「政治とカネ」地方の実態 江口吉男福岡県議、関連企業から秘書給与

さらに規正法違反 後援会・自民支部への寄附も不記載

自身の妻が代表の企業から秘書給与を支払わせながら、適正な政治資金の報告を怠っていた江口吉男福岡県議については、さらに別の政治資金規正法違反が疑われる。
同県議の政務調査費の領収書を確認すると、事務所の電話リース料、電話代、人件費などが「江口吉男後援会」または「自由民主党福岡県柳川市第一支部」との按分になっている。後援会や第一支部が発行した領収書の宛名は”江口吉男様”となっており、両団体には江口県議からの収入が記載されなければならない。
しかし、平成21年の両団体の政治資金収支報告書には江口県議自身からの寄附はなく、県選管で確認したところ、記載漏れ、つまり現状では”不記載”であり、違法状態にあることを認めている。
江口県議の3つの関連政治団体の会計責任者でもある前述の秘書は、今月4日の取材に対し調査のうえ回答するとしていたが、9日の出稿時点では回答を得られなかった。

 

年間2,500万円超 支出先明示せず

江口県議の関連政治団体は、「江口吉男後援会」、「自由民主党福岡県柳川市第一支部」、「自由民主党柳川支部」の3団体(別に資金管理団体として「吉祥会」が存在するが、ここ数年活動実態がなく、収支はゼロとなっている)。この3団体が県選管に提出した平成21年分の政治資金収支報告書を見ていくと、支出に関しての不透明さが浮き彫りになる。

江口県議が代表を務める「自由民主党福岡県柳川市第一支部」はこの年、前年からの繰越金491,266円のほか、11,495,933円の収入を得ている。収入の内訳は「新年総会」など4回の会合における会費と見られるものが1,375,000円、自民党県連から100,000円、その他の収入が1,143円、残り10,019,790円は”企業献金”である。献金企業は66社で、大半は建設業者。66社のうち60社は、県議の地元である柳川市内に本社を置いている。
建設業界に支えられる自民党議員という典型的なケースなのだが、問題は支出にある。

「自由民主党福岡県柳川市第一支部」の21年の支出総額は11,667,029円。人件費が2,729,149円、光熱水費77,390円、備品・消耗品費485,294円、事務所費130,201円で、事務所を維持するための支出とされる「経常経費」の総額は3,422,034円となる。しかし、現行の政治資金規正法は、国会議員関係団体や資金管理団体以外の政治団体について、経常経費の内容報告を義務付けていないため詳細が不明だ。
残りの支出のうち、政治活動費の総額は8,244,995円なのだが、支出の目的が明記されているのは前述した「新年総会」などの大会に要した「会場借上料」や「飲食代」といった支出の合計1,093,185円と車の維持費(会計責任者である江口県議の秘書によれば、リースしている車にかかる修理代などとしている)175,000円のみ。その他の支出6,976,810円のうちのほとんどである6,795,483円は「雑費」として一括処理されており、1件も支出目的が記されていない。つまり、年間680万円余りの金を費消しながら、5万円以上の支出はなかったということになる。同支部の、相手先が見えない支出の合計は経常経費と合わせて10,398,844円なのだ。

 

 

また、同年の「江口吉男後援会」の収支を見ると、前年からの繰越金約290万円を入れた収入総額は約1,500万円で、総支出は約1,330万円。この年の収入の大半は、同年11月に福岡市内のホテルで開催された政治資金パーティ『江口吉男を励ます会』によるもの(パーティ収入は約1,100万円)だった。

この団体も支出の内訳に問題があり、年間約1,330万円を費消しながら、支出目的が明記されているのは政治資金パーティや会合の司会料、会場費、飲食代などの約436万円にすぎない。収支報告書には、「雑費」として6,981,254円を一括処理している。内訳があいまいな経常経費約159万円のほか、残りの約740万円も何に使ったのかわからないのである。1年間に700万円近い「雑費」を使いながら、5万円を超える支出は1件もなかったという。経常経費や5万円未満の支出の全てを加えると、相手先が見えない支出の総計は8,955,457円となる。

 

 

「自由民主党柳川支部」についてはどうか。平成21年は政権交代が実現した総選挙の年で、約875万円となる同支部の収入の多くは古賀誠・元自民党幹事長が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」からの交付金800万円。支出内訳を確認すると経常経費が3,896,530円、政治活動費が4,520,153円で総支出は約840万円。支出目的が明記されているのは総選挙のためにかかった事務所の借地料やポスター代など約189万円だけで、同支部でも「雑費」としての一括処理が1,596,367円にのぼる。支出目的がわずかながら明らかとなっている「大会費」「組織対策費」「広告作成費」の項目でも、5万円未満の支出である「その他の支出」が、それぞれ93,400円、684,309円、253,787円計上されていた。相手先が見えてこない支出は、経常経費を含めて652,4,393円にのぼる。

 

 

江口県議の関連政治団体である「自由民主党福岡県柳川市第一支部」、「江口吉男後援会」、「自由民主党柳川支部」の3団体で「雑費」として一括処理された金額は総計15,373,104円、「雑費」を除く「その他の経費」の総計が1,597,754円。つまり、相手先が見えない支出は16,970,858円で、これに内訳が記載されていない3団体の「経常経費」総計8,907,836円を加えると、なんと25,878,694円が「見えない支出」ということになる。巨額である。これだけの政治資金が費消されていながら、その内訳がわからないというのは、不透明と言わざるを得ない。江口県議側は4日以降、取材要請を拒否した形となっているが、公人としての説明責任を果たすべきであろう。

*江口県議の関連政治団体にかかる不透明な政治資金の処理は、さらなる問題を提起している。ザル法と言われ続けてきた政治資金規正法だが、法の抜け道を使った自民党支部の実態には驚かされる。
福岡県内だけで140を超える自民党支部の不透明な政治資金処理の実情について、稿を改めて検証を試みる。

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