民党分裂を思わせるような選挙戦になりそうだ。
西銘氏は父親が沖縄県知事、兄が参院議員とまさに沖縄の名門出身。一方、金城氏は沖縄1区にあたる那覇市の元市議で議長経験もある。那覇市長、沖縄県知事と歩んだ翁長雄志氏に師事し、行動を共にしてきた。
那覇市議時代は自民党として活動していたため、一定の保守票が見込めるという。自民党の最新情勢調査では、西銘氏が39.3%、金城氏が39.0%と拮抗している。
少し前になるが、立憲民主党の情勢調査では西銘氏が35.0%で金城氏が40.1%。金城氏が5%リードという結果が出ていた。
2017年の衆院選では、沖縄の4小選挙区中、自民党として議席を確保できたのは西銘氏だけ。残り3つはオール沖縄が支援する野党候補に敗れている。
今回も野党共闘も進んだことで、野党系優勢の様相。保守最後の砦となっている沖縄4区の西銘氏が議席を守れるのか、それとも、現職大臣として屈辱的な小選挙区落選となるのか注目だ。