先月8日夜、福岡県町村会の会長で全国町村会の副会長も務める福岡県田川郡大任町の永原譲二町長が、町政刷新を図ろうと印刷物を配布していた市民団体のメンバーに特殊警棒を持って襲いかかるという事件が勃発した。現役の町長が、武器を掲げて住民を襲うという異常な事態。暴走する永原氏の姿を撮影した関係者の動画はまたたく間に拡散し、事件を報じたハンターのサイトは一時的にパンクするなど大きな反響を呼んだ。
永原氏側は、被害者に非があるかのような虚偽の言説を流して事態の鎮静化を図ろうとしたが、真実は一つだ。襲撃の瞬間やその後の同氏の狂乱ぶりを見届けていた人たちが、改めて当日の様子を語った。
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印刷物を配布していたのは、若者らを中心にした30名ほどの住民。ハンターの記事を読んで、「永原町長の独裁で、町の未来がつぶされる」と危機感を持ったことがきっかけとなり、啓発活動を始めていた。
10月8日、午後からビラの配布を続けていたところ、夜9時近くになって町内にある「峰集会所」に車を止めていた若者3人が、町長の息子に捕まったという。
町長の息子は、永原町長が常習賭け麻雀を行っている大分県日田市天ケ瀬の別荘を、指定暴力団幹部から買い取っていた人物。数人の仲間とやってきたその彼が、1カ所しかない集会所の入り口に車を止めたため、同所の駐車場に車をとめていた若者ら数名が帰れない状態になった。
町長の息子は携帯で誰かと話していたが、その数分後に1台の白い軽自動車が走ってきて、車内から黒づくめの服に黒い帽子をかぶった男性が降り立った。永原町長だった。その段階で下の図のような位置関係になっており、被害にあった男性が若手の役場職員だったことから、町長のターゲットにされたのではないか、と関係者は話す。
それからの状況を詳しく知るため、被害者の友人二人に話を聞いた。
友人A:軽自動車から降りてきたのは町長の永原さんでした。黒の上下で帽子。すごい形相になっていました。僕たちは、集会所の駐車場の中にいたんですが、町長の息子さんの車でふさがれた格好で出れなくなっていましたから、向き合うしかなかったですね。
友人B:もうその段階でビビりました。怖かった。たしか、車を降りてくるなり、「お前たちゃ、こんなことしていいんか」みたいなことを、大声で……。
友人A:そうそう。それから、ズンズンこっちに歩いて来て、一人ずつに「どこの者か!」と聞いてきて、隠すわけにもいかんから、○○(地域名)の▲▲ですと答えました。あれ?Bは名前、聞かれんかったよね?
友人B:聞かれんかった。なんでか。それで、私らの前にいた●●くん(被害者)が、名前を言ったとたん、町長さんが「おまえは役場の職員じゃろが。こげなことしていい思っとるんか!」と怒鳴りながら、手に持っていた特殊警棒を、シャキッと振って伸ばしたんです。なんか、ああいうのを狂気と言うんですかね。もの凄い顔になってたですよ。顔だけ鮮明に覚えとる。
友人A:町長さんが何か手に持っていることには気付いていましたけど、特殊警棒を振った時には、本当に殺されるかもしれん、ヤバいと思いました。足はガクガクでした。町長の顔は、ほんと凄かったですよ。目が据わるちゃ、あんな感じですかね。正気じゃなかった。
友人B:後ろにいて顔は見えませんでしたが、●●くん(被害者)は固まってましたから、そうとう怖かったはずです。動けなかったですもん。逃げようにも、逃げられなかったんですよ。
友人A:ああ、やられる、と思ったところで、町長の息子さんが町長を必死で止めて、警棒が使えないようにしました。それで助かったけど、町長の息子さんがいなかったら、●●君(被害者)も私たちも、絶対警棒でやられていたと思いますよ。とにかく、すごい剣幕でしたから。ヤクザみたいやった。大任町はもともと荒っぽい土地柄ですけど、町長のはちょっと違う感じ。町民相手に特殊警棒を使うなんて……。
友人B:いまでも思い出すと、ゾクッときますもん。二度と町長とは会いたくない。
この後、被害者とその友人二人は、連絡を受けて駆け付けた仲間たちに守られる形で集会所の駐車場から道路側に脱出。町長の特殊警棒が軽自動車の運転をしていた女性に渡され、運転席の横に隠される場面や、車に押し戻された町長が「殺すぞ」などと叫ぶ様子を見届けていた。県警の警察官が臨場して大騒ぎになる中、三人とも「震えが止まらなかった」と振り返る。
いかなる言い訳をしても、特殊警棒を振るって住民を襲撃し、恫喝したことは明らかな犯罪行為。しかも、犯行を行ったのが現職の町長というのだから開いた口が塞がらない。永原氏は、福岡県町村会の会長で全国町村会の副会長も務める地方自治のリーダー。やっていいこと悪いことの区別もつかず、自らの暴挙を正当化しようとする姿勢は最低だ。
常習賭け麻雀に、選挙違反、さらには特殊警棒を振りかざしての住民襲撃――。永原譲二という政治家の辞書には、「正義」という言葉がないのかもしれない。